第4話 ディメンタール上級学校入学
ディメンタール上級学校 国軍科 入学式当日。
豪華とも思える上級学校の門や学校の立派さなどに驚き
今思えば、田舎者丸出しだったと私は思う。
国軍科は、唯一他の科との交流もほぼ無く
入学式では首席が挨拶するのだけど、どうやらこの国の王族らしい。
「セッカちゃん、らしいじゃありません!
あれは第一王子のセイル様です。
エンデバー家は、第一王子派になるのですよ?」
「へー。」
「相変わらず、そういうのに無関心ですわね…。」
「派閥は食べられないからかな…。」
「全く…。」
ただそれを睨みつけている人も居た。
「あれは双子の第二王子、ゲイル様です。」
双子で第二王子…、また厄介な。
それこそ出てきた順番の違いだけだよね…?
どうやらお2人とも国軍科になり
セイル第一王子は、頭脳派
ゲイル第二王子は、肉体派とまぁ見た目で解る。
第一王子は細い感じだけど、ガリガリと言うよりは細マッチョ?
第二王子はまぁみたまんまマッチョだ。
と言うか、動き難そう。
そして入学式が終わると同時に、国軍科名物の
最初の授業が始まる。
まず重量が40キロ程ある背負袋を背負います。
中には、自分達で用意してきた荷物を詰めて約20キロ。
プラス大小の鉄板が入れられ合計で40キロになるように調整されます。
入学式自体が既に制服での参加なのでこのまま背負います。
そしてこのまま王都の北門を出ます。
ここは国軍と王族専用の門であり、それ以外の人が使う事は出来ません。
何しろ王城の中や脇を通らないと、北門から出られないのです。
そして北門で、識別番号のついたヘルメットのようなものを受け取って被ります。
これで準備完了です。
「では只今より!国軍科恒例の学舎までの遠距離行軍を開始します!
先頭はウルフ・ヴォルフ中尉!殿はマリア・バーネット少尉!
もし途中で危険だと判断した際は、背負い袋手前についている
救難信号用魔導具を即時打ち上げる事!では移動開始!」
説明が超短いけど、全員解っている内容。
ここから学舎まで、実は7日程走らなければ到着しない。
理由?国軍科の授業は危ないから人の居ない森の中を切り開いた
学舎で行なわれるのです。
だから、他の科との交流は比較的少ないのです。
あ、運動会とかあるんですよ?
ただ他の科の方々は魔導列車でいらっしゃるので?
そんな走らないですけど…。
つまり6泊7日、この先頭から殿までの間に収まって
移動し続けると言うものなのですが、地獄の7日間とも呼ばれています。
先んじて、国軍科の厳しさをまず植えつける目的っぽいです。
開始と同時に焦るように走っている人達が居る中で
私とアマンダさんは、まず走る為の準備に移る。
別に組んではいけない、と言う事も無いのです。
説明が少ない、つまり個人の判断で決めていき
それが駄目だとすれば、並走している先生方が止めるからです。
それにまだ殿の方が動かないのは
この方は最後に走る人についていくだけであって
先頭の方はある決まったペースで進むだけと言うこの行軍。
「しかし行軍なのに、まとまりは無いんですね……。」
何しろ開始と同時に、先導役のウルフさんが突っ走っていったからです。
そしてほぼ9割以上がそれに釣られ、一気に走っているんです。
「あー、叫んじゃったりして…。体力はこれから使うって言うのに……。」
「私達もそろそろ行きましょう、セッカちゃん。」
「はい!では早速……。」
瞬時に魔力を練りに練って、私とアマンダさんを覆った。
「【重量減少】!」
私は私とアマンダさんの重量を、重量魔法で軽くする!
そのままアマンダさんの背負い袋に掴まった。
「【風】!」
アマンダさんは風を操り、切り裂くように一気に前へと進む。
私?重量魔法を継続的に使っているから
アマンダさんに捕まっているだけだよ?
あと私、属性魔法苦手で無属性魔法しか使えないんだよ。
むしろ風属性魔法はアマンダさんが得意だし
私はアマンダさんと私を軽くしている。
つまり協力しているだけで、決して楽をしている訳ではない。
アマンダさんだって、私プラス合計80キロの荷物を
風属性魔法だけで、推進力に変えるのは無理だ。
そしてそういう人達が、残っていた1割に満たない人達だ。
土を操る人、身体系の補助魔法を使う人。
むしろここは万国び○くりシ○ーの撮影現場か何かだろうか?
スケートのように、土の上を滑る人。
飛び蹴りでそのまま延々と宙を進む人。
転がるように進む人。
あと難易度がとんでもなく高いと言われる風属性魔法で空を飛ぶ、と言う人まで居た。
「あ、途中で落ちた?」
「あれ難しいのよね。途中途中で降りないと続かないのよ?」
「そうなんですね…。」
降りてはまた飛び、と何か見せ付けている感の方が強く
楽しているようには思えなかった。
そして遠距離行軍、の行軍らしくなってきた。
先頭がある程度進んだ所で、どうも速度を緩めたらしい。
徐々に行軍らしく人が溜まってくると、また引き離す。
どうやらこれを繰り返していくみたいなのだけど……。
これを11歳、12歳の子供がやるんですからね?
次第にどんどん行軍は長くなるし
色々な場所から魔物すら襲ってくる。
私とアマンダさんは進む事に集中し、無視していくが
やはり魔物もそれを許してはくれない。
そしてアマンダさんがそのままぶつかり
魔物を撥ね飛ばしていく。
アマンダさんの能力は【自由結界】と言うユニークスキルで
【結界】と言うスキル持ちの人は多く居るのですよ。
ただアマンダさんの場合は、本来四角や円と言った
決まった結界の形以外にする事が出来る上に
【完全結界】と呼ばれる類だった。
空気なども通すか通さないからすら決められる上
耐久度も存在せず、決まった魔力量で展開出来る事から
別名で時間結界とも言われ、必ずその時間までは維持出来る
完全な結界でありながらも、形を変えられる。
さらに範囲すら大きく出来るけど、ここは消費魔力量が増えるという
欠点はあるけれども、街1つどころか王都そのものも覆える
巨大な結界にすら出来る、まさに防衛の要ともなる
可能性すら高いユニークスキルなのです。
しかも結界と言うのは術者を中心に展開すると決まっているので
移動しながら使うと、こう吹っ飛ばす結果になるのです。
ただ、この行軍では私達の通れる範囲が狭い場所すらあるので
アマンダさんは殆ど私とアマンダさんの2人分ピッタリに沿って
張っているからこそ、他の参加者の邪魔にもならず
魔物がやってきても、力も要れずとも吹き飛んでいってくれる。
これが現エンデバー中将が、軍人向きと言った能力だけど
これ冒険者でも良いんじゃ…、と思ったけど
貴族が冒険者をするのは、金銭や名誉目当てになるから
それなら嫁に行け、って話らしいです。
まぁ、貴族様特有の政略結婚ですかね?
ちなみにエンデバー中将曰く「私が認めない男になど、孫はやらん!」と
何目線から言ってるんでしょうか?
それを言うのは現エンデバー伯爵であるお父さんくらいですからね?
あとアマンダさんのお父さんは、内政向きで軍人には向いていないです。
5歳のアマンダさんがふざけて叩いただけで
肋骨折れましたから……。
その日、1日は緩急のついた動きや
なにやらスケートのような横回転をしているヴォルフ中尉や
突然飛び上がり縦回転をしているヴォルフ中尉や
それを見て、殿なのに猛スピードで突っ込んできて
とび蹴りをして、最後尾に帰っていくバーネット少尉とか…。
まぁ色々ありつつも、全員が1日目の野営地点についたと同時に
次の問題が出てきたのです。
「うしっ、今日はここで野営する。皆、ごくろうだったな!」
なんて中尉が言っているけど、まだついてるの半分と居ませんから。
「じゃあ各自、テントを張ってそこから材料持っていって
自分達で飯作って食べて寝ろ。明日の朝6時出発だ!」
全員が驚くように叫んだ。
いや、私達も聞いていないよ?
テントを張るのは知ってるけど、まさか料理まで…?
私は嫌な予感しかしなかった。
2021/05/31修正点
何しろ開始とドジに、先導役のウルフさんが突っ走っていったからです。
↓
何しろ開始と同時に、先導役のウルフさんが突っ走っていったからです。