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自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う  作者: 昼熊
二章

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旅のお供に

 草原とぽつぽつと雲が浮かぶ空を眺めながら、俺は少女に運ばれている……深く考えたら負けだ。

 朝早く出発してから三時間が過ぎたぐらいで一度、小休憩を取ることになった。

 巨大なウナススはまだまだ余裕があるようだし、並走していたラッミスも疲れた素振りを見せていない。改めて思うのだが、とんでもない身体能力をしているよな彼女は。

 それなら休憩は必要なさそうなものだが、どうやらトイレ休憩のようだ。この面子は女性の割合が多いので、用を足す場所やタイミングが問題なのか。男みたいに小ならそこら辺で立って済ますという訳にはいかない。


 ゲームとかではわからなかった女性ならではのリアルな問題か。あれ、そう言えばこんな状況に適したあれがあったな。

 機能の欄の下の方にあったソレを選び出すと、ポイントを消費して手に入れる。そして、すぐさまその仕様に変更する。

 既に荷台の隣に置かれていたのだが、フォルムが変化する俺の姿を見て双子と狩人っぽい女性が、あんぐりと大口を開けている。この人たちは見たことが無かったのか。


「あれ、ハッコンまた何か新機能を見せてくれるのか。ん? 何だ、横になんか追加されてるぞ」


 ヒュールミの言う通り、今回は本体が変わるのではなく、俺の隣に新たな物体が出現したのだ。それは細長いロッカーのような物で、高さは俺と全く同じ。

 下半分はゴミ箱になっている。上半分にはめ込み式の蓋があり、それを外すと中に折り畳みの椅子、段ボール、長くて細い段ボールが収納されている。


「何だこれ。ハッコンがこのタイミングで出したって事は、何か意味があるんだよな」


「いらっしゃいませ」


「取り敢えず、開けて中身出していいか?」


「いらっしゃいませ」


 ヒュールミが物怖じせずに中身を取り出していくと、ラッミスと愚者の奇行団が興味津々といった感じで覗き込んでいる。


「これは、畳める椅子か。でも、何で座るところに穴が空いていやがんだ? この不思議な手触りの箱の中には妙な手触りの紙? 開けていいんだな」


「いらっしゃいませ」


「好き勝手にやるから、ダメなら止めてくれよ。でだ、この頑丈な紙は袋状になっている」


「ねえ、ヒュールミ。その袋ってその穴のあいた椅子にぴったり納まらない?」


「んー、おっ。丁度だな。でかしたラッミス。で、他にはこのデカくて細い箱か。これも開けるぞ……中に透明の袋があって、その中に……うおおおっ」


 ヒュールミが取り出したそれは、ぼんっと音と共に三倍の長さに伸びる。それは折り畳み式のテントなのだが、広げるだけでいいという便利仕様の品だ。


「び、びびったぜ。これは予め形が定まっていて、少し触るだけで元の形に復元されるのか? 魔道具の一種かも知んねえな」


 驚きながらも好奇心が勝ったようで、腰が引けていたが何とかその小さなテントを広げられた。


「一人がすっぽり入れる大きさのテントらしき物体。穴の開いた椅子と袋……おいおい、まさかこれ、簡易トイレか!?」


 ヒュールミが叫ぶと、女性陣の目の色が変わった。

 そう、これは災害対策サービスとして自動販売機の隣に設置されている、災害用簡易トイレなのだ。近年大災害が多発し、トイレが深刻な問題になっていた。そこで、自動販売機メーカーがサービスとして、簡易トイレが入った箱を設置するとこにしたという訳だ。

 まだまだ数は少ないが、俺はこういった心がけをしているメーカーは純粋に応援しているので、見つけたら商品を何か買うようにしていた。


「この小さなテントは蓋が出来るから、人に見られることもねえ。それにこの袋は使用後に閉じれば臭いも漏れない」


「そ、それは本当ですかっ!」


 副団長のフィルミナさんが珍しく大声を上げ、説明をしたヒュールミに迫っている。


「お、おう。たぶん間違いねえんじゃないか。袋の底に敷いてある物から香りがするのは、消臭効果を狙っていそうだな。なあ、ハッコン」


「いらっしゃいませ」


「だ、そうだぜ」


 目の色を変えた女性陣が我先にと簡易トイレに殺到する。まずは、ちゃんと使えるか試す為にヒュールミが入り満足げな顔で出てくると、女性陣が一列に並んだ。


「ハッコン。これマジでいいぞ。これなら金貨出してでも欲しがるハンターいるんじゃねえか」


 女性のトイレ事情は俺が思っていたよりも切羽詰っていたようだ。これって災害用のサービスだから、料金は取れないんだよな。

 まあ、その後、トイレを利用したハンターたちが、お礼を口にして飲料を買ってくれたので、それでいいか。


「どうよ。俺がハッコンを勧誘したから、こんな便利なトイレ使えたんだぜ。さあ、もっと団長である俺を褒め称えるがいい」


「これはハッコンさんが凄いのであって、団長の手柄ではありません」


 フィルミナさんにぴしゃりと言い捨てられ、立ち去る団長の背中が少し寂しそうだ。

 簡易トイレは大盛況で使用後の袋は地面を掘った穴に埋められた。商品で出した物は任意で消すことも可能なので、土壌汚染を考えて袋は消滅させておいたから汚物はいずれ土に還るだろう。

 簡易トイレセットは再び折りたたまれて荷台に載せられている。災害セットもポイントを消費するので、これは消さずに彼らに所持しておいてもらおう。遠征が終わったら回収させてもらうけど。


「ついでに早めの昼食取っておけよ」


 さあ、ここからが本来の出番だ。ずらっと並べた商品は集落で売っている値段の半額以下で提供している。普通はこういった状況なら値段を高めに設定しても売れそうなのだが、事前に愚者の奇行団から報酬を約束されているので、こういったサービスをしておけば、ラッミスが今後ハンター活動をする時の良い宣伝になる筈だ。


「穀物を固めて焼いたのうめぇぇ」


「お、マジマジ。この濃い味付けのパスタもいけてるぜ」


 双子青年ハンターが仲良く分け合って食べている。片方の髪色が赤で、もう一人が白色だ。心の中で紅白とコンビ名をつけておこう。ちなみに彼らはそのまま「赤」「白」と呼ばれている。


「はぁぁ、こんなに美味しい物を遠征中も食べられるなんて、参加して良かったっす」


 射手の女性は襟首が見えるぐらいのショートカットで一見男性のように見えるが、声が甲高くアニメの萌えキャラのような声をしている。

 彼女の前にはたこ焼き、焼きそば、カップ麺、から揚げ、2リットルコーラが置かれている――いや、置かれていた。それはもう空で中身は全て消えている。小柄な女性だというのに、それを一人で平らげたのだ。大食いチャンピオンもびっくりの食べっぷりだったな。


「シュイは相変わらず大食いね。ハッコンさんのおかげで、今回は食料の残りを心配しないで済むわ」


 青く波打つような髪を指で弄りながら、フィルミナ副団長がため息を吐いている。

 これだけ大食いだと長期にわたる遠征とかだと、すぐさま食料不足に陥りそうだ。


「今回は魔物を捕まえて丸焼きにしないでいいのかっ!」


「ああ、良かった……本当に良かった」


 紅白双子が抱き合って喜んでいる。毎回、魔物捕まえて食っていたのか。蛇は美味しそうだったけど、カエル人間はどうなんだろうか。そういや、ラッミスと初めて会った時も、カエル人間を捕まえて食べようとしていたな。

 異世界の住民は魔物を食べることに殆ど抵抗が無いのか。基本的にはハンターが屋外で食べる物は、乾物か塩味に香草を入れる程度の料理らしいから、自動販売機の料理に感動するのも理解できる。


 簡易トイレといい、ハンターのチームに臨時で同行して商売をしたら、かなり利益を得ることができそうだな。自動販売機の俺を運ぶ人手がいるので、ラッミスが危害を加えられる可能性も減りそうだし。

 でも、安全性を考えるなら、この愚者の奇行団のような有力なハンターの一団に所属するのが一番なのだが……うーん。俺が頭を悩ませたところで、判断をするのはラッミスか。助言の一つもできないが、今回の遠征でこの一団を見極めさせてもらおう。


 なんて決意を胸に秘めたのはいいのだが、今のところ特に何もない。休憩後に再び行進を開始したのだが、時折姿を現すカエル人間や小さめ、といっても大人ぐらいの大きさの双首の蛇は、遠距離から矢と水の魔法で射抜かれている。

 それ以外にも、たまに幌の上で寝転んでいる団長から投げナイフが投擲され、魔物が頭からナイフの柄を生やし仰向けに倒れていく。

 格が違うな。若手のハンターたちが憧れるのも納得だ。彼らの戦いぶりは王蛙人魔の時も目撃したのだが、余裕のある状態で観察していると思わず感嘆の息を吐きそうになる。

 敵が接近することがないので、今のところ双子とラッミスに戦闘面で出番はない。


「ハッコン。うちも何かしなくていいのかな。石でも投げた方が良くない?」


 投擲か。基本的に不器用だけど、あの有り余っている怪力を生かすのはありだよな。何か投げるのに適した商品あったかな。

 俺に鎖でも巻き付けて振り回してもらえば、かなりの攻撃力が期待できるが、ラッミスは絶対にやらないよな。うーん、投擲武器か。昔懐かし瓶ジュースはどうだろう。あれなら適度な重さと硬さがあるので、威力も期待できそうだ。大きさも手ごろだから、投げやすい筈だ。

 物は試しだと瓶ジュースを仕入れて、一本落としてみた。

 今は前向きに背負われているので、無理な体勢だが手を伸ばすと取り出し口に手が届くので、ラッミスは歩きながら何とか抜き出した。


「ん? これってしゅわしゅわするジュースだよね。あれ、入れ物がいつもと違って固いよ」


「それを投げて使えってことじゃねえか」


 荷台から顔を出したヒュールミが助言してくれた。

 合点がいったようで、ラッミスがポンと手を叩き大きく頷いている。丁度いいタイミングで、前方に一匹のカエル人間が現れたので、手にした瓶ジュースを振りかぶって投げる。

 あらぬ方向に飛んでいった瓶ジュースは雑草の中に消え、カエル人間が呆れた顔で肩を竦めていた。


「うぬぬぬ、悔しぃぃぃ」


 やっぱり怪力を持て余しているな。投擲は可能だけど精度はお察しくださいということか。もういっそのこと俺を投げてもらった方が命中しそうな気がする。

 まあ、カエル人間はその後、あっさりと矢に脳天を射抜かれて倒されたわけだが。ラッミスの出番は当分なさそうだ。

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― 新着の感想 ―
カエル(あのメスなにやっとんじゃ...) ヒューッ スパンッ! …ポテ。
お!アニメのメンツがやっとでてきた!アニメと結構セリフとかまんまで作者の物語の構成がかなり上手いんだなって感じました!
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