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幻想に塗られた世界に、  作者: ネギの人
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プロローグ

 人間は時間の奴隷にしか過ぎない。そう考えだしたのはいつ頃だっただろうか。たしか中学3年生の受験期の頃だったかな。


 私たちはいつも時間という実体の無い何かとともに生きている。学校に行って勉強をしたり、会社に行って仕事をしたり、そんなこともせずだらだらと家や外で遊んだりと一人一人今日という時間の中で生活している。多分、現代に生きる我々人類はカレンダーや時計などの道具が無いと生活できないだろう。そしてその現代に生きる私たちなら一度はこんな事を思ったことがあるのではないだろうか「時間が止まればいいのに」と。しかし大体そう考えた時にかぎっていつも最悪な展開に終わることが多い。私はいつもそういう時は失敗に終わっていた。


 世界には時間についての説が沢山ある、アインシュタインの『相対性理論』で提唱された世界線や、ラッセルが言った世界五分前仮説、ニュートンの『自然哲学の数学的諸原理』で発表した絶対時間など昔から時間について言われてきたがどれもはっきりとした確証は採られていない。


 ここ20年で私たちの住む日本は大きく変化していった。その要因は東京オリンピックとそのあとに起きた東京大震災以降の日本が取り入れた最新鋭の科学技術のおかげだろう。


 人類は今まで携帯電話を多くの人が持ち歩いていたが、6年前ぐらいに関東の復興支援用にアメリカから日本に入ってきた、脳にICチップ入れて指にセンサーをつけた自分だけがその映像を見ることができネットなどが見れたり連絡が取れたりする拡張現実(バーチャルリアリティー)の技術が日本を大きく変えた。雑誌や新聞などというアナログメディアが殆ど無くなり全てデジタルメディアへと変換されていった。そして私たちの通っている学校の教室という空間からも黒板やホワイトボードが無くなり、タブレット端末と液晶ボードにすべて変わった。授業も人間ではなく教育用AIが授業をすることになっている。しかし必要最低限のことはAIがやってくれるのだが、まだまだ人間しかできないことなどがあるので人間の教師は一つの学校に最低12人いなければならないという法律がある。


 突然話を変えるが私たちのいるこの鴻池市は40年以上前から街並みが変わっていないのだが、都会のオオサカ区や梅田区は5年行かないと迷うぐらい街並みが変わる。7年前、東京都という街が一夜にして無くなった東京大震災から大阪が日本の首都となり、科学技術で最先端の街になった。東京と千葉そして埼玉と神奈川は人が住めない場所になってしまった。すべては東京原発が震災の時の津波によって爆発したことが原因で、しかもあの28年前ぐらいの東北大震災の福島原発の時の100倍の汚染物質が全て津波と一緒に陸へと流されてきたせいで人間が住めない地域になった。今東京と周辺の地域の周りには壁ができ、ロボットたちがその中で除染作業をしている。


 そして、その東京大震災の原発事故から出た放射線のせいで新型ウイルスが現れた。モーンストルムウィルスという、罹ってしまうと体が怪物の様に変形していき、だんだん体中の筋肉が衰え最後には心臓が止まってしまう、という症状がおこるウィルスだ。


 私と私の家族はもともと東京に住んでいたがこの震災とモーンストルムウィルスのせいで両親とは離れ離れになり姉と二人きりで大阪の被災者用に建てられたマンションに引っ越をしてきた。あの日から離れ離れになった幼馴染と両親は無事なのか、今は何処で暮らしているのか7年たった今でも気になるときがある。


 そして二度も震災によって爆発した原子力発電はついに日本から姿を消し、太陽光発電の太陽エネルギーの変換効率が飛躍的に上昇したため太陽光発電が日本の主な発電源になった。


 街中には田舎の鴻池市ですら太陽光パネルがついた建物とロボットに溢れかえっている。宇宙開発とロボット技術に目をつけた日本政府は殆どの国家予算をその技術にかけた。そして2040年4月26日、月面基地『JB』が出来たのだ。いままでアメリカがしていた日本のすべてのロボットの制御をこれからはその基地でするらしい。


 今の大阪での姉との二人暮らしもいいがやっぱり私はあの東京に帰りたいと思っている。もしあの原発事故が無かったら今でも私は両親と姉と一緒に東京に住んでいただろう。


 この幻想に塗られた世界に、私は……。

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