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転生したら○○だった!?  作者: 薬師丸
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イタチもつらいよ

(そりゃそうだ、相手は目に傷を負っても生き残っているイタチ玄人、十日程度のネズミビギナーには荷が重いよ)

 光も音も暖かさも寒さも感じない。

 (ネズミで天寿を全うするというのは中々ハードモードだよなぁ)

 諦めと開き直りの感情が強いのか、それとも死ぬのも2回目で慣れたからなのか、さほど悲しみは無い。

 (って、さっきから全然意識が無くならないんだが!?)

 いや、イタチに食われた時、たしかに意識はなくなっていた。それが今は戻っている。

 似ている。

 ネズミに生まれ変わる前の感覚ととてもよく似てる。 

 (ということは…)

 

 徐々に体の感覚が戻っていくのを感じた。あの時、ネズミになったときと同じ感覚だ。


 ゆっくりと目をあけると、見慣れた光景が広がっていた。

 ネズミとして生きたあの森だ。

 (生きてる!)

 俺は直ぐに体を起こすと、あの時と同じ様に体を起こし、自分の体を確認した。

 (あれ?ネズミじゃない?)

 目に写ったのは、確かに毛皮に包まれた動物の体だったが、明らかに前とは違っていた。長い胴体とフサフサの尻尾。肉球の付いた小さな前脚。

 (これってまさか!)

 俺は走り出した。しかし前と同じ様に無我夢中では知っているのではない。

 前に見つけた小さな泉に向かっている。

 予想を確かめるために。

 しなやかな体は以前より速く森を駆け抜けた。

 泉につくと、そこをそっと覗き込む。

 波一つない鏡のような水面には、死ぬ前には死んでも見たくなかったイタチの顔が写っていた。

 もしやと思ったが、それでも驚きのあまり後ろにたじろいだ。

(今度はイタチに生まれ変わったのか!?)

 違う。もう一度よく水面を覗くと、写った顔には忘れもしないあの目の傷が付いていたのだ。

 (こいつ間違いなく俺を食ったイタチだ…)

 俺は恐らく小さいであろうイタチの脳味噌を使って必死に考えた。

 (つまり、自分を食った生き物に乗り移っているのか?)

 馬鹿な結論だとは思ったが、それ以外に自分が今あのイタチになっている理由が説明できない。

 (ということは人の時、自分が死んだあと…)

 人間の自分の死体が大量のネズミに食わてるのを想像して思わずゾッとした。

 だが直ぐにその可能性は薄いことに気がついた。

 

 なぜならネズミのときとイタチの今では、同じ森にいるが、人間のときとネズミのときでは全く違う場所だったからだ。

 今の森の植物や動物は、日本の動物に見た目は少し似ているが、明らかに異なる種類だった。


 どういう理屈かさっぱり分からないが、今度はイタチとして生きていく他ないらしい。


 ネズミ生活ですっかり肝が据わったのか、割りとすんなり現実を受け入れている自分がいた。

 

 ふと目を泉に戻すと水の中に魚がいることに気がついた。

 試運転だとばかりに、水に飛び込む。

 初めての獲物だというのに、自然と体が動いた。

 水の中から、くわえるのにやっとの大きさの魚を引き揚げる。

 存外の大物に興奮が隠しきれない。

 (これで俺も狩られる側から狩る側だ!)

 力いっぱい雄叫びを上げると「キキーッ!」と言う聴き慣れない鳴き声が出た。

 (あっ、あんまりかっこよくない…)


 しかし、その決意もまたもや直ぐに裏切られた。

 食物連鎖の階段を僅かに登ったところで、弱肉強食の世界は許してくれないのだ。

 狙ってくる動物が大型になるだけでも、以前生態系ピラミッドの下の方にいるのは変わりないのだ。


 そして、まさに今現在も狙われている真っ最中である!

 お相手は狼。

 灰色の大きな体を軽々と走らせ追いかけてくる。

 追いかけっこには正直分はない。

 狼とイタチでは足の長さが違いすぎる。小回りを生かして茂みや物影に隠れても、臭いでバレて居座られる。

 すきをついて逃げ、追い駆けられ、隠れ、居座られの繰り返し。

 狼はもっと大きな獲物を狩るものだと思っていたが、いわゆる一匹狼のようで、小さな獲物狙いのようだ。

 食われてもまた乗り移れるのでは?とも考えたが、確証が無い以上危険な賭けだ。極力避けたい。

 

 茂みの中に身を潜めたが、当然居座っている。時折顔や脚を茂みに突っ込みこちらを追い立てる。

 (入ってこれなそうだし、諦めるまで待つか?)

 しかし、前世?の例があるので油断はできない…とはいえここで持久戦をするには茂みの木々がどれだけ持つか分からない。

 意を決し、茂みの反対から逃げる。

 するとそこには別の狼が待ち構えていた。

 (嘘だろ?もう一頭いたのか?)

 狼の口が迫る。

 避けようととっさに体をよじるが間に合わない。

 

 牙の突き刺さる懐かしい感覚が、体中に伝わる。

 (また駄目だったか…)

 3度目の死の感覚、、やはりなんとも言い難い気持ち悪さがあった。

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