【第四章】サンクオリア(三)
今回は章の構成上、かなり短くなってしまいました。
宿の裏には山々が連なり、少し寂しい感じがした。時折吹きつける冷たい風が頭を冷やしてくれる。
壁を隔てた隣には足湯があるらしかった。先ほどから人の気配はない。たまに湯の落ちる音がするくらいで、あたりは静けさに満ちている。
クロノは嫌な気持ちだった。もちろん、そらに対してではない。また、赤髪の男に対してでもないように思えた。明らかに自分に対しての嫌悪感である。
そらが襲われた時、表には出さなかったが、どこかおかしな気持ちになった自分がいた。
そらのことは好きである。
俺のために生きてくれ、と魔女の家で言ったのは嘘ではない。そらがいなければ本当に困るのだ。自分もそらのために生きたいと思った。
でもそれは、男が女を思うような気持ちではない。ただ、人として、友として、好きなのだろう――そう自分に言い聞かせていた。でなければ、この関係がおかしくなってしまいそうな気がして、怖かった。
しかしあのとき、はっきり感じた。自分はそらと繋がりたいのだと。
いや、そんな綺麗なものじゃない。
普段は少し生意気で、でも真っ直ぐな目をして好きだと言ってくれる少年。女を――男は尚更、知らない身体。そんな彼が初めて見せた、あの苦し気な表情。
(最低だな……)
そらを女のように抱くのは、違うような気がした。
ぽちゃりと音を立て、鼻先まで顔を沈める。サンクオリアには源泉があり、温度もよく、気分さえ沈んでいなければとてもいい湯だった。
長い風呂を終えて、部屋に戻ると、そらは既に布団に入ってこちらに背を向けていた。
先に寝てしまったようだ。
息を大きく吐いてクロノも横になったが、既にそらの疲れ切った寝顔で目が覚めてしまっていた。
寝転んだままそらの頭に手を伸ばす。とても神聖なものに触れるような思いで、少し乱れた髪を梳かした。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
次回から新章に入ります。《闇の方》の過去や、彼の元から去らないコガレの本当の思いが明らかになってきます。
次回【第五章】追手(一)は 来週(未定) 投稿予定です。多忙により更新が不定期になり申し訳ありません。
お楽しみに!




