に
ログアウトした俺は、意識が現実に戻ってくる。
「あぁ・・・めっちゃ楽しいわぁ・・・」
ヘッドギアを外しベッドの上に置く。
風や匂い、質感まで全てがリアルな上に、先頭の臨場感、突進を食らった時の衝撃、飛び出すんじゃないかという程に鳴り響く心臓の鼓動。
全てがゲームなのに感じられるのだ。
ただ痛みは脳に深刻な障害を及ぼす可能性があるということで存在はしないらしい。
「さて、刀を探さないとな。」
俺は、ベッドから立ち上がり机に備え付けられたパソコンの前に座り、EAPの掲示板のサイトを開く。
掲示板には様々な交換部屋が存在しており、このゲームがいかに人気であるか、また複雑であるか物語っている。
「あった、『武具意見交換部屋』」
お目当ての場所をみつけ、部屋を開く。
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【Part5】武具意見交換【EAP】
・EAPでの武器、防具に関する意見を話し合う場所です。
・荒らしや迷惑行為は通報します。
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147: 名無しのプレイヤー
やはり、鉄鉱石が安定して取れないと、鉄製武具の作製を安定して行えないよなぁ
148:名無しのプレイヤー
旅商人がたまに品質のいい鉱石を売ってくれるけど、やはり高いな。なかなか手が出せんわ。
149:名無しのプレイヤー
攻略組は常に良い装備求めるからな、生産組とか大変だろ。
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ふむふむ、色々と意見交換してるな。俺も刀について聞いてみるか。
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154:名無しのプレイヤー
初めて掲示板を使うんですが、質問良いですか?
155:名無しのプレイヤー
お、新規さんか。いらっしゃい
装備関係ならある程度なら聞くぞ、何が聞きたい?装備の組み合わせか?
156:名無しのプレイヤー
刀について聞きたいんですが。刀とかって今現在作られたりしてないですかね。
157:名無しのプレイヤー
刀か。刀に関しては2つ前くらいのスレにやってる人いたな
158:名無しのプレイヤー
おぉ、いたな刀を作るぜ!って言ってたヤツ。そいつどうなったんやろな。
159:名無しのプレイヤー
たまたまここに来たら俺の事話してるな。刀は俺が作ってるぞ。
なんと!刀は存在しているし製作者も現れた!運が良い!
160:名無しのプレイヤー
お、おるやんけ。どや、刀の進捗は
161:名無しのプレイヤー
刀なぁ、ポイントで刀鍛冶ってのを作ったけど刀を作るのはめっちゃ難しいわ。今もなまくらしか出来てないわ。実践に使うなんてのはまだ先の話だな。
162:名無しのプレイヤー
なまくらでも良いので買い取らせていただけませんか?
163:名無しのプレイヤー
なまくらだぞ?それでもいいなら売るけど、文句言うなよ?
164:名無しのプレイヤー
大丈夫です。是非とも
165:名無しのプレイヤー
わかった。んじゃ、工房に刀あるからどこかで落ち合おう、最初の街の真ん中に噴水あるだろ。そこで待とうか。俺はアコンって名前だから探してくれ。
166:名無しのプレイヤー
分かりました、俺はムサシって名前なので見つけたら声掛けます。
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「やったぁぁぁ!これで刀が手に入る!スキルもこれで作れるぞ!」
俺はベットに飛び込み喜びを露わにする。
「今日の13時か。今は何時だ?」
時計を見ると今は11時30分を指していた。
「早めにご飯食べて少し早めに噴水に行くか。」
俺は部屋を出て階段を降り、冷蔵庫に親が作り置きした昼食を食べてまたゲームにログインする。
時間は12時10分
昼食前にログアウトした場所が門から街に入ってすぐの場所だったため、中央の広場まで少し距離がある。
俺は、先の戦闘で獲得したステータスポイントを振り分けようとしたが保留にする。理由は刀を装備するのな必要ステータスがあるかもと思ったからだ。
噴水広場に到着する。
広場には多くのプレイヤーやNPCがおり、待ち合わせや雑談などしていた。
こう見ると、廃れた格好のおっさん(見た目は)が噴水近くの椅子に座っているのってなかなかに異質だな。
しかし、時間まで結構あるな・・・お、あの人は装備的に双剣士か?一緒にいる人は杖持ってるから魔法系なんだろうなぁ・・・
暇になった俺は、噴水周りの人を観察することにした。
なんであのおっさんは上半身裸なんだ・・・武器は格闘系だからか・・・
それにしても、本当に色んな役割の人ばかりだな。お、あの人はドワーフなのか。
奥から走ってこちらにくるドワーフが目に入る。
「てか、こっち来てないか?」
ドスドスと足音が聞こえそうなほどのステップを踏みながらどんどんこちらに近づいてくる。
「おぉい!あんたかムサシとやらわ!」
「あんた、アコンさんか」
どうやら、待ち合わせをしていた人はドワーフだったようだ。
「いやぁ、どうやら待たせてしまったようだな。」
ドワーフのアコンはふぅと汗を拭う仕草をする。実際には汗はかいていないがそれほどの距離を走ってきたのだろう。
「いや、さっき来たところだから待っちゃいないよ。」
「そうか、なら良かった。さて早速だが工房に案内しよう。こっちだ」
アコンは先程走ってきた道へ歩き出す。
「ムサシとやら、あんた見たところ浮浪者みたいな姿してるが。それと刀はなんか関係はあるんか?」
アコンは俺のボロボロの着流しや足首で固定してる草履、ボサボサの髪の毛を見てそう問いかける。
「いや、まぁあれだ。流浪人ってやつだ。」
「流浪人?あぁ、なるほどだから刀か、つまりは落ちぶれた侍をやってるってことか」
「すごいな、流浪人ってだけでそこまで分かったか。」
「ガッハッハッ!一応これでも時代劇とかは好きだからな!しかし、刀だが本当にいいのか?」
「あぁ、なまくらでも大丈夫だ。俺のやりたいことが出来るからな」
「やりたいこと?なんだ、人斬りでもするのか?」
「いや、人切りは・・・まぁ、PVPが実装されたらやることになるだろうがそうじゃないな。」
「ふむ、そうか。お、ここだ、着いたぞ」
喋りながらアコンの後を着いていき辿り着いた場所はNPCが営業している鍛冶屋裏の工房だった。
アコンはドスドスと工房の奥に行き、1つの木箱に近づく。
「おい!ムサシ、こっち来い!」
俺はアコンに呼ばれ木箱に近づく。
「これは・・・」
木箱には鞘に納められた刀が何本も入っていた。
「これが、お前の目当ての刀だ。34本作って全部低クオリティだ。耐久もあまり高くなく攻撃力もイマイチ。鉄の剣よりやや高いぐらいと言ったところだ。」
俺は、1本刀を手に取りゆっくりと刀を抜いていく。
本人は失敗作と言っているが漫画やアニメ、資料で見た通りの完璧な刀がそこにはあった。
「いや、素晴らしい・・・1本、売ってくれないか?」
「本当に大丈夫のようだな。しかし売ってくれ、か」
アコンは少し渋い顔になる。
「やっぱ、厳しいか?」
「いや、違うんだ。これは俺自身が駄作と言っちまった以上金を貰う訳にはいかないんだ。つまりだ・・・タダでやるよ。」
「!!?」
俺は驚きのあまり声を失った。
「い、いいのか?こんな立派なものを」
「いいんだ!これは職人としてのプライドが許さん。金は要らん!持っていけ!壊れたらまた俺のところに来い、刀はまだあるからな」
「ありがたい・・・」
「フレンド申請しておくぞ、もしいい鉱石の素材が手に入ったら俺のところに持ってこい。そんときはまた刀を打ってやろう。」
《アコンからフレンド申請が届きました。メニューから許可するか選んでください。》
もちろん、『許可をする』を選択する。
「ありがとう、アコンさん。」
「アコンでいい。俺もお前のこと既にムサシと呼んどるしな。」
「分かった、アコン。」
俺は、刀を腰に差し工房を出た。
俺は右の掌で柄頭を触る
「ふふふ・・・」
やったぞぉぉおおおお!!!!刀、ゲットだああああああ!!!!!
俺は無言で、しかし恍惚とした表情で天を仰ぐ。
さぁ!次はスキルの作成だ!
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ムサシのステータスをここに上げておきます。
ムサシ Lv.2
HP 1000
STR 22
VIT 10
DEX 10
AGI 33
INT 10
MND 10
LUK 10