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自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う  作者: 昼熊
四章

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自動販売機無双

 暗闇の中から次々と魔物が現れるが、この巨大な自動販売機を前にして、どうしていいか戸惑っているようだ。

 迂回して裏に回ったところで、そこには氷の巨大な壁がそそり立っている。

 じゃあ、ハンター協会の裏側に回って、二階屋上まで移動して、そこからテラスを強襲すればいいのではないかと、ずっと思っていたのだが、四階建てに匹敵するこの高さになり、上から見下ろせるようになって理解できた。相手はしたくてもできなかったのだ。

 二階屋根部分の側面と裏側には巨大な庇があり、壁を登れたとしてもそれが邪魔でそれ以上は進めなくなっている。何とか屋上に到達したとしても、そこには無数の鋭い棘がズラリと並んでいる。

 登ったところで串刺しになる未来が待っているだけ。なかなか、えぐい仕様だ。


 つまり、テラスの壁沿いに登るしか手が無い。正面には俺と氷の壁が控えているので、魔物としてはテラス側面からいくしかなく、そんな限定した場所からの進撃なんて防衛側からしてみれば、カモ以外の何ものでもない。

 側面に回り込む魔物もいるのだが、大半は突如現れた俺に興味津々なようで、中にハンターでも潜んでいると思ったのだろうか、武器を構えたままにじり寄ってきている。

 頑丈が上がっている今なら、蛙人魔の攻撃なら耐えきる自信はあるが、一つ試してみたいことがあった。

 器用が上がっている今なら、氷を精製する際に思ったような形に作り出すことも可能なのかと。

 今までなら無理だったが、ステータスの利便性を理解したことにより、上げられない魔力と頑丈以外のステータスを40まで上げ、色々とやれることが増えた。


 意識を集中して、氷の形を頭でイメージする。氷を濃縮して集め、先端が鋭く尖った細長いひし形を頭で描く。氷を吐き出す時に、その形を強く願い捻り出すっ!

 よっし、完成だ。流れ出た鋭利な刃物の様に先端の尖った氷の礫を、前方に密集している魔物の群れに全力で発射した。

 遮蔽物となる建物は全て魔物に破壊されているので、氷の礫は全て邪魔されることなく魔物の群れに着弾していく。

 ラグビーボールぐらいの大きさの氷の塊が、かなりの速度で着弾している。この威力があれば蛙の皮膚や革鎧を貫くことは可能のようだ。


 俺の前方に倒れ伏す蛙人魔の死体が積み上がっていく。暫くは、無駄に戦力を消耗してくれるのかと期待していたのだが、あっさりと蛙人魔が下がっていった。

 そして、代わりに鰐人魔が現れた。厄介な方がきたか。鰐の方は皮膚が鱗のようになっていて、その強度は革鎧を軽く上回る。下手したら金属鎧よりも硬く、弾力性もある為、鰐人魔の皮で作られた鎧は、軽く頑丈だとハンター内では人気らしい。

それでも可能性に賭けて氷の礫を放ってみたが、その皮膚を貫けなかった。

 だが、ノーダメージではないらしく、怯んでいる。それなら充分だ、このままダメージを蓄積させてやるぞ。


 氷の礫をマシンガンの弾のように撃ち出し、鰐人魔を一切寄せ付けない。側面から襲い掛かろうとする敵もいるのだが、氷の礫は〈念動力〉で自分の周りに既に配置済みだ。

 360度視界を確保できるので、死角もなく俺に不意打ちは不可能。全部まとめて一掃してくれるっ!

 ――その時の俺は、今までにない攻撃手段を手に入れて若干舞い上がっていた。いや、若干どころか、かなり調子に乗っていた。まあ、そんな俺に冷水を浴びせる一言が降ってきたわけで。


「ハッコン! お前の能力って金を消費するんだよな! そんなにじゃんじゃん使って大丈夫なのか!」


 この声はヒュールミか。口に当てているメガホンのような物は、お手製の魔道具で拡声器と同じ効果があるらしい。

 って、何を心配しているのやら。熊会長から前払いで金貨十枚いただいている、つまりポイントで1万ポイントが増えたって事だ。

 大量の氷作ったぐらいで、ポイントが激減している訳がないよ。

 一応確認の為にポイントを確認してみると、残りポイントは――6万になっていた。

 激減しとる……。え、何でっ! 熊会長からもらった金貨を投入してから、ポイントを確認した時は10万ぐらい残っていたよな。今までの商品提供と氷の代金としても高すぎるだろ。何で、どうして!?

 と驚いている間も敵が迫ってきているので、氷の礫を大量に弾き飛ばして牽制していると、今確認中のポイントが見る見るうちに減っていく。


 えっ? あれ、これって〈結界〉の維持で毎秒1減るのとは、比べ物にならないぐらいの減少速度なのだが。

 驚き過ぎて、氷の礫を撃ち出すことを忘れてしまった。その途端、ポイントの減少が少し緩やかになった。

 あれ、もしかして〈結界〉で何かを弾き飛ばすのって、ポイントを消耗するのか!?

 最近、数十万ポイントを維持していてポイントの細かいチェックを全くしていなかった。〈結界〉で弾き飛ばすのもポイントが消費される。覚えておこう。

 これで謎が全て解明した……してないな。今も現在進行形でポイントが減り続けている。何もしてないのに、ポイントが湯水のように減っているぞ。ど、どういうことだ。


 よくわからないが、一旦撤退すべきだよな。考察は後回しにしよう。まずは戦場からの離脱だ。最後とばかりに氷を大量射出して、すぐさま〈風船自動販売機〉になり、風船を大量生産する。

 そこから〈ダンボール自動販売機〉という流れで、ふわふわと空へ昇っていく。

 闇夜に紛れる為に風船もダンボールの身体も黒仕様だ。この状態で浮かんでいるとポイントの消費が〈結界〉維持の減り方に戻った。

 これって、つまり……あの巨大自動販売機状態でいるだけでも、ポイントが減り続けるのか。それとも、あの巨体を〈結界〉で覆ったので消費ポイントが跳ね上がったのか。

 どっちにしろ、この巨大自動販売機は気軽に長時間使わない方が良さそうだ。


「た だ い ま」


 テラスに戻った俺は帰宅の挨拶をすると、呆れていいのか感心していいのか判断に苦しむ半笑いのハンターと、目を輝かせて感動しているミシュエル。そして、半眼で睨んでいるラッミスがいた。

 さて、どうやって誤魔化すか。


「ハッコン、そこに座りなさい」


 そうしたいのは山々だが、自動販売機なので無理です。


「あかんって、うちは言わんかった? 何で言うことを聞いてくれへんの」


 方言が出てきているということは、本気で心配させたようだ。ラッミスは俺が単独で勝手なことをして、いなくなるのを非常に恐れている。

 俺の身を案じてくれているのは、わかってはいるのだが、事前に説得しようにも意外と頑固なので首を縦に振らないからな。


「ハッコンのことを信じてへんのやないんよ? でもな、アカン言うていることをしたらアカンと思うんや」


 こういう時に取るべき行動は決まっている。反論せずに黙って反省して見せる、それだけだ。そして、台風が過ぎ去るのを待つ。


「反省している振りをしたら、許してくれると思ってへんよね?」


 察しが良いのも良し悪しだよな……。

 俺が怒られている間も敵が攻めてきているのだが、ハンター協会周辺の温度が著しく低下したので、魔物の動きが鈍くなってきているようで、ハンターたちが余裕を持って対処している。

 ポイントを大量消費してしまったが、その成果はあったようだ。

 だけど、この方法は明日からは使えない。そのことを後でみんなに伝えておかないと。


「ちゃんと聞いてるん?」


「う ん」


 後はお説教が早く終わるのを願うのみだ。





 この程度の攻勢なら主戦力は無用だと、俺たちは屋内で休むこととなった。

 女性陣は二階の部屋を提供され、他の面子は一階のホールや二階の廊下など、好きな場所で雑魚寝することとなった。俺は一階ホールに置かれ、いつでも飲食料品を提供できるようにしておく。

 そんな俺から商品を購入する人々が、氷の壁が近くにある影響で協会内が涼しくて、久しぶりに寝苦しい夜を過ごさなくて済むと喜んでくれた。

 睡眠が取れないと疲れが取れないからな。今日はぐっすり眠って欲しい。

 今夜は安心だと思うが、問題は明日からか。敵が深夜の攻撃前に壁の大穴から外に出ているというのが攻略のポイントだとは思うが……攻めるにしては敵の数が膨大過ぎる。そして、こちらの人員が足りない。


 生き残りは百人前後、戦力となるハンターは四十人程度。テラスで防衛に当たる人数は十五から二十。敵に攻め入る余裕は無いよな、どう足掻いても。

 方法としては一騎当千の強者を、少人数で送り込むぐらいしか思い浮かばない。無謀かもしれないが、不可能を可能にしそうな面子が揃っているという現状。

 あの大穴を塞ぎさえすれば、かなり楽になるよな。方法としては、瓦礫や廃材で埋めるか、巨大な大岩か何かで蓋をすれば終わりとなる。

 とまあ、色々考えてはみたが実行に移すにしても明日になってからだ。全員に疲労が残っている今、無理に行動を起こしても失敗するだけだ。

 俺に出来ることは、皆が少しでも安らかに眠れるように〈芳香器〉で花の香りでも流しておこうか。


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