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第四話

第四話

 NKKを作った偉い吸血鬼は最初に医者方面の知り合いを募ったと言う話がある。これは怪我をした吸血鬼に処置をしたり、自分で人間から血を取るのが下手な吸血鬼の為に献血で得た血を秘密裏に回すためだと言われている。

 昔の吸血鬼は十キロ先の暗闇でも見渡せるとか言われていたものだ…残念ながら、毎年の健康診断の結果最近五キロが限界になって来たそうである。人間と共に(あくまで紛れ込んでだが)生きて来た吸血鬼も機械に頼ったりしてきている為、身体能力が以前に比べて落ちて来たらしい。

 まぁ、落ちたと言ってもそれなりに腕力は強いし、空だって飛べるからまだまだ十分な力を持っていると俺は思っている。重武装した人間相手にしても俺だって勝てるからな。

 図書館を出て俺は文字通り飛んで家に帰った。他の人に見られないよう気を付けているし、時間帯も人が少ない昼下がりだったのであっという間に家へと帰り着いた。

「ふぅ…」

 あの先生が何者か調べたい…うん、普通に綺麗だったし俺だったら襲って血を吸っていたかもしれない。ただ、ここの吸血鬼は相当なグルメらしい。普通だったら好みじゃなかったとしてもそのまま襲っていたはずだし、血を吸った相手の記憶をちょっとだけ消したりする事が出来るのだ。



 人はそれを特殊能力と言う。



 この力は多用すると自身の寿命をすり減らしてしまうそうで現代の吸血鬼は薬で回数を制限していたりする。俺みたいな若い吸血鬼はあまり制限されていないが、老齢となると回数制限の薬が欠かせなくなってくるらしい。

 これは男の吸血鬼に多いらしい……まぁ、その、同族で恥ずかしいと言うか何と言うか、自分の嫁さんに満足いかないオオカミさんがお酒の席とかで多用して過ちをしちゃった時の為に催眠術を使うそうだ。

 ついでに、吸血鬼同士では子供は生まれないそうだ。片方が人間なら出来るそうで、これもまた理由がわかっていない。半分だけ人間、半分だけ吸血鬼と言ったそんな半端な存在は生まれず、一人目の赤ん坊は必ず吸血鬼として生を受ける。二人目以降は人間が生まれるそうだ。これは吸血鬼の数が人間を絶対に超えないようになっている仕組みだとか何とかで、詳しい事は学者にでも聞いてほしい。

それで日本の吸血鬼同士の結婚はそう多くない。男がよく浮気をするからだそうで、喧嘩をするとどちらかが土の下に行くそうである……九割、男の吸血鬼が天国に召されるそうな。

 ともかく、わかる事は浮気をするのはよくないと言う事だ。俺の親父はもう六回ぐらい死んだ母さんに刺されたそうだ。

「後にも先にも、この私をあそこまで追い詰める事が出来たのはお前のママだけだったよ」

 何故か誇らしげにそういう親父。月命日には必ず墓参りに行くぐらいだからよほど死んだ母ちゃんにぞっこんだったようだな。

写真や映像なんかに母ちゃんは残っていないので、話でしか知る事が出来ない。親父の話によると俺の母ちゃんは美人で強くて、嫉妬深く、怒ると手がつけられないほど暴れるらしい。お隣のおばさんとちょっと話しただけでも駄目、ウェイトレスに注文するときも母ちゃんがしていたそうだ。

 写真の一枚でもあるものかと思って探してみた事もあった。親父が持ち歩いているわけでもなく、俺が生まれてすぐの火事で家が燃え、アルバムとかも焼失したそうだ。

「いいか、義人。美人の奥さんをもらうんだぞ。不細工は三日で慣れるとか言っている奴は悔しくてそんなことを言っているだけだ。一度しかない吸血鬼としての命、全うしろよ」

 親父から一度だけ言われた言葉である。中学一年生の頃にその言葉を信じて可愛い子にアタックした事もあったんだけどな。

「ごめん、大仁君はいい人だけどそんな風には見れないの」

「え、ちょ、色白で頼りなさそうだから無理」

「義人君にはもっといい女の人がいるわ」

 俺の場合、選ぶ権利は男じゃなくて女にあると思うだよ、親父。高校生になってからは告白なんて一度もしていない……また、可愛い子にあってもいない。初恋は近所のお姉さんだったが、種付け婚…じゃなかった、出来ちゃった結婚で何処かに行ってしまった事が大分トラウマになったな。

「いいか、義人。美人の奥さんなんて怖いだけだぞ。結婚したが最後、釣り合ってないとか色々影でののしられるようになるだけだ。自分の顔を鏡で見て、しっかりと均整取れた相手を選べよ」

 親父はころころと意見が変わるからな。最近はこんな事を言っているもんだから困る。これもまた、一度しか言われない言葉なのだろう。

「今日の晩御飯は……出前かインスタントでいいか」

 ぶっちゃけ、人間の血を吸えば飯なんて食わなくていい。直接首筋に噛みついて…と言う方法はあるにはある。しかし、これは相手に快楽を与えたりするために恋人同士でやってくれとのお達しだ。普段は相手を催眠術で眠らせて血を抜き取り、いただくと言う方法にしている。

「ともかく、暗くなっても夜道を歩いているうら若き美女の血でもいただこうかねぇ」

 ついでにこの町の女性を恐怖のどん底に落としこんでいる吸血鬼を見つける事が出来るかもしれないからな。


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