episode.1 地面が揺れる
自宅に帰った俺は、ポケットに入れていた紙を取り出して、開いてみた。
そこには、、
【花田隆57歳 A型】
【某ウイルス無効薬D-001の治験接種】
【・・・・済】
そして、裏には、
【被検番号001】
と記載してあった。
「え、無効薬の被験者?ん?しかもD-001?聞いたことない名前だなぁ」
俺は、ニュースで聞いたことがない“治験”の事と“D-001”という謎の薬品に違和感を感じた。
「あっ、そーいえばこの前注射の案内が家に届いてたよな。」
俺は、その案内状にこの薬品の名前があると思い、リビングの机の上に置いていた黄色い封筒を手に取った。
封筒の中の案内状にはこう書いてあった。
【無効薬接種のお知らせ】
【田方 翔平様】
【南極で発生した新種のウイルスを日本国内で蔓延させないため、ウイルスが国内に侵入してくるまでに、無効薬の接種を行うことを決定致しました。この無効薬は、人体に全く影響を与えないことが研究によって証明されております。安心して接種してください。つきましては、この案内状と本人確認証を持参の上、下記の場所にお越しください。】
【南極発現感染症対応窓口】
どこを見ても、D-001という詳しい薬品の名前までは書かれていなかった。
「なんでこんなに安全と言い張れるんだ?しかも、詳細なことが全然書かれていないじゃないか。研究によって証明されているなら、そのデータをなんで政府は公表しないんだ?」
考えれば考えるほど、次の疑問が生まれてくる。
長年探偵をしているために、つい他人を疑ってしまう。
これは、タチの悪い俺の癖である。
そうしていると、
・・・ピーンポーン
突然、家のインターホンが鳴った。
俺は、「は〜い」と言って家のドアを開けた。
そこには、親友の紀夫が立っていた。
「よう!翔平、元気だったか?はい、これお土産」
ドアを開けると同時に、紀夫は俺にずっしりとした大きな紙袋を渡してきた。
「ありがとー、ちなみにこの中身はなんなの?」
俺は全く見えない紙袋の中身が気になったため、紀夫に尋ねた。
「それは、開けてからにお楽しみだよ!!」
そういって、紀夫は俺の家へと入っていった。
「さぁ、お楽しみの開封会をしよう!」
紀夫は家に入ったと同時に俺に紙袋の開封を迫ってきた。
「おっけー』
そう言いながら俺は、玄関でお土産を受け取った時から中身が気になっていたため、すぐに袋を閉じていたビニールテープを剥がした。
ずっしりとしていたため、俺は(ケーキでも入っているのでは?)と思いながら、紙袋の中身を取り出した。
「・・・・・・・え」
俺は、紙袋から出てきたものをみて絶望した。
紙袋の中には、ごは○ですよが1キロ、味のりが50枚、海苔天がたくさん入った袋が1パック、そして、スティックのりが7本入っていた。
・・・俺の苦手な海苔ばっかり(その中のひとつは食べ物ではないが)
俺は、あまりのショックに言葉が出なかった。
「どうした?なんかあったのか?」
紀夫は死んだ魚の目をしていた俺を心配して話しかけてきた。
俺はその瞬間悟った。紀夫は自分がやらかしていることに気づいていないと・・・。
そうこうしているうちに時計は、19時を指していた。
紀夫が来てから1時間以上は経過していた。
「紀夫、コンビニに今夜の食べ物買いに行こうや」
俺は、紀夫と一緒にコンビニに晩御飯を買いに行った。
「うわぁー、またチョコレート値上がりしてるやん。」
人口が急増したことにより全世界で様々な食品が値上がりしている。
俺の好物チョコレートは、人口が急増する前と比べて三倍の値段になっている。俺は、毎日時間があればデイトレーダーのごとくチョコレートの価格変動を確認している。この前も、仕事中に価格変動を見ていて上司に怒られたばかりだ。
ピッ、ピッ、
レジのバーコードリーダーが商品のバーコードを読み取る音が聞こえる。
「全部でお会計5700円になります。」
コンビニで食料を買った俺たちは、世間話をしながら自宅のマンションを目指した。
「コンビニで5700円は高すぎるだろ!!」
俺は思わず、帰り道に値段に対する不満を言った。
「しょうがないだろ、人口が多いんだから。いちいち文句言うな。だまっとけ」
俺は紀夫にボコボコに言われた。
そうこうしているうちに、俺たちはマンションにたどり着いた。
「おっ!エレベーター1階におるじゃんか!」
俺はそう言い放って、紀夫と走ってエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターの階のメーターが一つ一つと増えていく。
1・・・、2・・・、3・・・、4・・・、
5・・・・・
そのときだった。。
・・・・ごぉぉおおおぉおぉぉぉおおぉぉぉぉおおぉおぉぉぉおぉぉ
・・・・ガタガタ・・・ガタガタ・・・ガタガタ・・・ガタガタ
突然、巨大な地震が首都圏を襲った。。
「わぁぁぁあぁぁぁああぁぁあああぁぁあぁああ!!!」
俺と紀夫はしゃがみ込んで叫んだ
揺れが収まるまで、俺と紀夫はエレベーターの中でしゃがみ込んでいた。
・・・・コトコト・・・コトコト・・・・・
・・・・・・
・・・
「ゴホンッ、ゴホンッ、収まったのか?」
俺は、そう言いながら目を開けた。
「あれ、何も見えない・・・ゴホンッ、停電したのか。。紀夫、大丈夫か!?」
「ゴホンッ、ああ、こっちは大丈夫だ」
俺は、暗くて何も見えなかったので、スマホのライトをつけた
とりあえずエレベーターのドアが開くか試した。
カチ、カチ、カチ、カチ、カチ・・・
反応しない。
「やべぇ、紀夫、ゴホンッ、ドアが全く開かない」
「まじかよ」
そう、俺たちはエレベーターに閉じ込められてしまったのである。。