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12話・志織との出会い

 数日後。オリナはひょんなことから聖女の志織と知り合うことになった。その日、聖堂の掃除に時間がかかり昼食の時間を押してしまったのだ。ふだんはセレナと共にしている昼食。その日はセレナが神官長の使いで外に出ていたのもあって、一人で食事をとる事になった。

 一人と言っても、厨房にはロベルトやルカがいるから淋しくはなかったが。


 広い食堂でひとり黙々と食事するのもつまらなくて、厨房に顔を出したオリナは、ロベルトが女性と語らってる所に出くわした。


「ロベルトさん」

「おっ。オリナ。御苦労さん。これからお昼か?」

「はい。なかなか聖堂の掃除が終わらなくて‥」

 ロベルトに手招きされて傍に寄ると、彼の傍にいた女性と目があった。オリナはドキリとした。彼女とは初めて会った様な気がしなかった。


(もしやこのひとは…!)


 黒髪に黒い瞳。この世界でこの色を持つ国の者は限られている。デルウィーク国民特有の色。でもその国出身のオリナには彼女が同郷の者には見えなかった。

 オリナの勘が伝えて来る。彼女が志織に違いないと。


 ユミルからは志織の姿について聞いた事はないけれど、彼女はどことなくオリナに似ているとは言われていた。鼻筋の通った顔立ちで大きな瞳が印象的な女性だ。美男子のロベルトと並んでも見劣りしない華やかさが感じられた。

「あなたがオリナね。初めまして。わたしはリーよ」

「初めまして」

 志織は自分が聖女とばれたくないのだろう。オリナに本当の名前は名乗らなかった。そういえば、セレナ達も志織を名前で呼ばず聖女さまと名称で呼んでいたな。と、気がつく。


「あなたもロベルト同様に、わたしと友達になってくれたのなら嬉しいわ」

 志織は気さくな性格らしい。いま初めて会ったばかりだというのに警戒のない笑みを向けて来た。オリナは心配になって来た。


(警戒なさすぎじゃないだろうか?)


 それはルカがいつもオリナに対して思ってることだということにオリナは気が付いていなかった。


「こうしてみるとふたりは似てるよね? 外見とかじゃなくて雰囲気と言うかさ。本当の姉妹みたいだ」

「もしかして前にロベルトさんが言っていたわたしに似たお友達って‥し‥リーさんのこと?」

 ロベルトが志織とオリナを見比べて言う。その言葉にオリナは前、ルカとロベルトと三人で裏庭で昼食を取った時に彼が仲の良い友達にオリナが似てる。と、言っていた事を思い出した。


「そうだよ。きみに初めて会った時、リーに似てると思ったんだ」

「まあ、こんな可愛い子が妹になってくれたらわたし嬉しい」

 志織がオリナに笑顔を向けて来る。

「きみ達は親戚かなにかじゃないの?」

「違うわ。残念だけどね」

 志織が断言する。彼女は異世界から来たばかりだ。こっちの世界に親戚なんている訳が無いのは確かだけど、彼女の子孫として存在しているオリナは自分が拒絶されたように思われて淋しくなった。


 ここにいる志織はまだ知らないことだが、この後、彼女は魔王と勇者を説得し、デルウィークの王を選ぶことになるのだ。その結果、オリナはここにいる。

 そう思うとオリナは、ロベルトと志織のふたりの関係が気になって来た。これはまずい展開ではないだろうか? もし、志織がデルウィークの王ではなく、調理人のロベルトを選んでしまうようなことになったら?


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