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第21話 最高裁判所と神の降臨

「さて、この度エンデバー陸軍中将の要請により、王命にて

 捜索していた上級学校1学年G組のセッカ嬢についてだが

 昨日、空軍の第三空艇団の軍艇『フィルマメントウィング』内の

 動力室横に、本来存在しない独房が存在し

 その上で中から救出された件についてですが………。

 空軍の見解を聞かせていただきましょうか?」



「本件についてですが第三空艇団の総指揮となるベガッタ少将の

 独断かつ偏見によるものと結論付けました。」



「ほぅ、独断と偏見ですか?ではフィルマメントウィング内の

 艦長室に動力室横の独房。これもベガッタ少将の独断かつ偏見により

 作られた。なんて事は言いませんよね?

 フィルマメントウィングはベガッタ少将が軍に入る前から

 存在する、古き軍艇です。暗部が調べた結論として

 この部屋に独房などは、どうやら新造された直後に改装されている上に

 尋問室なる、ありえない部屋まで存在している。

 これら全てがベガッタ少将の独断かつ偏見だと、本当におっしゃられるおつもりで?」



「そのように聞いております」


「聞いている?結論付けたのは貴方ではなく別の方と言う事でしょうか?」


「私はこの結論の伝達に来ただけであり、それ以上は知り得ません。」

「ほぅ、ここは公式な軍議の場だと言うのに

 空軍はただ伝言を伝えるだけの役立たずを送り込んできたと?」


「…………………。」


 緊急招集された場に、空軍は将官は1人もおらず

 佐官が伝言役として出てきただけ。

 近衛に陸軍に海軍と、空軍はどれだけ馬鹿にすれば気が済むのだか……。



 その上で空軍はこうも言ってきた。

 あのセッカと言う罪人は、許可なく不法侵入をしたと。

 しかしそれは王命により、後に許可と変わったと。


 後からでもそれを覆せる程、強力な王命に様々な言い訳をした上

 最終的には、セッカの生まれなどまで調べ上げた空軍が

 セッカは敵国の密偵、間者であるとした。


 更にアマンダの事も持ち出してきた。

 セッカは禁忌の神魔法に手を出したのだと…。


 そうでないならセッカはあの幻の神薬と呼ばれる

 エリクシールを使った事となり、それを入手

 もしくは製造出来ると言う事になるのだと。


 そして後者等、世界的に見てもありえない。

 禁忌に手を染めたのだと………。


 空軍は自らの事を棚に上げ、セッカの罪のみを問う事で

 自らの正当性をアピールする事だけに注力し

 あの桃色の部屋や、独房がどこにあったかなどは

 一切答えなかった。





「うだうだうだうだと女々しい連中ばかりかぁ?空軍は……。」

 この場、将官も多くいる中でこういう一言を放てるのも凄かったが

 この人物こそ、この場で最も身分の高い人物であっただけに

 誰も文句を言う事はなかった。


 身の丈2メートルは超える、体躯の人物。

 現ディメンタール王国 国王、デルタ・フォン・ディメンタール。

 そして軍部としての最高責任者となるデルタ・フォン・ディメンタール大元帥。


 こう言葉は乱暴な物言いだが、この場には大元帥として来ているからであり

 見た目の怖さと反し、国王として対応する場合は

 キチンと言葉に気をつける繊細さも持ち合わせている。

 


「ごちゃごちゃした言い訳は要らん、アレックス。」

「はい。」

「最高裁判所を開けろ。」

「……………神実の秤をご利用になられるのですね…?」

「そうだ、この際全ての関係者達を呼び、ディセンブルクとゲーテルエードからも

 規定に沿い召喚した上で、神実の秤に聞きゃ早い。」


「そ…それであるならば上級裁判所の真実の秤で宜しいのでは……。」

「あ゛?てめぇ俺の話を聞いてなかったのか?

 俺は最高裁判所を開けろ、と命じたんだ。

 お前ら空軍はそれに意見する、と言う事で良いんだな?」

「そ……、そんな事は!?「なら黙ってろ!!」ひぃっ!?」


 国王で大元帥であるデルタが机を叩くと、そのまま机は

 叩いた手の形に壊れ、その音と状況に

 空軍の佐官は、恐れおののいていた。


「アレックス、調整は任せる。良いな?」

「御意。」


 王の言葉で、開かれることとなった最高裁判所。

 裁判所の仕組は基本的には下級裁判所、上級裁判所とあり

 1つの国としては上級裁判所が各国の王都や帝都にあり

 日本で言う最高裁判所、の位置付けとなる。


 最高裁判所は言わば上級裁判所の上位であり

 世界1位たるディメンタールの王都に存在し

 ここでは基本的に国と国の問題を解決する為に開く場所だ。

 言わば国際的な裁判所となる。


 但し上級裁判所には「真実のしんじつのはかり」と呼ばれる魔導具がある。

 これは質問をはい、いいえで答えられるものに限定し

 公式の場における、嘘発見器であるのに対し

 最高裁判所には「神実のしんじつのはかり」と呼ばれる

 世界にたった1つしかない聖遺物がある。


 この聖遺物は、嘘発見器のような生易しいものではない。

 なにしろこの聖遺物には神が降臨する上

 その全てを見抜き、それについて粛々と真実のみを語るからだ。


 聞いた事だけに反応する聖遺物を真似た魔導具と違い

 語らずとも、全てを神が語るからだ。


 この世界では、神は嘘をつかないとされている。

 そして神が降臨する事などまずありえない。

 この聖遺物を使用するだけでも、実は非常に大きなコストが掛かる。


 必要な魔力がとんでもなく桁違いで、それこそディメンタールの騎士達が

 総出で魔力を供給しなければ、とてもではないが維持出来ない。

 だからこそ、最高裁判所と共に世界1位である国にしか

 使用出来ないとも言われている上に、聖遺物である事と共に

 この神実の秤は世界の財産、と言われ

 ディメンタール王国の持ち物ですら無い。


 それは世界一位が入れ替わり、一定期間維持されれば

 最高裁判所と共に移設される事を意味する。


 そして利用には世界第三位までの

 ディメンタール、ディセンブルク、ゲーテルエード、3つの国から許可が必要となる。


 そして空竜近衛騎士団 団長であるアレックスから

 ディセンブルク王国、ゲーテルエード王国に即時打診の後

 2国から王とそれを護衛する騎士団が随伴し

 すぐにやってくる事が決定し、最高裁判所は3日後に開廷する事が決定した。


 そして空軍は焦ったが、既に開廷が決まった以上

 出席しない訳にはいかなかった。


 何故か?

 何しろ神たる存在が、勝手に語りそれがそのまま

 自分達の罪となるからだ。


 神は嘘を言わない、とも世界的には言われているが

 それも正直信じていない者も多ければ

 裁判所である以上、異論反論も出来る。


 絶対にしてはいけないのは、出席しない事や逃げる事だ。

 やもすれば、関係ない罪すら被る危険性もある上

 していない事まで罪になる可能性が僅かにも否定出来ないからだ。


 そして開廷された最高裁判所には、他国からも傍聴人が押し寄せ

 民衆も、傍聴を希望したが裁判所には流石に人数制限がある。

 主要な国の王都などには、魔導具と魔導通信機器を利用した

 中継映像と音声が届けられるのも、最高裁判所の特徴だった。


 ここで行われるのは、世界的に国同士が行なう裁判であり

 それを密室で済ませる事を由としない事でもあったが

 何より神の降臨と言う、滅多に行なわれない

 むしろ1つのイベントとしても扱われているからだ。


 但しそれも神の許可があればの話であり

 今回は中継そのものが、あまりに狭義な事だとして

 神が拒否した事から、最高裁判所には

 多くの傍聴人が詰め掛けてきた。


 ただ神が更に拒否した。

 これは裁判ではない、狭義の真実を知る為の神実の秤の利用である以上

 無関係な者の傍聴は認めない。

 最高裁判所の規定に沿った、最低限の人員のみの入場を許可し

 それ以降の参加も神が認めた者のみとされた。


 認められたのはディセンブルク、ゲーテルエードの王とその護衛含む

 国軍関係者や、内政官などの国家に勤める者。

 そしてディメンタールも同じ様な条件に、当時者となる

 アマンダなども選ばれたが、アマンダが期末試験で一緒になった

 第十九班の生徒も召喚された。

 そして国軍は主に空軍、将官、佐官に限らず尉官や下士官。

 陸軍なども召喚され、海軍は将官と佐官に限られた。


 そして始まる前に、現在ディメンタールの魔力供給に控えている

 騎士達を全員解散させるよう、神は伝えた。





「それでは世界法の定めに則り、神実の秤による裁定を行ないます。

 本件はまず裁判そのものではなく、真実を知る事のみとしており

 裁判そのものは、真実が判明した後にディメンタール下級裁判所

 及び上級裁判所で行うものとします。

 此度、進行を行なうのはゲーテルエード上級裁判所、最高判事である

 私、マクガイア・フォン・ゲーテルエード 第三王子が神の指名の下

 行なう事となりました。」


 その言葉が終わると、本来なら裁判を行なう法廷内の空気が

 スッと下がった感覚と共に、3人の神が現れた。


「私の名は魔法と書物の神。この神眼の秤を生み出し、この世界に

 聖遺物として与えた存在である。」


「我が名は創造神。この世界レヴアースを生み出し、統べる存在である。」


 そもそも過去、3人の神が降りた前例は無い。

 必ず1人だった神が3人だった事も驚きだが

 その2番目に名乗った神が、この世界を生み出した創造神だと名乗った事。

 つまり、この世界の最高神が降臨したと言う

 世界でも類を見ないものだった。


 だが、その次の神は更に全員を驚かせた。


「僕?世界神だよ?んっと、君達が異人と言う人達が住む異世界など

 全ての世界の頂点に立つ神様だよ?創造神より偉いんだよ?」

「世界神様、お戯れはそのくらいに…。」

「堅い!新しい創造神は堅いなぁ………。っているじゃん!!

 やっほー!タクミ君、元気してた?

 何か神殺しとか呼ばれちゃって大変だね!?」


 違う意味で驚いた。

 まず軽い……、神の尊厳とかそういうものから解離した

 非常に軽い物言いに、赤ん坊風の天使っぽい外見から

 極々一部を除き、開いた口が閉まらなかった。

2021/07/03:修正 

此度、進行を行なうのはディメンタール上級裁判所、最高判事である

私、マクガイア・フォン・ディメンタール 第三王子が神の指名の下

行なう事となりました。」

ディメンタール→ゲーテルエード

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