7話 朝がやってきました②
……渡辺瑞希の場合……
ジリリリリ……ジリリリリ
部屋の中に置時計のアラームが鳴り響く。
その音はまるで騒音のように窓を越えて外まで聞こえるほど。
「うるさいなぁ」
ガタン
何かを叩きつけるような音がした後、騒音をまき散らしていた目覚まし時計は、部屋の隅で無残にも転がっている。所々がへこんでいるのは、この惨劇が日常茶飯事であることを表しているかのようだった。
「……うーん」
目覚まし時計が沈黙してから約10分後、瑞希は寝ぼけながらもベッドから起き上がる。
寝ぐせのついた髪の毛はトサカのようにそり立っていた。
「はぁぁうん? クンクン……いい匂いだ」
大きな欠伸が途中で止まる。
リビングから漂ってくる匂いに、鼻が犬のように反応する。
その匂いに眠気などすぐにふきとんでしまう。
ドアを突き破ってしまいそうなスピードで、瑞希は部屋を飛び出した。
するとリビング手前で楽しそうに話す二人の声が聞こえてきた。
リビングにいたのは先に起きたマコトと、新しい管理人である弘樹であった。
のぞき見する瑞希の目からも、二人はなにやらいい雰囲気である。
「おやおや、なかなかお似合いで……」
リビングの様子を壁に隠れながら覗き見していると……
「何してるの?」
と、背後から声をかけられた。
「うわ……ビックリさせるなよ。久美」
そこに立っていたのは、眠たそうに目をこする久美だった。
「…………」
驚かせるつもりなどなかった久美は、未だに眠たさからボーっとしている。
「飯行くか?」
「……うん」
目配せすると、二人はリビングへと入っていった。