第76話 身の丈140 は 10歳児の平均(震え声)
秋、それは読書の秋。そして食欲の秋。
「逃げるなシメジマツタケぇ!!」
「ピギィィィィィィ!?」
今日はお休みなので、少し遠目の山までやってきて
シメジマツタケを狩っています。
え?シメジマツタケが何か?
キノコ型の魔物の癖に、味はホンシメジ、香りはマツタケと言う
超うまうまだと魔物図鑑に載っていたので
狩っている真っ最中なのです。
しかも手と足が生えていて、普段は土に植わっているのに
危険を察知すると土から出て、走って逃げる曲者なのですよ。
「ふ、私の蔦から逃れるなど100億年早いわ…。」
「ピギュゥゥ……。」
「さて、確か処理は手と足を千切って…」
「ピギィィィィィィ!!」
「流石、鮮度が良いね、そして水でしっかり洗って…」
「ピグゴブゴボガボゲボ!?」
「そのまま串刺しにして」
「ピギュ―――――!?」
「新鮮なまま焦げないように遠火で炙ると…。」
「ピギィィィィィィ!!ピギギィィィィィィ!!」
すっかり異世界に慣れているが
その行動は傍から見たら、ただの拷問紛いだと言う事に
気が付かないセッカだった。
「えーと、何々?水分が大量に出るのでそれによって
旨味が凝縮されます?
しっかりと水分が抜けた事を確認してから
水で戻して食べると美味、か……。」
何故こういう事になったのかを僅かに時を戻してみよう。
「店長!これ何!?秋の味覚大集合!って本!!」
「ん?そりゃいつものグランハート印刷の新刊だよ。
なんでも秋限定の魔物のレシピ本だとかで
向こうじゃ人気らしいぞ?」
「おお!なにこれ!?シメジマツタケ!?ドン・栗・ボッチャン!?
あれ?タケノコの掘り方と美味しい食べ方??
ここだけ魔物じゃなくて、普通に山で掘るんだね…。」
「ああ、ゲーテルエード王は別名、タケノコ王と呼ばれる位
タケノコ好きだからね。その関係じゃないかな。」
「へぇ。シメジマツタケはこの辺にも生息してるのかぁ……。
これは一度、採りに行くしかないね……。」
と、言う事でセッカがやってきただけだった。
さようなら、シメジマツタケ。
君の事は忘れないよ!
「大漁大漁……。これだけあれば食堂に出せるね!
次はOh!夜魔芋だよ!!
夜に採れる山芋魔物かぁ…。」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ヒャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「アンギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
そして夜に響き渡る叫び声。
近くの村々では秋の定番の風物詩になっていて
誰も気にもしないそうだ。
そして夜中のうちに王都に帰還する。
本来、王都と言えど南の一般門は開門時間、閉門時間が存在していて
真夜中に戻ってきても入る事は出来ない。
北の軍門は、軍務では無いので使えない。
しかし東西の貴族門は24時間利用でき
こんな時間でも準貴族であるセッカは王都の中へと入れた。
「おや、タネコさん。今日は早いね?」
「これを採ってきたのですよ!」
「おお、シメジマツタケ!処理もしっかり出来ているね!!
それにOh!夜魔芋か!男性じゃ誘惑されて採れないんだよね…。
それとドン・栗!この辺には生息していない筈だった気がするが?」
「え…ええ、まぁちょっといただきもので……。」
ラファールで飛べばすぐ、だなんて
言えるわけもなかった。
そしてその日の朝食から、秋の味覚が軍の食堂に並んだ。
シメジマツタケご飯、吸い物やOh!夜魔芋の天ぷらに
ドン・栗・ボッチャンを使ったご飯や甘味など。
秋の味覚とは言え、作られた料理は中々ディメンタールでも見ないものだけに
最初は敬遠していたが、1人が食べてその美味さに驚いていると
あっという間に人が並び、次々と減っていった。
「はいよぉ!サウスパンプキンの煮物に天ぷら、甘味も追加だよぉ!!」
普段は季節感があまり無いバイキング形式の食堂に
季節感がある食材が出てきた事もあってか、盛況だった。
「って感じに私は昨日は居なかったんです!!
東の貴族門もしっかり認識票の記録がある筈です!!
何故、毎回毎回私が疑われてその度に正座なのですか!?」
「お前が最も確率が高く、やらかす可能性を否定出来ないからだ。」
「さいですか…。」
私が疑われているのは、どうやら王都内になにやら
放火犯が出たという訳の解らない内容だった。
「それが何故私ではないかと疑われているのですか?」
「犯人を遠目で見た者が居てな。身長がとんでもなく小さかったという話だ。」
「それだけ!?そんな事言ったら、子供が全員対象じゃないですか!?
それに私、火属性魔法全く使えませんからね!?
無属性、それと僅かに木属性しか使えませんよ!?」
「そんな事は解ってる。」
「ならどういう事なのですか!!」
「そもそも放火犯は火属性魔法で火をつけてないからだ。
子供でも出来る者が非常に多い筈の、火属性魔法をだぞ?」
「あてつけですか!?人には得手不得手と言うものだってあるのです!
私の蔦と相性も悪いんですから、使えなくてもおかしくないでしょうが!!」
「だが今日だけの話では無いんだ。」
「はへ?」
「この1週間で5箇所、2日間の間に起きている。
その2日とも、お前は夜中に出歩いていると言う記録がある。
軍施設から出た記録がな…。3日前、お前は夜中に何をしに
一般街へ出て行ったんだ?」
「あ?えー………ナンノコトダカワカラナイデス」
「あれで誤魔化せてると思ってるのかな…。」
「俺は小隊長ほど嘘付けない人を見た事は無いぞ?」
「それだけ普段嘘をついていないと言う事でもあるんだろうけどね…。」
「いひゃはへひゃふひゃはへへひゃひゃはへはひゃはい!!」
「何を言っているかは解らんが、嘘を付くのは良くないな?セッカ…。」
「なんで嘘だと解るんですか!!と言うか毎回毎回
人の頬を抓りすぎです!これ以上伸びたらどうするんですか!!」
「お前、嘘付くとすぐに解るからな?」
「マジデッ!?」
「確認は取れたが1つ確認する。
どうして真夜中に軍部の研究所なんて場所ヘ行った。」
「それは言えません。確認は大元帥としての王様までどうぞ。」
「それはセッカとしてか?それともセッカ特務曹長としてか?」
「後者で」
「なら何も言わんが、とかくフードを深く被った
身の丈140ほどの人物が、放火犯として確認されている。
深夜の出歩きは禁止だ。」
「それは無理ですね。それも大元帥としての王様までどうぞ。」
「ふむ……。しかし主に空軍が何か五月蝿くてな…。」
「また空軍ですか……。」
「そうだ、まただ…。」
とりあえず裏もウルフ少佐が取った事で
大元帥である王様としての情報を統合した結果
私の深夜出歩きの禁止は取り下げられた上に
空軍にもある程度の説明の上、シロだと伝えられたが
やはり空軍は騒いでいるそうだ。
どちらにせよ放火犯。
人の命を奪おうとするのであれば
それを許す事は、私には無い。
ギルティーだよ?




