第4話 「思心〜しごころ〜」
私がそれを知ったのは、もうだいぶ昔のことだった。
「中2の夏に、ここを離れなきゃならない。」
別にそこまでの衝撃はなかった。
ただ、今までと違うのは、、、
歌唱コンクールが、もうすぐそこまで近づいてきた。他のクラスも練習時間をどんどん増やしていて、そろそろリハーサルも始まった。
そんなときだった。
練習時間は日に日に増えているのに、練習に出る人数は相変わらずだった。
「今日の練習は3階だから!みんな来てね!」
アキがそう叫んでいた。
いつものように3時30分過ぎから始まった練習には、最初の頃よりは少し多くなった人数が集まっていた。
「今日もあんま集まってないね。。。」
アキがそう言った。
練習が終わって家に帰ると、いつものようにアキからメールが入っていた。
「コンクールまであと1週間!練習出てくれてありがとう!本番も、この調子で頑張っていこうね♪」
多分練習に出ていたみんなに送ったのだろう。
練習出てなかった人にはなんて送ったんだろう。。。
部活忙しいのに、コンクールの練習出てって言って、ごめんね。
とか言ったのかな?
それから、1週間。歌唱コンクール当日になってしまった。
「友月!直前練習、うちらは4階だって〜ぇ。」
直前練習とは、各クラスが与えられた練習教室で本番直前に練習することだ。
うちのクラスも、4階の教室で練習を始める。
「みんな、ちょっと聞いて。今日まで練習してきたのは、優勝する為じゃなくて、みんなで呼吸を合わせて、楽しむためだよ。だから、今までのことは忘れて、今日を楽しみましょう!そして、、、」
アキがどもりながらこっちを見る。
「夏休み明けたら、友月は、、、海外に転校してしまいます。だから、友月を楽しませてあげよう!」
みんながこっちを見ながら驚愕の顔を浮かべている。
ばれちゃった。。。