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秘密のメールが届きました。

予約投稿ミスって1回書きかけのがアップされてしまってました。

再投稿です。すみません。

 ――あぁっクソッ! 時間切れだ。

俺は後ろ髪を引かれる思いでパタンと携帯を閉じた。相変わらず携帯の右肩ではグリーンのLEDがチカチカと点滅している。


 休み時間中、未読メールを順番に消化していっているその間にも新着メールを知らせるポップアップは何度もひっきりなしに表示されていた。

オカンとしては1日にほんの数度だけそれこそ1文字1文字ゆっくり時間を掛けてメールを打って来ているのかも知れない。だが、そのメールは間隔を置かずに次々とこちらに届いている。


 さすがにコレは〝俺が今いるこの場所とオカンのいる場所とでは時間の流れ方が違う〟と素直に認めるしか無さそうだ。

(……どう考えたって、〝あの〟オカンがこんなに素早くメール打てる訳ねーもんな)


 けれどそれは、俺がこうやって携帯から目を離しているほんの少しの間にもオカンの置かれている状況が刻一刻と変わって行っているという事でもある。

(オカン大丈夫だろうか? ……いっぱい転んで傷だらけになってるとか言ってたよな。 果物ぐらいしか食ってねぇみたいだし……)


 一度考え始めるとどんどん良くない想像ばかりが頭に浮かんで来て、どうにも目の前の物理に集中出来そうになかった。

こんなモヤモヤした気持ちでずるずるとやっていたとしても、大して結果は変わらないだろう。

そう強引に結論づけると、俺はそそくさと埋められるだけ解答欄を埋めて担当試験官に声を掛けた。



「先生すみません! 気分が悪くなって来たので早退させて下さい」



  * * *



 クラスの連中がジロジロと不審そうな視線を向けて来る中、俺は慌ただしく教室を後にした。

駅に向かって歩きながら急いで携帯電話を手に取る。



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差出人:J( 'ー`)し カーチャン

件名:森脱出!!!!

本文:たかし、聞いて下さい!!お母さんようやく森からだつしゅつ出来たみたいです!!!!!!

やったー!!!!ばんざーい。

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 お!良かった。森から出られたのか。

これで少しは獣に襲われたりするリスクは減った?と思いたい。



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差出人:J( 'ー`)し カーチャン

件名:つかれたよ

本文:たかし、もりから出れたのはいいんだけどおかあさんつかれちゃったよ。

足がガクガクシテイタイデス。おなかがぺこぺこでふらふらします・

こんな事ならカバンにおやつのブラックサンダーいぱい入れておけばよかった。

たかしもいつ異世界に飛ばされてもいいようにブラックサンダーは常備しておいた方がいいと思うよ!!!!

**********************************


 いや、フツー異世界に飛ばされる事を想定して下準備してるヤツなんかいねーから。

てか、そもそも俺はゴールデンチョップ派だ。 いやいやいや、そういう事じゃなくってだな。

 ……どうやらオカンはかなり弱って来ているらしい。この3日間ロクに食事も摂らず、ひたすら歩き回っているのだから無理も無い。それがわかってはいても、一方的に状況を知らされるだけでこちらからはそれに対して何もアクションを取る事が出来ない事がもどかしかった。

まるで録画された中継ドキュメンタリーを見ているようなものだ。



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差出人:J( 'ー`)し カーチャン

件名:きゆうけいしてたら、お母さんいつの間にか寝ちゃってたよ。

本文:森の外はススキ?みたいな草がいっぱい生えてる野原みたいなところです。草の陰に鳥の巣を見つけました。たまごがあったので生だったけど食べちゃいました。鳥さんごめん。

休んだのでちょっと元気でてきたよ!!! たかしも元気でがんばってますか?

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 駅に着いた俺は、ひとまず自宅方面へと戻る電車に乗り込んだ。

ついじっとしていられなくて学校を出て来てしまったものの、家に帰ったところで実際この状況で俺に何か出来る事があるとも思えない。

 そもそもこういう場合、どうするべきなんだろうか? 警察に捜索願いを出す?……このメールを見せてか? どう考えても信じてもらえる訳がない。

誰かに相談するにしても咄嗟に適当な人間の名前が思い浮かばなかった。

 俺がよく読むライトノベルの異世界トリップモノでは、常に主人公は異世界に飛ばされ活躍する側の人間であって、こっちの世界に残された人間なんかじゃなかった。そもそもそういった人物にスポットライトが当る事すら滅多に無い。

そりゃ行方不明になった主人公の事を親とか友達は心配してるだろうな。くらいの想像はする事はあったものの、残された人間が実際にどういう行動を取るのかなんて、真面目に考えるはずも無い。


……もし本当にこのままオカンがずっとこっちに戻って来れないような事になったら……そうなったら、俺は一体どうしたらいいんだろうか?



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差出人:J( 'ー`)し カーチャン

件名:たかしに話して置くことがあります。

本文:たかし、今までずっと黙っていたけれど話して置きたい大事なことがあります。

それはあなたのお父さんのことです。実はたかしのお父さんは、さる財閥の御曹司です。

熱烈なラブロマンスの末に結ばれてたかしを身篭ったのですが、ふくざつな事情があってお母さんはその家を出て、お父さんには内緒で1人でひっつそりとたかしを生んで育て来ました。

もし、お母さんがそつちに帰れない事なったらお父さんをたよりなさい。

お父さんはお金持ちなので何の心配もいりません。きっとたかしを立派に幸せにしてくれるでしょう。

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「はぁぁぁぁぁ!? なんじゃーーそりゃ!!」

電車の中だというのに、思わず声に出てしまった。慌てて口を閉じて素知らぬ振りをする。

昼前のJRの車内は乗客がまばらだったものの、斜め向かいの席に座っていた爺さんにジロリと迷惑そうな目で睨まれてしまった。

 にしても、寝耳に水とはまさにこの事じゃないだろうか? 確かに我が家は母1人子1人の母子家庭だ。俺の事は、オカンが女手ひとつでここまで育てて来てくれた。

 それが……父親がまさかの財閥の御曹司!? それっていわゆる隠し子って事だよな?

オカンが戻って来れなかったその時は、金持ちの家で俺1人だけ幸せになれって言うのか? ……オカン、そんな寂しい事言うなよ。



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差出人:J( 'ー`)し カーチャン

件名:なーーんてね。うっそぴょーん!!!!

本文:びっくりした?びっくりした?へへへーそんなうまい話が世の中にある訳ないっての。

ちよっぴりお母さんの願望はいっちゃいました!!!うふ☆

まぁついでだから話しとくと、本当の父親は単なる飲んだくれの甲斐性なしだたのよー。

借金と女ばっかり作って全然働かないからムカついて家から叩きだしてやりました!!!!!

だからあてにしたらダメだからねー! たかし、男なら強くいきるのよー!

お母さんもがんばるよー!!!! 根性で絶対かえるからまっててね。

だから冷蔵庫のはーげんだっつは食べないでください。

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 ………………おい。


なんなんだコレ!? まぁオカンらしいっちゃーらしいが。何だかしんみりして損したような気がする。

にしてもオヤジは飲んだくれの甲斐性無しだったか。でも何となく納得出来るような気もするかな?

 つかオカン、財閥の御曹司と熱烈なラブロマンスて……ハーレクインとやらの読み過ぎなんじゃねーの?


 俺はそう内心苦笑しながら次のメールを開いた。



**********************************

差出人:J( 'ー`)し カーチャン

件名:たかし!大変です!!!!第1村人を発見しました!!!

本文:空白

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