4話 忠誠心?
俺は急いで森の中を駆け巡った。攻撃してくる魔物を無視してただあの場所まで走った。子供の生気はさっきよりも更に弱くなり、このままでは死ぬかもしれない。
森が開け子供のいる大きな木が見えて、そばには痩せ細ったあの子供がいた。
子供は異常に震えていて揺らしても起きてはくれなかった。体からして何も食べていなかったのだろう。しかし、俺のあげた果物を食べればならない筈なのにどうして餓死しそうになっているのか疑問だったが、考えいる暇はない。一刻も早く食べさせなければいけない。
少々荒っぽく子供の着ている服の襟を歯で咥え俺の背中に乗せて、落とさないように走った。
向かう先は俺がいつも食べている果物の林だ。子供の鼓動が遅くなっている、俺は足をいそがせた。
突然目の前から現れたのはキングゴブリンがひきいるゴブリン軍団だった。
「ちッ、じゃまだ!」
ゴブリン達の影から黒い手のようなものが無数に現れゴブリン達の体を縛った。そのまま影に引きずり込まれて消えた。これは俺の得意魔法の一つ【影縛り】だ。相手の影を操りその影に引きずり込んでこの世から葬り去る魔法だ。この魔法で走りながら次々と自分に刃向かう物を消した。
果物の林につき子供を下ろした。
「このままだと食べさせてやれないな。」
そう言った瞬間、狼は姿を変え誰もが羨まむ20歳前後のイケメンの男性となった。魔獣は獣の姿と人間の姿、二つ持っている。しかし獣人のように獣と人間の中間的な姿にはなれない。人間の姿になり手に果物を取り子供の口に近ずけた。
「食べるんだ、ガキ死ぬぞ。」
しかし子供の口は開いてはくれなかった。それどころか口元が固く閉じてしまった。
「聞こえてんのか、早く食べろ!」
きっと言葉は伝わっていないのかもしれない。でもそう言わずにいられなかった。俺でも何故この子供を助けたいのかわからない。ただ目の前にいる小さな命を見過ごせなかった。
「頼む、口を開けてくれ。本当に死んでしまう。これを食べてくれ。」
固く閉じた口は小さく開き、その甘い果実をかじって食べた。
小さな子供は果物をどんどん食べて手に持っていた果物らあっというまになくなった。
「ふぅーーー………良かった。」
安心した俺は子供の顔色がよくなっているのを確認し俺の家に寝かしてあげた。この胸から出てくるこの気持ちはなんなのかわからないが、とても幸せな気分だった。
※注意、それは忠誠心です。お間違えの無いように。