廃病院の鳴き声
「ここかぁ〜」
アベルは街外れの廃病院に到着した。
「………すすり泣き………。」
アベルは聞いた噂の内容を想い出し
腕の皮膚に鳥肌が立ち、嫌な寒気が背中に走った。
アベルはビビりながら病院の扉をノックする。
「ごめんくださ〜い………。」
スッカスカの声でそう言うと恐る恐る病院へと入る。
ギギギギギ……… ドダンッ!
嫌な音をキリキリと起てて扉が閉まる。
その音が終わると辺りは静寂に包まれる。
そしてその静寂の奥から微かだがすすり泣く様な
声が聞こえてくる。
「はっ…………はぁっ………。」
アベルはもはや恐怖を超えて、声も出ない。
しかしアルケミスト兼ドクターなんて
中々いない。
もしかすると"賢者の石"の情報があるかもしれない。
恐怖を噛み殺しながらギシギシと音を立てる
床板の上を恐る恐る歩をすすめる。
ーー少し奥まで進むと
部屋の扉からランプの灯りが漏れていた。
「誰かいるのかな?」
アベルはそう思うとドアをノックした。
「すいませ〜ん!」
「だ………誰っ!?」
ノックしたドアの向こう側から声が帰ってきた。
何故か少しアベルは安心した気持ちになった。
「俺 アルケミストのアベル!
アベル=フラメル!
あのここにいたアルケミスト兼ドクターの情報が
あったら教えてもらいたんだけど………。」
「………フラメル?」
するとまたギリギリと音を起てて扉が開いた。
少しだけ漏れだしていたランプの光が
扉が開いて沢山漏れだした。
アベルはずっと暗闇にいた為に少しそれがまぶしかった
開いた扉の先には 一人の女性が立っていた。
それから部屋に入ると、ボロボロの椅子に座らされた
「お茶を入れるわ。 」
「勝手に入ってきただけだし!それはいいよ!」
アベルはそう言って断った。
「そう。」
女性はそう言うとアベルの横に置いてあった
これまたボロボロの椅子に腰を降ろした。
「私はエイミー。
ここの医者ルイス=フォースターは私の父よ。」
「そ………そうだったのかっ!なんかごめん!!」
「ううん、いいのよ…。
それより貴方 フラメルって言ったわね?」
「あぁ………言ったけど」
「貴方 10歳で禁忌の錬金術
"姓名概念の操作"を行ったんでしょう?
どうやったの!?お願い!教えてほしいの!!
私も父さんを生き返らせたいの!!」
アベルにエイミーはそう言うとぽろぽろと
沢山の涙を流し始めた。
そしてアベルは下を向いて答えた。
「エイミーだっけか?
それは………そいつだけはやらない方がいい。」
「どうして!?どうしてなのよ!!」
エイミーはワンワンと泣いた。
「父さんは殺されたのっ!!
"生命の宝玉"を研究していたが為に!」
「"生命の宝玉"だって!?
それは"賢者の石"の対となる"エリクシル"のことか?」
「ええ………そうよ。
でも何者かによってその情報は全て盗まれて
父さんも殺されたのよ………。」
「エイミー? 命っつーのはさ
人間がどうこうしちゃいけないもんなんだよ。
父さんは残念だけどさ………。
エイミーがそんなんじゃ父さん喜ばないんじゃないか?」
アベルは泣いて肩を震わせているエイミーの肩に
そっと手を置いてそう言った。
「どうして?貴方はそれをやったんでしょ!?」
エイミーはそんなアベルの手を払いそう言い返した。
「やったからわかるんだよ………。」
アベルはそう言うと何年も前の事を思い出した。
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