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使い魔始めませんか?

 


「えーと…お待たせしました…」



 地獄のような光景がやっと落ち着き、食卓には芳ばしい香りのパンと温かいクリームシチューが並ぶ。あまりにグシャグシャの惨状にさすがに憐れみの感情が湧き、丁度この姿で何が出来るか試す機会とも思い、魔法で片付けてやった。田舎のこの場所ではそんな初歩的な事も珍しいようで、母親も少女も目をキラキラさせていた。


 温かな料理に舌鼓を打ちながら、一先ず母親と少女、この場所について聞いた。聞いた情報を整理すると、こんな感じ。


 ・此処は都市からはだいぶ離れた辺境の村、リトア村である。


 ・そしてこの家はトロイド家。


 ・母親の名前はマーサ。この村の出身。


 ・少女はアリス。この村にしては珍しくそこそこの魔力を有して産まれてきた魔導師見習い。だが性格や環境も相俟ってなかなか成長しないらしい。


 と、いったところか。まあなんと言うか、随分と辺鄙(へんぴ)な場所に放り出されたし、不思議な出会いもあったもんだなとか思う。


 さて、そろそろ現実を噛み締めその余韻に浸るのもそこそこにしよう。私の事もこの二人に告げなければ。

 という事で二人に向き直り、腕を組み、伝説の魔導師としての威厳を少しでも出してみようとして思う。クソ、短いなこの手。ハムスターの姿(フォルム)じゃちっとも威厳なんて出やしない。有り余る可愛らしさしか出ない。腹立つ。

 なんて言ってても仕方ない。(物凄く仕方なくだけど、本当は凄い嫌だけど)現実を受け入れて話へ移ろう。



「マーサにアリス。君達は伝説の魔導師の事を知っているか?」


「それは勿論!エミリア様の事ですよね、私の憧れなんです!」


「ふむ、なんだか歯痒いな、ありがとう」


「え?」


「いや、うん、続けよう」



 久しぶりに受ける好意の眼差しに思わず正体も明かしていないのに頬を赤らめてしまった。ハムスターの頬が赤くなるかはわからんが。



「コホン。私はそのエミリアだ。何者かに殺害され、どういう訳かこの姿に」



 バーンと。これがコミックか何かならそんな効果音が振られそうな仁王立ちでそう告げた。(もっと)もこの姿では何の迫力も感じられないけど。


 アリスとマーサは目を点にして固まっている。まあ正常な反応ではあるだろう。そもそも今は私が死んでからどれくらい経つんだ?この辺境の村にも私の死の報せは届いてるんだろうか。そんな疑問はアリスが直ぐに解決してくれた。



「確かに、三日前に御自宅でエミリア様が亡くなったという報せは聞きました。でも、その、ハムちゃんがエミリア様なんて…」


「まあ、そう簡単に信じられん事はわかっている。ていうかそうか、私が死んでからもう三日経つのか」


「…いえ、ハムちゃ…エミリア様!私、信じます。だって、こんな小さなハムちゃんなのに、あんなに簡単に魔法を使えるんですもの!」


「む、そうか…」



 簡単な事しかしてないつもりだったが、確かに冷静に考えてみればこんな小さな生き物に出来る芸当では無かった。本来使い魔は戦闘向きで、繊細な事は苦手だし。

 何はともあれ信じて貰えたようで良かった。ホッと胸を撫で下ろし、短い手で頭ら辺をクシクシとする。…何やってるんだ私は。これもまたハムスターの本能かクソ。



「あのっ、エミリア様!!」


「ん?」



 唐突にアリスが大きな声をあげる。アリスはとても真剣な眼差しで私を見ていた。



「もし、もし良ければなんですけど…私の…」


「アリスの?」


「私の…私のっ、使い魔になってくれませんか!?」


「…へ?」



 こうして、突然人生に幕を閉じ、唐突に始まった私のハム生から、更に使い魔ライフが始まるのだった…。



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