第6話 学舎到着!
ほぼ全員が疲弊しまくっている中、学舎につくと
すぐに宿舎に案内された。
皆、これで休める。
と、気を抜いた所で真っ先に呼び出されるとかは
流石になかった。
「チッ、不意をつくくらいあると思ったのに…。」
「いくらなんでも私達、まだ学生だからね!?」
流石にそこまで鬼ではなかったようだけど
翌日からの時間割りを配られ
翌朝、上級学校の2年生と3年生による歓迎会が開かれたけど
疲れがまだ取れていない人などが多く
1年生である私達の出席率は非常に悪かった。
「今年は少ないな…。」
「例年でももう5割増しくらい居るのにな…。」
「あれだろ。今年の先頭はヴォルフ中尉らしい。」
「「ああ…。」」
何その納得したような返しは…。
耳を周囲の声に気を配って聞くと
かなり無茶をする人らしい。
確かにそれはあった。
例えば100メートルくらいある激流の川に
ロープが広い間隔で張られていて
その上を歩くなんていう場面もあったけど
中尉はロープを歩かないで、激流の上を歩いた事で
それを真似た学生が流されて、バーネット少尉にぶん殴られたりとか?
あと何故か吊り橋を二人三脚で渡ると言う物があり
何故か男女で1組で渡らされた。
吊り橋効果を狙っているのかは解らないけど
とりあえず2人の体重プラス80キロの重さで
橋を支えているロープがブチブチ言っていた辺り
純粋に恐怖を与えただけに過ぎないけど
この行軍の目的から言えば、合ってるのか小一時間問いたかった。
あとは途中でばら撒きクイズのようなものがあったのだけど
ばら撒く範囲が異様なまでに広く
1つ拾うのすら大変なのに5問正解で通過とか
意味が解らない上に、問題の半分が
先生のプライベートな問題だったりして
答えようが無いとかは辞めてほしい。
ちなみにもう半分は学校の規約などだったけど
そもそもまだ規約すら教えてもらっていないのだ。
誰も通過できず、疲れるだけの謎のイベントだった。
あと途中に先輩らしき方々の屋台が途中途中に出ていて
買い食いが出来るとか
伝説の剣、と言う名前の岩に刺さった剣が置いてあって
抜けたら君の物!とか書いてあったけど
鑑定したら、岩の中で剣がT字になっていて
絶対に抜けない土属性魔法の【石操作】で
作り出した、贋作だったとか
上級生が参加している辺り、一応授業と言うより
歓迎イベント?というものらしい空気だけはあった。
そしてこの歓迎イベントも少し変わっていた。
「なんとも解りやすい構図だこと……。」
パッと見てなんとも解り易い。
第一王子派、第二王子派、第三王子派、中立派等々。
派閥ごとに綺麗に分かれた、貴族の子供などによる
これも1つの派閥争い。
特に第一王子と第二王子は本年一年生として入学されたが
まぁ二年生に三年生までくっついて回る。
「本来、私達もつくべきなんでしょうけど……。」
「あんなのただの縮図であって中将の派閥争いでしょう?
アマンダさんはまだしも、現状の私には
さして関係ない気がしますけど?」
そういうのはやりたいのがやれば良いと思う。
まぁ、後々エンデバーを名乗る事になると
自動的に第一王子派閥になってしまうのだけれど
どうもどっちも気にいらない。
ただ理解出来なくも無い。
ここに居る王子達はどちらも正妻たる第一王妃様の子だし
第一、第二なんてのは双子だから
どっちが先に出てきたか、と言うだけだ。
そして第三王子派、と言うのがあるのだけど
こちらは第二王妃様の子だそうだし
さらには第一王女派なんてものすらある、こちらも第一王妃様の子だ。
この歓迎イベントとやらも、どちらかと言えば
あの王子2人の為のものにしか見えない。
しかも下級学校と違い、家名も名乗るから
王族、貴族、豪商、平民とスクールカーストが完成している。
現時点で言えば、アマンダさんは貴族だけど
私は扱い的には平民になる。
ただ名乗るだけであって、上級学校の学生と言う意味では
王族だろうと、平民だろうと平等だけど
彼等はそうは思わない、振舞わない。
その中で私は3年間、耐えていかないといけない。
アマンダさんも一応挨拶には行ったが
私は平民なので、行く必要性も無い。
むしろ声を掛けると無礼だのなんだのと、言われるのが関の山だ。
それに問題は、まだクラスも決まっていない事だ。
2年からはアマンダさんとは選択する授業が完全に分かれる。
一緒に居られるのは1年の間位と言うものなのだけど…。
「やるせないわぁ……。」
翌日のクラス発表で、アマンダさんとこれから完全に
分かれる事が確定した。
アマンダさんはA組、私はG組。
特に1組2組みたいな分かれ方であって
成績順とか言う事は無いらしい。
そもそもこの国軍科には入試が無い。
むしろ国軍科は、ここからの伸びを見せれば良いのと
途中途中で篩いに掛けられていくから
入試なんてなくても問題無い、と言うのが方針らしい。
そして1日の準備期間を経て
時間割に沿って、授業が始まっていく。
時間割自体が月単位であり、小学校や中学校などのように
週単位でのローテとかでもなく、毎日毎日違う内容だったり
その続きだったりと、かなり細分化されていた。
しかも最初はキチンとした行進からだ。
「そこ!乱れてるぞ!?」
いわゆるクイックマーチにダブルマーチ、スローマーチのような
速度違いの行進を交え、綺麗に行進出来るまで
延々と続き、一体とならねば終わる事の無い授業とか?
しかもこの世界では銃器は魔導銃と言う
火薬の変わりに魔力を爆発させて、弾頭を飛ばす銃器になり
ごく一部の人しか使えないので銃を構えて行なわない。
無手や剣、槍などを使ったパターンなどを何度も繰り返し
身体に染みこませていく。
しかも全てのクラスが出てきて、行なっていき
終わったクラスは残るというもので
残ったクラスは、笑われながらも乱れなく行進をする。
その笑いに怒っている余裕なんて存在しない。
まぁ私やアマンダさんは小さい頃から
テンポも全て叩き込まれているから、問題無いのだけど
国軍は戦うだけではない、式典などでは
こうして行進出来なければならない。
行軍との違い?装備の違いくらいだよ。
行軍ならフル装備だし、こういう場合は行進用の制服というか
まぁ軍服なんだけどそれを着て行なう。
こういう所に派閥による足の引っ張り合いなんて出てくると
それこそ終わりが見えない。
最初の1ヶ月くらいは延々とこれだ。
剣の持ち方、振り方、槍の持ち方、振り方なども混じり
難易度も上がっていく。
行進しながら持ち方が変わったり、振ったりもすれば
2つに分かれたりだのと、ここで一歩遅れれば即時やり直し。
口には出して言えないけど、これのきつさは笑えないのですよ?
延々体育の時間に「右向け右!」「左向け左!」「前ならえ!」とか
やっているイメージをしてもらうと良いかもしれない。
しかも完璧に揃わないと終わらない。
こうして日々、精神も肉体もガリガリと削られていく日々が始まったのです。