第5話 「気心〜きごころ〜」
さあ、最後の練習だ。
私たちの出番は、もうすぐそこだった。緊張と共に聞こえるみんなの鼓動。なのになぜかみんな、まっすぐ前を見つめている。
リハーサルの時、アキがみんなに言ったのは私のことだった。
「友月は、転校してしまいます。」
まだ、本当に数人にしかその事を伝えてなくて、クラスのみんながどよめいた。
「え!?・・・うっそ。」
「ご、ごめん。言うの、タイミング分かんなくて。」
伝えようと思ったけど、伝え方が分からなくて、
結局アキからばらされてしまった。
「だから、今日は楽しもう!順位とか、そんなの、関係ないって。」
アキが真面目に言った。
みんなも真面目にアキを見る。
さあ、本番だ。
ステージに上がる前、各クラスの名前が放送される。
その放送が入ったら、息を合わせて一緒に立つ。
「2年2組。」
あ、来た。
すっ
緊張のあまり、みんなかちこちしてる。でも、なんだろ?みんなすごい集中してる。
ステージに立つと、他の学年がよーく見れる。
中1の時もやったはずなのに。慣れないな、この緊張。
伴奏が始まった。
よっし。やってやる。
ここまでくると、練習したしてないなんて、どうでもよくなる。
結局やる気の問題ジャン??
始まってしまえばすぐだった。
みんなの拍手が聞こえて、終わった感が一気に上がった。
ステージから降りるときは、もう、笑顔を消すのが精一杯。
こみあがる感動。やってやったぞ!みたいな。
できはそこそこ。練習していた人と、していなかった人の差は少し開いたけど、、、
まあ、いっか。
もう、笑顔しか出てこない。