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今日の天気は嘘ときどき飴

作者: 白告 枢

「声劇台本」兼「会話小説」です。


【台本の利用について】

収益化(後述)及び【禁足事項】に抵触しない限りはご自由にお使いください。

また、上演時には台本URLの記載を必ずお願いします。


【禁則事項】

・内容の過度な変更

・世界観を崩壊させるようなアドリブ

・この台本を利用しての誹謗中傷・他者への迷惑行為

・飲酒上演

・自作発言及び無断転載


また、上演時の台本使用連絡はどちらでも構いませんが、収益化(広告、投げ銭、換金可能な課金アイテム含む)、動画の作成、教材での使用、ツイキャスなどの放送録画(アーカイブ)を残す場合は、お手数ですがTwitterアカウント【@kkk_night】までご一報下さい。



私個人の規約は以上です。では、ごゆっくりお楽しみください。


上演目安時間

~30分


設定


香澄(かすみ) (そう)

性別:男性

その他:僕

24歳

甘党。

コーヒー嫌い。

子供舌。

飴を持ち歩いている。



早乙女(さおとめ) (はな)

性別:女性

その他:私

26歳

口悪め。

最近仕事を辞めた。


配役表

香澄 宗:

早乙女 花:



宗「ふんふふーん♪きょ~おはた~のしいクリスマス~」


花「……ガキは気楽でいいな」


宗「ざねーん!!僕はガキじゃありませーん!!」


花「独り言に突っかかってくるやべー奴だったか。失敗したなぁ」


宗「おばさん昼間から公園で何してるの?無職なの?」


花「おばっ……いやっ、二十六はおばさんじゃないし…」


宗「僕も二十四だからガキじゃないね」


花「似たような歳のくせによく人のことおばさん扱いできたなこいつ…」


宗「別にいいじゃん。で、仕事は?」


花「スーツ着てるでしょ。見てわかんない?」


宗「じゃあOLさん?」


花「着てるだけ。辞めたの」


宗「クビ?不景気だね」


花「いや、上司のカツラ引っぺがして辞めてきた」


宗「上司かわいそう」


花「セクハラ親父にかわいそうもないよ」


宗「座りたいから横あけて」


花「あいてんじゃん」


宗「”そーしゃるでぃすたんす”っていうの知らないの?」


花「毎日毎日満員電車に乗って出勤してる人間にはあんまり適用されない言葉でしょ。知ってる」


宗「でも仕事辞めたじゃん」


花「そういやそうだったわ」


宗「今日からニートか」


花「昨日からだよ」


宗「今日スーツ着てるじゃん」


花「出勤しようとして駅で気づいた」


宗「馬鹿じゃん」


花「ほんとだよ。馬鹿みたい……」


宗「あ、そだ。焼き鳥食べる?さっきコンビニで買ったやつだけど」


花「そこは揚げ鶏じゃないのかよ」


宗「脂取りすぎるとお腹壊すんだよ。知らないの?」


花「今日会ったばっかりの人間の体質知ってたら怖いだろ」


宗「それもそっか。うま」


花「いやくれねーのかよ!!」


宗「いるって言わなかったもん」


花「いらないとも言ってないだろ!」


宗「そういうの屁理屈っていうんだよ。いい大人が恥ずかしくないの?」


花「このクソガキが…」


宗「じゃあおばさんもクソガキだね」


花「おばさんいうな。私は早乙女花だ。名字で呼べよ、絶対にな」


宗「わかった花さん」


花「それは名字じゃない!!」


宗「じゃあ花屋さん?」


花「それはもう違うもんだろ…」


宗「乙女屋さん?」


花「“さ”を抜いて“や”をつけるな!!普通に呼べ普通に」


宗「じゃ、早乙女で」


花「なんで呼び捨て…まぁいいか。で、あんたは?」


宗「なにが?」


花「名前聞いてんのよ。教えないとずっとクソガキ呼びになるよ」


宗「知らない人に名前教えちゃダメって言われなかった?」


花「知らない人に名前教えなきゃいけないのが大人ってもんだよ」


宗「えー、そんな大人になりたくないなぁ」


花「そんな歳でなに言ってんだか」


宗「名前に歳とか関係ないよ」


花「じゃあ名乗れよ」


宗「仕方ないなぁ。僕の名前は香澄宗。気軽に宗って呼んでも怒らないよ」


花「あっそ」


宗「呼んだ?」


花「呼んでないわ。紛らわしい名前してからに…」


宗「で、クリスマスにひとりぼっちだから毒吐いてたの?」


花「残念。クリスマスに限らず三百六十三日は毒吐いてんの」


宗「残り二日は?」


花「大晦日と元旦は言わないことにしてる」


宗「へー。おもしろ」


花「棒読みだぞ」


宗「草」


花「そういうあんたは何してたのよ」


宗「さんぽ」


花「バカでかい声で歌って?」


宗「楽しいじゃん」


花「気楽でいいね」


宗「まあね」


花「学生?」


宗「どうだと思う?」


花「私それ嫌い」


宗「大学院生」


花「院生か」


宗「脱走してばっかりだけどね」


花「ちゃんと行けよ」


宗「だってクリスマスまで授業とかやってらんない」


花「社会人はクリスマスも働いてるよ」


宗「やってらんないなぁ」


花「マジでそうだな」


宗「早乙女は誰かいい人いないの?」


花「やめとけって。そういう話苦手なんだよ」


宗「僕も苦手」


花「じゃあ話題にすんなよ」


宗「クリスマスだし許されるかなって」


花「私が許さん」


宗「じゃあ仕方ないか」


花「お前って友達いないだろ」


宗「そっちこそ」


花「いるわ」


宗「嘘はよくないよ」


花「そこで嘘ついてなんのメリットがあるんだよ」


宗「ないね」


花「即答か」


宗「僕は百人くらいいるよ」


花「それこそ嘘だろ」


宗「いるよ。頭の中に」


花「やべークスリでもやってんの?」


宗「幸せになれる研究ならやってる」


花「大学で?」


宗「大学で」


花「それ、成功したらどうなんの?」


宗「みんな幸せになる」


花「具体的には?」


宗「んー、世界から人間が消える」


花「マジか」


宗「始まりがあるから連鎖が起きるのであれば、始まりからなくせば全部終わるよ」


花「キマってんなぁ」


宗「まぁ嘘だけどね」


花「嘘なのかい」


宗「ほんとはこっち」


花「飴玉?見たことないパッケージだけど、新商品?」


宗「んーん。これが幸せになる研究のやつ」


花「やべークスリ作ってた側かぁ」


宗「残念。普通に飴だよ。成分は市販のやつとほぼ一緒。砂糖がちょっと多いだけ」


花「ふーん」


宗「食べないの?」


花「人体に害とかないのね?」


宗「ないよ。ただの幸せになる飴」


花「あんたいつもこの飴持ち歩いてんの?」


宗「まぁ、そういう研究してるし」


花「これいつのやつ?」


宗「最新作だよ。今日できたやつ」


花「ふーん。あとで覚えてたら食べるわ」


宗「そういう人って大概カバンとかポケットとかに食べ物しまって忘れるんだよね」


花「忘れたことないし大丈夫大丈夫」


宗「まぁ、食べてくれるなら何でもいいや」


花「あ、タバコ吸っていい?」


宗「流行りの禁煙にはのらない感じ?」


花「のれない感じ」


宗「気にしないから吸ってもいいよ」


花「ありがと……って、あれ?」


宗「タバコないの?」


花「切らしてたわ」


宗「マルボロでいいならあるよ」


花「何色?」


宗「赤のボックス」


花「私とおんなじだわ」


宗「いる?」


花「いる」


宗「はい。ライターはある?」


花「ん。ある」


宗「僕も吸おうかな」


花「ふぅー……。なんか意外だわ」


宗「なにが?」


花「タバコ。吸ってそうに見えないからさ」


宗「あんまり吸わないかな。お守りみたいなもんだし」


花「神社でちゃんとしたの買ったほうがご利益もあるし安上がりだと思うよ」


宗「そしたら吸えないじゃん」


花「それもそうか」


宗「早乙女~」


花「なに?」


宗「灰皿貸して」


花「もってないの?」


宗「喫煙所でしか吸わないから持ってない」


花「何で今吸ったんだよ…。ん」


宗「ありがと」


花「おまっ、めっちゃ残ってる…」


宗「僕は一口でいいからね」


花「もったいねー。ほんと神社行って普通のお守り買って来いよ」


宗「だから、それしたら吸えないんだってば」


花「ほとんど吸ってないのと一緒だし変わんないって」


宗「タバコ代請求しようか?」


花「なにお守りにするとか自由だもんな」


宗「手のひらねじ切れてない?大丈夫?」


花「ちゃんとくっついてるから大丈夫」


宗「あ、忘れてた」


花「何を?」


宗「あんまん」


花「冷めてんじゃん」


宗「あげる。冷めるとまずい」


花「こいつ……」


宗「はーさむさむ」


花「あんまんとか久しぶりに食べたわ」


宗「おいしい?」


花「まずい」


宗「だよねー」


花「口直しが欲しい…。コーヒーとかないの?」


宗「タピオカ抜きのミルクティーならあるよ」


花「それ普通のミルクティーじゃん」


宗「そうともいう」


花「コーヒーは?」


宗「無いよ」


花「タバコ吸うのに?」


宗「偏見だよ」


花「でも私はコーヒー飲むよ」


宗「僕はコーヒー嫌いだから飲まないよ」


花「じゃあいいや。ちょっとそこの自販機で買ってくるわ」


宗「いってら~」


花「あ、私が座ってたとこ冷えないようにしといて」


宗「ういうい」


花「ふー、やっぱりスーツとコートだけだと寒いわ。やっぱりこういう日はあったかい缶コーヒーに限る。っあー、うま」


宗「そういや、冷やさないようにってどうするんだろ…」


花「ただまー。って、席冷えてるんだけど?」


宗「そういう日もある」


花「くぅ…許してやろう。今回だけだぞ」


宗「次回もあるの?」


花「無いと思う」


宗「僕も同意見」


花「あんた彼女とかいないの?」


宗「いたらよかったなぁ」


花「友達と過ごしたりとかは?」


宗「苦手なんだぁ」


花「口下手って感じしないけど?」


宗「知り合いあいてって疲れるじゃん」


花「わかんないや」


宗「ふーん」


花「あーあ、明日からどうしよっかなぁ」


宗「ハロワでも行けば?」


花「失業保険は申請しに行くけど働きたくない」


宗「じゃあ働かなかったらいいじゃん。ニート楽しいよ」


花「ニートかぁ。あんたバイトとかやってない感じ?」


宗「研究費で生活してる」


花「使い込みじゃんそれ」


宗「給料が無いから仕方ないよ」


花「バイトとかしないの?」


宗「んー、働きたくないでござる」


花「あの飴玉の研究ってそんなに儲かるもんなの?」


宗「まぁ、教授が僕に一任してるから、儲かるとかはあんまりわかんないかな」


花「飴作るだけでお金もらえるなんて羨ましい」


宗「じゃあ、さっきの飴食べて感想聞かせてよ」


花「んー、いいよ」


宗「やったー」


花「もうちょっと感情込めて言えよな」


宗「うーい」


花「…見た目は普通の飴と一緒か。んじゃいただきますっと」


宗「…………どう?おいしい?」


花「…………」


宗「早乙女?」


花「…………まずい」


宗「やっぱり?」


花「わかってて渡したな!!」


宗「だって、幸せになれる飴なんて怪しさ満点の名前で、かつ、さっき会ったよくわからない青年のポケットに入ってたものよく食べたね」


花「じゃあ研究とかいってだましたの!!信じられない!!」


宗「いや、幸せになれる研究してるのも、それで飴を作ったのも本当だよ。ただ、今までの試作品は苦みが強いから砂糖多めに入れたはいいけど、内部の人はみんな食べてくれないからどうしようかなーって散歩してた時に見つけただけ。だから、だましたとかそういうのじゃないよ」


花「そういうことは先に言いなさいよ…」


宗「言ったら食べないでしょ」


花「誰も好き好んでまずいのなんて食べたかないよ」


宗「ほらね」


花「だからってやっていいことと悪いことはあるでしょ……」


宗「で、どう?幸せになれそう?」


花「まずい飴食べて幸せになれるほど世界は優しくないのよ」


宗「じゃあどんな時が幸せ?」


花「んー、仕事が認められた時かなぁ」


宗「飴の味変わった?」


花「いや、まずいままだけど……。なに?味変わるの?」


宗「その人にとって本当の幸せがその飴の本当の味。幸せの味になるよ」


花「変わんないってことは違うのか」


宗「他は?寝てるときとか、食べてるときとか、タバコ吸ってるときとか」


花「どれもそんな?てか、日常だし」


宗「じゃあ上司のカツラひん剥いたときは?」


花「いやなこと思い出させるなよ…あんなのその場の勢いでやったことだし、それで幸せ感じてたらやばいやつじゃん」


宗「じゃあ何してるときが楽しいのさ」


花「さぁ?」


宗「大人って楽しいことないの?」


花「どうだろうね。私は忘れちゃった」


宗「じゃあ飴ずっとまずいままだよ」


花「吐き出していい?」


宗「それじゃ実験にならないじゃん」


花「私治験のバイト始めた覚えないんだけど」


宗「お金なら出ないからバイトじゃないよ」


花「はー、なんか損した気分」


宗「ちなみに、説明忘れてたのがもう一つあってね」


花「なに??最後は爆発オチになるとか?」


宗「そうだとしたらそれは飴じゃなくて兵器になるよ」


花「じゃあなに?」


宗「その人にとって本当の幸せがその飴の本当の味って言ったでしょ」


花「うん」


宗「不幸になるともっと劇的にまずくなるよ、その飴」


花「今すぐ捨てていい?」


宗「だめ」


花「まずくなるんでしょ?」


宗「不幸だと思ったらね」


花「捨てたい」


宗「だめ」


花「律儀に今まで舐めてあげたんだから……なかなか無くならないなこれ」


宗「ちなみに本人が納得するまでなくならないよ」


花「もう捨てたいんだけど」


宗「捨てた場合は地面に着地したとたんバックスピンかかって口に戻ってくるけどいいの?」


花「ダウト!!」


宗「正解!!」


花「嘘かい」


宗「そこまでいったら飴じゃないよ」


花「あんたならやりかねない」


宗「ヨーヨーじゃないんだから」


花「ヨーヨー知ってるの?」


宗「まぁ、ぼちぼち。遊んだことないけど」


花「私もない」


宗「何で話広げたの?」


花「なんとなく?」


宗「それより、飴の味変えようよ」


花「なんでまだ律儀に舐めてんだろ…」


宗「幸せの味が気になってるんじゃない?」


花「なんだかんだそれはある」


宗「じゃあ今からどっか遊びに行く?」


花「なんで?」


宗「気が晴れることしたら楽しいかなって」


花「クリスマス、いちゃつくカップルを尻目に?」


宗「よし、今のは無しの方向で」


花「賢明な判断だと思う」


宗「子供の頃とか何してたのさ?」


花「喧嘩」


宗「や、やんちゃな子だったんだね」


花「今は落ち着いたけどね」


宗「話聞く限り変わってない気がする」


花「なんか言った?」


宗「きれいな女性に成長して何よりです」


花「褒めんなってー」


宗「褒めても雨の味変わんないじゃん」


花「うん。変わってない。なんで?」


宗「とっくに実験済みだから」


花「マジか。その研究ってどこまで進んでんの?」


宗「かなり終盤だよ。今は成功するまで繰り返しだけど」


花「それで終盤なの?」


宗「序盤は幸せの解析やってたから進歩だと思うよ」


花「てか、研究の内容とか簡単にしゃべって言いもんなの?」


宗「だめだよ?」


花「だめなんかい」


宗「だから、内緒にしといてね」


花「話す相手もいないから安心しとけ」


宗「飴の味変わらない?」


花「そればっかり」


宗「他に話題ある?」


花「…今日は寒いな」


宗「冬だもん」


花「……晴れてよかったな」


宗「夜から雪だよ」


花「………サンタクロースって信じてた?」


宗「今も信じてるよ」


花「正体も知ってるよな?」


宗「大体親だよね」


花「なのにサンタを信じてるわけ?」


宗「なにかおかしい?」


花「親だってわかってるならいないじゃん」


宗「サンタはいないよ。何言ってんの?」


花「じゃあサンタの何を信じてるわけ?」


宗「強いて言えば、夢かな」


花「夢?」


宗「だって、サンタは世界中に希望と夢を運ぶ存在でしょ?」


花「まぁ、間違ってはないか」


宗「だから、サンタは僕の研究に必要だからそういう面で信じてる」


花「それ、サンタよりも研究の成功の方信じてない?」


宗「そうかもしれない」


花「じゃあサンタ信じてないじゃん」


宗「じゃあ僕の研究が成功して、僕がサンタになれば相対的に信じてたことになる」


花「ならんわ」


宗「ならないか」


花「……じゃああんたでいいからさ、なんかクリスマスプレゼント頂戴よ」


宗「いいよー。何ほしい?」


花「子供の頃買ってもらえなかったテディベア」


宗「どんなやつ?」


花「おおきくて、ふわふわのやつ。ショーウィンドウに飾ってあった」


宗「いくら?」


花「値段書いてなかったな、そういえば」


宗「たぶんそれただの展示品…」


花「まぁいいや。プレゼントそれでよろしく~」


宗「じゃあ、研究を完成させるから目を閉じてそのテディベアのことを強くイメージして」


花「……イメージ………でかいクマ……」


宗「飴を舌に乗せて」


花(軽くえずく)


宗「じゃあ、今そのテディベアが自分の手の中にある。君はそれを買ってもらった」


花「買ってもらった……私だけのもの」


宗「さあ、飴をもう一度舐めてみて」


花「まずいまんまじゃん!!」


宗「あり?変わんない?」


花「この嘘つき!!あーまず。もう吐くからね」


宗「あー、うん。いいよ。いろいろ付き合わせてごめんね」


花(飴を吐く)「で、結局何がしたかったのよ」


宗「飴、どんなふうにまずかった?」


花「ヘドロみたいな、生臭い刺身みたいな感じの味だった」


宗「ずっと?」


花「最初口に入れたときから変わってない」


宗「ふーん。おめでと」


花「なに?喧嘩売ってる?利子ついてでも買うよ?」


宗「いや、そうじゃなくて、今回の実験が成功したのさ」


花「まずい飴を長時間舐めることが成功なの?頭おかしいんじゃない?」


宗「そもそも、僕は一度もその飴が『おいしくなる』なんて言ってないもん」


花「はぁ?」


宗「口に含んだ時から味が変わらないならそれで成功なんだ。今までの実験だとプラシーボ効果も相まって飴の味に変化があった。だから変わらないその飴が幸せの味なんだ。僕の研究はこれで完成したんだ」


花「こんな味が幸せの味なわけないでしょ」


宗「じゃあ、幸せの味ってどんなの?」


花「それは……」


宗「甘酸っぱい?甘ったるい?そんなわけがない。だって、自分の幸福は何かを犠牲にして得るものだから、そんな味なわけがないんだ」


花「犠牲の上に幸福が成り立つわけ……」


宗「無いと言い切れる?」


花「……」


宗「平和の下にはたくさんの骨が埋まっている。誰かの笑顔の裏で誰かの泣き顔がある。クリスマスなんて一番その例にふさわしいじゃないか。楽しそうに町を闊歩する連中と、死にそうな顔をして歩くゾンビまがいの社会人や一人ぼっちで自由のない苦学生。ケーキを売る人間はわざわざ店の外に立たされて幾人もの客を相手にしなければならない。彼らはすぐに暖かい家に帰れるかもしれないが、そうもいかない人間だっている。人間の幸福なんてものは、所詮何かの犠牲の上にしか成り立たないようにできているのさ」


花「あほらし」


宗「反論があるなら言えばいいさ。僕はその上からねじ伏せてみせる。さぁ、いつでもどうぞ」


花「反論なんて大層なもの持ち合わせてないわよ。生憎とね」


宗「それは僕の意見が正しいから?それとも君からしたらくだらない子供の妄想だから?」


花「サンタクロースって、実在すると思う?」


宗「するわけないだろ。その話はさっき終わったじゃないか」


花「残念。終わりじゃあないんだなぁ、これがさ。それとも、聞いたら反論できなくなりそうで怖い?」


宗「……話がそれたと思ったら戻すからな」


花「ご忠告どうも。で、サンタクロースの話なんだけどね。あたしの前職なんだわ」


宗「…関係ないだろ。飴で頭までやったか?」


花「正常に動いてるから黙って聞いてな」


宗「……」


花「サンタって別に幸せとか夢運ぶ仕事じゃないのよ。それこそ、今はいろんな配送機関が発達したおかげで私らってやることなかったし。上層部はトナカイ配達が主流だったころの連中ばっかりで武勇伝語って仕事もせず偉そうにふんぞり返ってるだけ。夢の欠片も見えない職場がどうやって夢届けんだって話よ。幸せが甘いなんてのは嘘八百もいいところで、夜に街灯が照らす範囲にも満たない後ろめたい感情の味。本当の幸せの味はこんな飴程度のまずさじゃないよ。これがあんたの言う幸せの味っていうならもう一度研究しなおせばいいんじゃない?人間程度の幸せはまだまだ砂糖で胸焼けする程度ね」


宗「反論になってない」


花「だから、反論なんて大層なものじゃないって言ったじゃん」


宗「………つまんな」


花「あんたさ、結局これで何がしたかったの?」


宗「別に。いやがらせ」


花「サンタクロースになるんじゃないの?」


宗「誰がそんなブラック企業に就職なんかするかよ」


花「まぁ、それが一番だわ」


宗「あと、あの飴。ただの腐った飴だから。幸せの研究で飴なんか作るわけないだろバーカ」


花「はぁ!!?ちょ、お腹壊したらどうしてくれんのよ!」


宗「嘘だよ。研究の副産物で眠気覚ましに作ってた飴だよ」


花「嘘ばっかじゃん」


宗「じゃあ、本当の幸せの味作るためにさ、幸せの味何か一つくらい案出せよ」


花「そうだな。私が思うのは、タバコとコーヒーかな。もちろんブラックでね」



――――――fin

まずは、最後まで読んでくれたことにお礼をば。ありがとうございます。

いやー、話とは難しいものでね。当初の予定とかなり違うことになりました。

なんでまぁ、そのうち別の話で上げるかもですね。


さて、今年もいよいよの頃僅かになってきましたが皆さんいかがお過ごしでしょうか?

僕はというと暖房のない北部屋に籠ってこの話を書いています。

今年最後の作品がおそらくこれになると思われ~。

昨年に引き続き何とか4本出せました。平均したら3ヶ月に1本投稿してることになるよね。

そんなかんじで、まぁ元気にやっていきまっしょい!!


最後にもう一度、くだらないあとがきまで全部読んでくれたあなたに、ありがとうございました。

よいお年を~!!!

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