第39話 (背後に)忍び寄る影 その2
「おい、そいつは玩具じゃないんだ。
触ると碌な事が起きないぞ?」
「五月蝿い!そのまま床に這い蹲っていろ!!」
今の所、俺専用である参式魔導銃「ツインブースター」を
その場に捨て、這い蹲った所で俺は拘束されたが
どうもこの衛兵、ツインブースターを回収しようとしているようだ。
「俺は知らんぞ?それは国軍研究所で作られた最新の魔導銃で
安全装置がついている。魔力パターンが合わない奴が持つと
【気絶】の魔法が魔導銃に流れるぞ?」
「五月蝿い!黙ってろと言ったら黙ってろ!」
そう言いながら俺の腹を蹴り、ツインブースターを回収しようとして…。
「だから言っただろうが。回収したいなら第三魔導銃撃特中隊に
連絡しないと無理だ。魔力を流さずに持ち上げても
周囲に【気絶】の魔法が流れるぞ?」
「五月蝿い!罪人が口を出す……「貴様、衛兵如きの分際で何をしてる……」がぁぁぁぁぁぁ!?」
そこに現れたのはフレア准尉だった。
「フレア准尉、申し訳ありません。」
「ドルー二等兵、貴殿は何も問題が無い。
私はフレア・バーニング准尉 第三銃撃魔導特中隊 所属の騎士だ!
ドルー・ヘイルレザー二等騎士兵を拘束し
この装備を奪おうとしている状況について説明してもらおうか?」
「あ?たかだか准尉「馬鹿者ぉ!第三銃撃魔導特中隊はエンデバー陸軍中将の管轄であり
ディメンタール王の庇護下にある部隊である!
貴様ら衛兵の下っ端如きでは話にならん!
さらにここは東門の詰所!何故こんな所に連れ込んでいる?
もし街で騒動を起こした場合は、一般街であれば南門!
貴族街であれば西門と決まっている!貴様ら、何を企んでいる!!
返答次第では、全員を蒸し焼きにするぞ!?」
嗚呼、なんか戦闘時の俺を見ているみたいだな…。
やってきた衛兵隊長が部下からの報告をまとめ
フレア准尉が、その話を聞いた。
「ありえんな。チンピラが骨折?そんなもの本人の言い分であろう?」
「だが、それを見ていた証人が居ないのも確かだ。」
「ふむ。ドルー二等騎士兵、あれは入れてあるか?」
「ええ、しっかりと。」
そう答えるだけで、フレア准尉が俺の首筋の魔導具と
そのまま腰まで繋がっている魔導具一式を外した。
「これは国軍研究所謹製の、魔導記録装置である!
記録のレバーを入れた所からの全ての記録が
この中の魔石に記録されている。
これを再生させれば、真実は自ずと解る事だ。」
小隊長が全員に普段から装着しておけ。
いざという時、これが証拠となると
無理矢理つけさせられたもので
軍服に普段から縫い付けてある物だ。
「これは魔石に映像、音声を記録する魔導具で
後からその内容を弄ったり、一部分だけを消す事は不可能。
全てをそのまま残す記録装置であるが故
どちらが正しいか、すぐに解る。」
フレア准尉の手に乗せた魔石に魔力を注ぐと
すぐに周囲に当時の状況が映った。
さらに音声も凄く正確に聞こえ、一字一句間違いなく
当時が再現された。
「ほぅ、これで骨が折れた?随分と軟弱だな。
そしてこのチンピラ共が、一方的にドルー二等騎士兵に襲い掛かっているではないか。
さて、やけに衛兵の到着も速いがどういう事だ?」
「いえ、あの………。」
「そうだな、面白い事を教えてやろう。
何故、私がここにやってこられたと思うかね?」
「いえ、さっぱり解りません……。」
「知っていたからだよ。第二王子派閥からの金子で
呑む酒は旨かったかね?ベルバッソ東門衛兵隊長殿?」
「な……何の事だね!!」
「ほぅ、シラを切るか。良いだろう。」
フレア准尉は一通の手紙のようなものを衛兵隊長に見せた。
「さて、ここに書かれている事は本当かな?衛兵隊長殿?」
「ぐぅっ………。」
「まぁ、知らぬ存ぜぬを決め込んでくれても良い。
だが何をすべきか。当然解っているだろうな?」
こうして俺は即時解放され、チンピラ共は
全員牢に入れられ、明日下級裁判所送りとなった。
そしてフレア准尉と共に、貴族墓地を再度訪れると
俺が捕まった際に、地面に落ちて踏み荒らされた花束が1つ…。
それを拾い、母上の眠る場所へ向かうと
そこには2つの花束が置かれていて、墓も綺麗に現れていた。
「なんですかね、このガラス瓶は……。」
「なんだ、知らなかったのか?雑貨店に最近入ったワンカップと言う
酒だ。なんでも米と言う穀物から出来ていて
墓前に良く供えるらしい。と小隊長殿は言っておったな。」
「片方は見覚えがある。母上が好きな花だ。
恐らく父上が。もう1つは………小隊長?」
「なんでもそのまま置いていくのは駄目だそうだぞ?
だから呑め!」
そういってフレア准尉は1つ新しく取り出し、蓋を開けて
呑み始めた。
俺も呑むと、変わった酒の味がした。
「でもこの花、枯れてませんか?」
「なんでもドライフラワー、と言う乾燥させたものだそうだ。
花を長く持たせる加工だかがされていて
これはこれ以上枯れる事も、崩れる事もないそうだ。
この花も千日紅と言い
花の意味は『不朽』『変わらぬ愛情を永遠に』だそうだ。」
「不朽、変わらぬ愛情………。」
「変わった小隊長殿だな。どうやらあの雑貨屋を経由し
暗部から情報を貰ったらしくてな。
今日は私がお前をつけていた。」
「そうでしたか…。」
「だが勘違いはするなよ?お前が何かすると思い私を仕向けた訳では無い。
小隊長殿が私に頼んだ事は、この暗部からの情報を持ち
ドルー二等騎士兵が、無事に母親の命日に墓前に花を添える為の
手助けをしてこい、だとさ。
本当、変に変わっていてそれでいて面白い小娘だ……。」
「………………………………。」
確かに小隊長は変わっている。
訓練では、鬼か何かにしか見えないくらいだと言うのに
平時はそれを感じさせない。
「私にはあれで二十歳だとは到底思えないがね」
「え?」
「考えても見ろ、二十歳で二等兵から特務曹長にまで駆け上がり
それでいて不思議と商売までしている。
それも見た事も無いような酒や食い物まで扱っていて
常に空軍にも海軍にも目をつけられている。
それでいてあの小娘、恐らく私やヴォルフ少佐より強い……。」
「はぁ…。」
「しかも孤児だと聞いている。いくらエンデバー陸軍中将の
秘蔵っ子だとは言え、いささか規格外すぎるくらいだ」
「それは確かに……。」
「それにあれは何か年の功を感じる。
もはや祖母か母親くらいではないかと思うくらいにな。
あの小娘は決して見捨てない上に、必ず1,2歩先を何故か歩いている。
変な感じだが、あれについていけばあの小娘は絶対に切らないが
我武者羅に追いつこうとさえすれば、私は更なる高みに届くのではないか。
そう思える気がする。
それでいて相当なお節介焼だ。何しろこんな私の母や弟ですら
助けられた挙句、病も治してもらったが
本来はそこまではしないらしい。
あの小娘が、全額治療に掛かる費用を出したそうだ。」
「そうだったのですか……。」
「そしてお前さんもお節介をこうして焼かれている訳だ。
最早、いつ休んでいるのかと思うくらいの化け物だよ、あれは………。」
「国軍騎士試験から一緒ですから知ってますよ。
小隊長は、こんな俺でも拾い上げてくれたんですから……。」
「それはどうだろうな。
ついてくる気が無くなれば、あれはいつでも捨てるぞ?」
「ははっ、だから捨てられないように追いかけるんですよ。
並んでいたと思っていたけど、実は先に居た。
追いかけても追いかけても、小隊長は必ず先に居る。
でもそんな小隊長でも1つだけ欠点がありますよね……。」
「………何かあったか?」
「そうですね……。そこの木の裏で見ているのが
バレていないと思っている所ですかね…。」
「ははっ、そりゃあ言えてるな」
「嘘っ!?バレてたの!?!?」
「小隊長は隠密行動苦手すぎです。もう少し魔力を抑えないと
魔力感知で即座にバレますよ?」
「あと足音を消すのが苦手らしいな。こんな場所でスリ足など
位置を知らせているようなもんだ」
「マジデッ!?」
突っ込む事に最近慣れすぎていて、潜むのはあまり得意では無いセッカだった。
2021/06/01:修正
それでいてあの小娘、恐らく私はヴォルフ少佐より強い……。
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あの小娘、恐らく私やヴォルフ少佐より強い……。
あと足音を消すのが逃げてらしいな。こんな場所でスリ足など
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あと足音を消すのが苦手らしいな。こんな場所でスリ足など




