第7話 総合運動会に向けて!
「………で、あるからして………」
こんにちは、セッカです。
現在、座学の真っ最中です。
座学ではまず歴史などの一般的なものから
陣形など、これから実際に訓練する内容から
果ては機材の構造などについてや、薬学まで。
幅広く基本中の基本となる情報を、叩き込まれるのです。
2年からは選択式の授業として、その上を行なうのですが
薬学、魔法陣学、魔法学、魔導具学を取りたいところです。
まぁ興味の無い授業中に寝るのが多い多い。
だからと言って、先生方はわざわざ起こしません。
起こしていったら授業が終わってしまうからです。
何しろ私の居るG組だけでも生徒が300人位居るのです。
寝ている生徒などは、まぁ当然成績に響きますが
取捨選択している、とも判断されます。
つまり身体を使った授業評価を取って
座学を捨てるという所でしょうか。
まぁ決して頭の良い方法とは思えませんが
上級学校は単位制なので、特に基本座学はおざなりにされやすいとか。
「はぁ、こう基礎が続くと萎える……。」
「それは小さい頃からやっているからですよ?
悪い事では無いではありませんか…。」
「いや、そうなんだけどさ…。」
流石に基本はしっかり叩き込まれた事で
1年の間はどちらかと言えば私とアマンダさんに関して言えば
通過儀礼でしかない。
2人揃って国軍科の図書室に入り浸る毎日を過ごしていた。
2ヶ月も経過すると、どんどんと実戦に近いものが増えていく。
装備を使うが、怪我を最低限にする為の木剣や木槍をつかった模擬戦。
当然、魔法やスキルなども使用可能。
皆、生傷が耐えないようになる上
サバイバルすら体験させられる。
緊急時の水の作り方、食料の確保、寝床の確保など
どちらかと言えば冒険少○さながらの授業だったり。
そして重要なのが夏休み、と言う授業。
国軍科は週に1度の休みがあるが、夏休みと言う休みは存在しない。
週1日の休みは、身体を完全に休めるためだけの日で
まぁいわゆるオーバーワークを防ぐ為なんだと思う。
週1日の休みは、肉体の酷使の完全禁止となっていて
特に図書館や、食堂は混雑している。
まだ成長期だから良いけど
実は天神様から貰ったスキルに不老と健康と言うのがある。
不老は、天神様が長く活動して欲しいとくれたもので
肉体の成長の最盛期までは成長し、最盛期で停止。
以降は肉体も衰えなければ、歳も重ねないと言う便利なもの。
健康は、まぁ精神攻撃。隷属や魅了に対する完全抵抗から
毒や病などに対する抵抗がついたり良い事が多いのだけど
実は副次効果でいくら食べても太らない。
食べた物が必要以上に血肉に変わらないと言うデメリットにもなっていた。
だから食堂ではモリモリと人一倍食べているのに
まったく大きくならないと、むしろ心配されている。
「どうしてお前、こんなに小さいんだか…。」
「背の小ささと大きくならない因果関係を証明してから
そういうご意見は承りますよ……。」
前世の身長139.5センチに天神様の努力により
プラス0.5センチ。
つまり140センチまでしか私は成長しないのです…。
あとアマンダさんも現時点で150センチ。
ちなみに12歳の女児の身長って150くらいの筈だからね?
思った以上に小さくは見えないはずなんだけどなぁ…。
毎月、キチンと身体測定があり
既に私は140に達していた。
アマンダさんは………、身長が微成長と共に
出るところがさらに進化し、へこむ所はへこんでいた。
「くっ……、ますます差が開いていく……。」
「セッカちゃん、競い所が違うからね!?
ここは競わなくて良いの!!」
「勝者の余裕ですね?」
「それを言うなら隣家の草は青いじゃないの?
こんなの肩が痛くなって困るだけよ?」
「うう……、隣の芝生は青い(となしば)か……。」
「何よ、となしばって……。」
ちなみにクラスメイトが多すぎる上に
この段階では競う相手なので、まぁアマンダさん以外に
気軽に話せる相手も居らず。
いえ、王侯貴族相手に平民が話し掛けると
基本面倒毎になるから、話さない訳ですけど…。
しかし、秋の1ヶ月がやってくるとそんな事は関係ない。
「いいか!お前達!1ヵ月後、ついに総合運動会が開催される!
ここで国軍科が1位以外を取るなどありえない!」
国軍科、つまり体育会系のノリもあるので
1位以外を取ると、大抵その後教師の態度が悪くなるとの
噂もあり全力でやらなければいけない。
そんな総合運動会は、当然国軍科の校舎で行なわれ
他の科の人達は魔導列車の旅を満喫しながらやってくる。
「だから、私達が設営をすると……。」
流石に上級学校の総合運動会と言うだけあり
貴族もやってくる上、今年からは王族もやってくる。
競技場はそのまま使うので、客席の掃除をすれば良いのだけど
それらも含め、飾ったりも国軍科が行なう。
そして当日、凄く晴れ渡る上に
実は総合運動会、と言うのは一般人が見にも来るくらいの
ディメンタールでは一大イベント、お祭だ。
最早娯楽の1つであると同時に、国が胴元となって
賭けすら行なわれる。
但しやはり学生が出る事から、賭けられる金額は低い。
ただ出店などもある上に、魔導列車も増発され
広い敷地に仮説のテントなども張られるが
これを私達、1年がやるらしいのだけど
今年は、私1人で作る事が決定している。
理由?遠距離行軍の蔦テントが立派だった事。
魔物などの警戒が楽になる事も含めて
一瞬で出来るからだ。
今年は蔦テントだらけとなる上、消すのも一瞬。
本来なら1週間以上掛けて総出でやる設営が
あっという間に終わった事で、来年と再来年まで
やる事が決定した………。
ちなみに報酬は無いです、学校の行事ですから。
そして日に日にお客さんがやってくるのを国軍科が受付して
順次、テントに案内をするなど
全て国軍科がやる事になっている。
この理由は、かなり昔に遡るのだそうで
国軍科が強すぎて、それまで設営は国軍がやってきて
用意していたものを、国軍科の学生だけで行なう事での
いわばハンディキャップなのだそうだ。
露店にしてもそうだ。
大半は商業ギルドに依頼して、各地から美味しい屋台を選別し
わざわざ来ていただく。
その分、謝礼も多く出て屋台主も喜ぶし
各地の美味しい屋台が一斉に集まる事で、集客にもなるとしていたのが
一部、国軍科の生徒が行なう屋台が3つだけある。
1年、2年、3年で1つづつ。
「で、蔦テントの設営も私なのに?屋台も私なんですか?
殲滅するならアマンダさんの方が適任ですよ?」
「誰が観客を皆殺しにするんだね?
そもそも国からも絶対にアマンダ・フォン・エンデバーは
屋台に僅かでも参加させてはいけないと厳重に警告文が
王紋付で届いている。」
「王紋…、ついにディメンタール王すら危険だと認めたんですね…。」
「そうだ。で、お前さんは料理が上手いな?
と言うか既に1年の間だけではなく、2年や3年でも噂になっている。」
「まぁ来年、商業ギルド許可を取るくらいには?」
「と言う事で安くて美味くて誰でも出来る料理をだな」
「随分と厳しい条件ですね……。」
「お前は選手だろうが…、ずっと貼りついていられるならまだしも
そうはいかないだろうが。だから誰でも出来て、となるのだよ」
「誰でもねぇ……。」
こうして、私は屋台の為に兵器庫への入場許可を取り
鋳潰す予定だと言う、古い大砲を1つ借り
いかにも国軍らしい屋台を1つ提案した。
砲身部分を加熱するように魔法陣学で使う過熱魔法陣を
確かめながら試作する事数時間で、意外と簡単に出来た。
ただ問題は中古砲身の蓋の部分だった。
中の圧力に耐えられる事、そしてハンマーで叩いて
解放出来るけど、吹き飛びすぎない事などを考慮すると
1年生の技量では流石に無理だと、2年生の力を借りた。
条件?来年3年になった際にはこの大砲を使う権利です。
実験も成功し、3日でギリギリ間に合わせ
誰にでも作れる、美味しい、そして安価に済ませられるという
部分だけは流石に砂糖を使うので難しかった。
「うむ、これなら国軍科らしい屋台になるだろう。
価格の高さはまぁ量で加減すれば良いだろう。」
少々危険な屋台ではあるけど、想像通りのものが出来
ついに上級学校の総合運動会の開催日を迎えた。