異様転生者
なんでだよ!あの時あの男はこう言った。
「テレポートと唱えるとランダムですが」
「どこかの土地に移動することができます」
どこかの土地なのに、今俺達がいるのは雲の上だ。
俺達は、落下していく一方、少し遠くに明かりが見えるのが分かった。
だが、俺達がそこに行けるのは、落下で死ななかった時だ。
「転生して、これはないだろ!!」
俺は子供見たく叫んでいると、凪は真剣な表情をしていた。
「凪、どうした?」
反応がない、気絶したのか?
そう思ったのもつかの間、凪は、何かを唱えた。
【システム魔術 ウインドマイン】
彼女がそれを唱えた瞬間、俺の体は軽くなり、まるで重力が半減したかのように、ゆっくりと落下して行った。
「これがお前の力か?」
凪は微笑みながら頷いた。
しかし、俺が技をした時は行為的なものではなく、何か機械が勝手にしたような感覚だったような気がした。
「ふー助かった」
「・・・さい」
「ん?」
「名前を教えてください」
「おれは田中 親鸞。よろしくな」
「よろしくお願いします。田中さん」
※
俺達は急ぎ足で近くの村へと行った。
凪にはいろいろ聞きたいことがあったが、色々あったせいか、やけに眠い。
「とりあえず今日泊まれる宿を探そう」
「そうですね」
宿に着くと早々と宿の手続きをしたが、
俺はあることを見過ごしていた。
「宿泊代は150ゴルドです」
そう。俺は完全にこの世界の金のことを忘れていた。
「二人分で300ゴルドでいいですか?」
俺は16歳の少女に命まで救ってくれたのにも関わらず、宿費まで払わせるなんて・・・
惨めだ
「なんか、色々ごめんね」
部屋に行く通路で俺は凪に申し訳そうに言った。
「大丈夫ですよ。困った時はお互い様ですからね」
この子は俺より大人だ。ちゃんと稼いて
利子をつけて返そう。
「じゃあ明日は朝9時に下で会いましょう」
「ああ、了解」
そういうと早々と部屋に入った。
※
朝9時に俺達は宿舎から出て、転生者についての情報収集をしていた
「そういえば、聞くの忘れてたんだが」
「なんですか?」
「昨日から何も食べていないのにやけに腹が空かないんだ」
そう。俺は昨日から何も飯を食べていない。
どちらかというと、よく飯を食べるほうなので1日3食は絶対に食べないと夜は寝れない。
しかし昨日は疲れたこともあって、すぐに眠りについた。
「知らないのですか?」
「私達、転生者は、飢えや、魔物にまともに戦えるように、強化されてるのです」
「そんなのいつされたんだ?」
「転生する前日に、免疫改良っていうので注射されましたよね?それです」
俺らは自分が分からないだけで強くなっているそうだ。でも、さすがに食べなさすぎたり、ダメージを受けすぎると、もちろん死んでしまう。
「凪、よく色々知ってるな」
「そうですかね・・・」
凪は、ほんの少しだけしらを切る顔をしたのが俺には分かった。
とりあえず、まずは転生者の居場所を特定しなければならない。
帰国出来なくなったあの日、大量の転生者が異世界に行った。この村にも、誰か1人だけでも来ているだろう。
※
「すみませんー」
ここの村長の家を聞き、直接聞きに来た。
ドアが開き、190cmぐらいはある、ガタイのいい、白髪の爺さんがでてきた。
「ワシに・・・何か用か?」
少し、ドキッとしたが、村長に転生者のことを話した。
「転生者か、3年前までは、沢山の転生者がこの村にも来ておったが・・・」
「ある日突然、誰一人として、来なくなったのは覚えておる。」
「東の方にエンドラというここの地方で1番大きな街がある。そこにいけ」
村長から地図をもらい、村から少し離れた平野までいった。
「田中さん?なにするの?」
凪が首を傾けながら俺に聞く
「金だ」
「お金?」
「モンスターを倒せば金は貰えると、そこの村人から聞いた!」
「たしかに倒せば貰えるけど、田中さん
技を使えるの?」
技?使えるわけがない、なんの鍛錬もしてないのだから。
※
夜になり平野は、より一層不気味になる。
凪が見守る中、俺はモンスターが来るのを待っていた。
すると、薄暗い奥の森から重い足音が近づいてくる。
「田中さん・・・」
凪が震えた声で俺のことを呼ぶ。
「なんだ、寒いのか?先に帰っててもいいんだぞ!」
「違う、なんだかとても嫌な感じがする」
そういうと重い足音の奴らしきものが遠くに見えた。
蛇のように長い首が3つ、いや4つある。
すべて1つの体に集まっていた。
「へ?・・・」
俺は、"そいつ"を何度も漫画やアニメで見たことがある。
「なんで・・・こんなところに」
【ヒドラがいるの!?】
「ヒドラだって?」
俺は凪に聞き返す。
「普通ヒドラはこんな下級モンスターしかいない所にいるはずがない」
凪は目を点にして、恐怖で身体が震えていた。
最初のモンスターがヒドラだなんて、ついてるのか、ついてないのか、分からないが
明らかに"あいつ"は俺達のことを狙っていた。
なぜ急に転生者が見当たらなくなったのかを"あいつ"を見ると、、考えたくもない。
「ステイス!」
剣が俺の手に出た。
「無茶です!技を使えないあなたが、勝てるはずがないか」
止めようとする凪を俺は手を前に出して、止めた。
「じゃあ、剣を振るだけで技が発動するやつは、チーターだな!」
俺はそういうと俺はヒドラのところまで一蹴りで接近し、剣を振ろうとした。
【システム剣術 エレメンタルブレイブ⠀】
また脳裏に機械音声が流れた。
体は勝手に動き、自分では絶対に動けないほどのスピードで、ヒドラの身体を切った。
一瞬のことだったが、今回はハッキリと切った感触が手に残った。
しかし、身体は言う事を効かなくなるほどの威力だった。
「これは、あまり使いたくは、無いな」
「あなたはまさか、異様転生者・・・」
凪はそういうと俺の方へ近づき、技を唱えた
【システム魔術 ホーリーヒール⠀】
そう唱えると俺の身体はみるみる軽くなった。
「助かったよありがとう」
俺がそういうと、凪は少し、不満げそうにしていた。
「宿に帰ったらあなたに、"その力の強さと
恐怖さを伝えます」
なんのことか、さっぱり分からなかったが
この能力は、何らかの力らしい。
"異様転生者"とはなんだろう。