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そうだ、小説家になろう!

作者: setuka

初めての投稿となります。

タイトルは少し勝手なものになっていますがお許しください。

一応恋愛枠で投稿させて頂きました。


 とある夏の日、彼は眠りから目を覚ました。

「こ、ここはどこだ・・・・・・」

 体のいたるところに包帯を巻いている。彼は一瞬動揺したが、そこがとある病院であることがわかって少しほっとした。窓の景色からは海が見え、なんだかとても切なくなった。


「目が覚めた様だね」白衣をまとった男性が、彼に近づいてきてた。

「あ、はい、おかげさまで・・・・・・」

 冷静を保つべきなのか、一刻もはやくこの状況に対して何か問うべきなのか、彼は迷っていた。


「ずいぶんと長い間寝ていたようだね、気分の方はどうだい」

 そんな、あたかも医者らしい言葉に対して彼は言った。

「なんだか少し、体が重い気がしますが、意識はまぁはっきりとしています」

「そうか、かなりの事故だったらしいからね、脳の方には影響が出てないようで安心だ」

 医者が少しほっとしている様子を見るだけでも、彼の気持ちは楽になった。

「あの、この怪我はどれくらいで治りますかね、両親に電話してもいいですかね」

 安心したせいか、彼は医者に尋ねたいことをすべて聞いた。


 両親の方は今日中に見舞にくるらしい。どうやら彼は、運転中に事故を起こして近くの病院に担ぎ込まれたのであった。そのあとはすぐに手術が始まり、なんとか一命を取り留め、家族は一端実家のほうに戻ったのである。

 その日の夕方、両親と妹が見舞にきた。母は僕の姿をみて泣きながら抱きつき、妹も涙を浮かべていた。父はそんな様子を見ながら

「助かってよかったな、症状のことはお医者さんからすべて聞いてある。今は少し休んで、これからのことはもう少しあとで考えよう」

 心配してくれる家族に対して、申し訳ない気持ちでいっぱいであった彼は、日頃そんなに会話のしたことのない父の優しい言葉を聞いてほっとした。

 (今後のことか・・・・・・・そうだな、こんな状況だけどやりたいことをやろう)そんな気持ちが芽生えたのは、彼が自分の将来についてしっかりと考えられたからであろう。




 次の日の昼下がり、ある女性が面会に来た。医者の後ろに隠れるようにしながら、その女性は病室の中に入ってきて、花瓶を彼のベットの机に置いた。

 「意識戻ったんだね、よかった。」彼女は、そういいながらも少しも喜んだ顔を見せるそぶりもせずにいた。どうやら、彼の症状は医者から聞いているらしく、意識が戻った彼を見ても未だに安堵できないのであろう。

 「あ、そうだ、これ前から読みたがっていた小説買ってきたんだ!よかったら読んでよ、他にも必要なものがあったら何でも言ってね、すぐに買ってくるから」

 どこか痛いところはない?と心配してくる彼女に対して

 「別に、腕は普通に動くから・・・・・・ちょっと疲れちゃたから少し寝るね」

 そう言って彼は彼女を帰した。

 二人は大学生の恋人同士であり、夏休みの想いでとして海に出かけたのであった。そしてこの事故である。彼女はほとんど軽傷であり、乗り物の下敷きになって重傷を負ったのは彼だけであった。

 彼女は何度も新しい小説を買っては彼の病室を訪れた。病院の方は、彼の希望もあって移動することなくそのままであった。




 もう3ヶ月はたったであろうか、夏休みが終わり12月の初めになって外の空気はとても冷たい。

 「じゃじゃ~ん!また新しい本買ってきたよ~」彼女は夏休み程ではないが、未だに頻繁に彼の病室を訪れている。いつも、前に持ってきた小説の感想を彼に聞きながら、陽気に会話をしてくる。

 「来年はもう社会人だろ、忙しくないのかよ」彼はそんなことを不意に尋ねた。

 「全然!どうせ入社した後も暇だろうから、そうだ、勤務地もこの病院の近くにしてもらわないと」

 満面の笑みで彼女はそんなことをいいながら

 「だってあの日、私が海に行きたいなんて言わなければこんなことにはならなかったわけだし」

 ひきつった彼女の笑みをみて彼は

 「事故ったのは相手のせいなんだけどな」

 そんなことしか言えない彼であった。しかし、彼女はわざと明るくふる舞いながら

 「で、でも私が言わなければな~はは・・・・・・」

 少し、沈黙が続いた。もう冬になる季節、彼も本当は来年から就職予定だったのだが、内定は取り消された。今後も彼が元気に働くことはないであろう、それほどの重傷を抱えたのは、天に見放されたのかどうかは知る余地もない。少なくとも見放されたのは自分だけであるはずだと彼は考えた。

 

 そんな沈黙を破るように、ベットに座ったままの彼は言った。

 「まぁいいよ、確かにお前が海に行きたいなんて言わなければこんなことにはならなかったのかもな。早く働いて俺の面倒みてくれよな、そうだ、結婚しようか」

 「え~プロポーズじゃん、嬉しい!でも急すぎだよ、そうだ、来年の5月にでも婚姻届出しに行こうか」

 彼の唐突な発言に対して彼女は驚いた様子もあったが、すぐにまた笑顔にもどってそんな言葉を返してきた。そんな前向きな言葉を聞いた彼はすかさず言った

 「そんなこと言って・・・・・・いいか、お前は俺のものだ、浮気なんてしたら呪い殺すからな、一生俺のことを想いながら生きていくんだ・・・・・・わかったな」

「え、う、うん!でもそんな怖いこと言わなくても・・・・・・らしくないよ~」

 彼女は、彼の初めて聞く乱暴な言葉に少し怯えていた。

「何言ってんだ、俺はな、お前だけにいい想いなんてさせねえぞ、お前は一生俺から離れられないんだよ」

 再び、沈黙が流れた。彼女はベットの隣に座ったまま顔を見せずにうつむいていた。数分はたったであろう、そして、


「や、やだよ、そんなの」

「ふざけんな、お前は俺の世話だけしてればいいんだ、俺のために働いて、俺のためだけに生きていくんだ」

「そ、そんな人だとは思わなかった・・・・・・」

「うるせぇ!!」

 彼女は病室を飛び出していった。それを追うこともできなくなってしまった彼は、その背中を眺めることしかできない。

 けれど、そのあとも彼の病室には毎週のように小説と花瓶にはいるほどの花束が贈られてきた。


「あの子、面会しなくなったけど、なにかあったのかね。いつも悲しい顔をして帰って行くよ」

 医者からそんなことを言われた。

 彼はそんな、贈り物だけをいつまでもして帰っていく彼女を思ってすぐさま携帯から電話を掛けた



「もしもし、俺だ、なんで俺の所に来ねえ、まさか他に男ができたんじゃねぇだろうな」

「な、なんで、あんたの言うことに従わないといけないのよ、もう、新しい人ができたんだから」

「なんだと、てめぇ、あんだけいいようにしてやったことをもう忘れたのか」

「・・・・・・」

「お前みたいなやつはな、一生顔見せんじゃねえぞ、病院にも来るんじゃねぇ」

 電話を切ると、怒りに満ちたような声で彼女に罵声を浴びせた彼の手は震えていた。それを見ていた医者は「おやおや、ずいぶんな言い方じゃない」そんな驚いたそぶりを見せた。

「いいんですよ、あれくらい言わないと」

 彼は窓の景色を見つめている。

「似たもの同士なのかな、君たちは」

 そんな言葉を残して医者は病室を後にした。








こんなことがあったら、きっと悲しくて、いたたまれない気持ちになると思いますが、作品の中ではこんな風だったらなと思い執筆致しました。

よくわからない、小説になってないなどの感想はもちろんのこと、文法など指摘をしていただける親切な方がいれば幸いです。

よろしくお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
[一言] 彼の絶望と思いやりがとても身近に感じられ、とても切ない気持ちになりました。願わくば、この後彼に幸せが訪れますように…
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