表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

ただいまセンター問い合わせ中です。

 ――ひとけの無い駅前の駐輪場内で俺はしばらく呆然と立ち尽くしていた。


 考えまいとするものの、嫌な予感ばかりがぐるぐると頭を巡る。

ゴクリとひとつ唾を飲み込むと、メールメニューの中からセンター問い合わせにカーソルを合わせ、確認ボタンを押した。



**********************************

ただいまセンター問い合わせ中です。

**********************************


メッセージと共に、くるくると郵便受けに向かって封筒が飛んでくるアニメーションが表示される。

俺はひたすら祈るような気持ちで、その飛び交うアニメの封筒をじっと見つめていた。



 ほどなくして画面がパッと切り替わり、


**********************************

  受信メール0/0件

現在センターにお預かりしているメールはありません。

**********************************


 というメッセージが無情にも表示される。

どうしても納得いかなくて、さらに3回センター問い合わせを繰り返してみた。

……だが、やはり結果は同じ。


 ダメ元で電話とメールも何回もしてみる。

残念ながらこちらの方も良くない意味で予想通りの結果に終わってしまった。じりじりと焦りばかりが募っていく。

 ……おい、オカン! 一体どうしちゃったんだよ?

さっきまであんなにしつこいくらいメール送って来てたじゃないか。

もしかして、わざわざ自分からあの訳のわからないシマウマ柄だか豹柄だかのケンタウロス野郎のところに出向いて行って何かあったんじゃないだろうな!?

 「何かあったのか?」の〝何か〟の内容については深く考えたくなかった。……脳裏の片隅にチラチラとある予感がよぎってはいるものの、まだ〝それ〟と向き合うだけの勇気がない。


 俺はむっつりと携帯をポケットに捻じ込むと、肩にかけていたカバンを籠へと放り込みのろのろとチャリに跨った。

 多分この時の俺は傍から見ればまるで夢遊病者か何かのように見えたんじゃないだろうか?

ぼんやりと何も考えずにただ本能だけで、いつもの通学ルートを自宅へと辿っていた。


 アパートの階段を黙々と上がり、カチャカチャと部屋の鍵を開ける。

うちのオカンは看護師をやっている為、俺が帰って来てもシフトの都合で家にはいない事の方が多い。

 だからと言って、何も言わずに黙って家に上がり込むと見つかった時「たかし!帰って来たらちゃんと挨拶しなさい」だの何だのとうるさいのだ。

 さすがにもう何かにつけて反発するような歳でもないので、いつしか俺の方もオカンがいようがいまいが無意識のうちに帰って来れば家の中に声を掛けるのが習慣になっていた。


「ただいま」


――当然の事ながら室内からは何の応えもなく、しんと静まり返っている。

別に帰っても誰もいないのなんていつもの事なのに、今日はやけにこの静かさが突き刺さるような気がする。

 無造作にカバンを床に放り出すとそのまま勢いよくソファへと倒れ込んだ。

考えるべき事はたくさんあるような気がするものの、まず何からどう考えていけばいいのかすらサッパリ見当が付かない。完全に思考が停止してしまっている状態だ。


 しばらく変な姿勢でソファに突っ伏していたら首が痛くなってきてしまった。

「……いてて」

 我ながら何やってんだろなと思いながら首をコキコキと鳴らし、大きく伸びをして立ち上がると、唐突に口の中がカラカラに乾いていた事に気付く。

どうやらオカンのメールの件で、無意識のうちにひどく緊張してしまっていたらしい。



のろのろと台所まで行って麦茶を取り出して何気なく冷蔵庫を閉めようとした時、ふとドアに貼られた紙に目がいく。

それはオカンの勤務日程が記された表だった。

基本的にオカンの務めている病院は三交代のシフト制になっている。確か昨夜は夜勤だとかで22時半頃家を出て行っていたような……気がする。

とは言え、正直なところよく覚えていなかった。ぶっちゃけ家族なんて空気みたいな存在(もん)だろ?まさかこんな事になるなんてわかるはずも無いから、いちいちオカンの毎日の動向まで気にしてなかったし。

(そういや一番最初のメールが来てたのって9時ちょい過ぎだったよな?)

 という事は夜勤明けで家に帰って来る途中で何らかの事態(超常現象?)に巻き込まれたんだろうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ