孤独
クライクライクライ!!
僕は、小さなころから嫌われ者だった。
幼稚園のころの記憶は、年上の子供達に小突き回されたこと、保育士さんにことあるごとに殴られたことだった。
「あなたは、何でほかの子と同じことができないの」
と、頬を殴られたのは、何度あっただろうか?
小学校に上がってもそれは変わらない、担任の先生からは同じ言葉を吐かれ、教室に行けば机はまともにおかれて無かったし、上履きをまともにはいた記憶も無い。
唯一、優しかったのは、七つはなれた双子の兄と姉だったのだが、結局二人も行方不明になった...。
僕をかばって...、消えた...。
あの日、何が起こったのか、結局僕にはわからなかった。
ただ、警察に保護されて家に帰ってきた僕を見た母の目だけが印象的だった。
刺す様な、怨むような、そんな瞳、決して実の子供にむけてはいけない目をした母の第一声は。
「貴方が、変わりに消えれば良かったのに!」
だった。
そして、その発言を諌めるものも、咎める者もいずに、僕は、兄と姉を失った僕は...
世界から孤立した...。
まともに、食事も与えれらず、とはいえ、ようやく中学生になったばかりの僕がバイトなどできるはずも無く。
まあ、面接の時点で落ちただろうけど...。
そんな、生活が何年か続いた...。
それでも、何とか生き残った...。
きっと、悪運だけが強かったのかもしれない。
だって、生き残ってしまったのだから、母と父が死んだ時も。
火事だったそうだ...。
たまたま、鍵を無くして家に帰れなかった...。
それだけの話しだったはずなのに。
僕は、帰る意味も無かった、それでも僕の家だった場所も失った。
親戚が引き取ってくれるはずも無いと思っていたが、母の姉である人が引き取ってくれた。
そのころ、僕は高校生になっていた。
生傷の耐えない華奢な身体、伸ばしっぱなしの髪、やせすぎなのか、年齢にそぐわない幼い顔立ち。
そんな僕と、始めて顔を合わせたおばさんの反応は。
「今まで、ショタは病気だと思っていたけど、君を見たらあいつらの気持ちもわかるわ...」
だった。
そして、おばさんが、おねーさんが住んでた家が僕の新しい家になった。
ちなみに、初対面でおばさん呼ばわりしたら、5メートル位吹っ飛ばされた。
でも、それでも、その痛みは、久しぶりに優しかった。
良く、小さいころに本当の意味で叱ってくれた兄達を思い出す痛みだった。
「学校に行きたくない?じゃあ行くな!
おまえ、一人位養ってやる!」
と、ぶっきらぼうに言ってくれた時は、本当に嬉しかった。
ただ、僕の髪を綺麗にすいて、女の子の格好をさせようとすることがたまに傷だったけど。
その数年間は、その生活は、今まで生きてきた中で一番充実していた。
でも、だからこそ、ばちが当たったらしい...。
ねーさんの知り合いが、借金抱えて夜逃げしたらしい、保証人はお約束...。
借金取りに、追い詰められて、職を失って、家に閉じこもったねーさん。
それからは、うわごとのように、死にたいと呟くようになったねーさん。
でも、いいと思うんだ...。
「私と、一緒に死のう...蓮」
とか、よく言われるけど、いいんだ。
僕は、もともと、世界に未練など無い...。
だから、一緒に死のう。
もう...。
「僕を置いて行かないで...」
それが、僕の最後の言葉。
燃えていく家の中で姉さんが優しく笑っていた...。
その瞳は、もう何も映してはいなかったけど。
楽しそうに、嬉しそう、悲しそうに...笑っていた...。
それが、僕の最後の記憶。
そうして、僕こと 柏木 蓮は18年の生涯を閉じた。
書いてて、泣きたくなってきた...。