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第二十七話:ち:吸血鬼、準備する

第二十七話

 吸血鬼を仕留める為にはどうすればいいのか…。そりゃ何度も何度もめった切りにしていれば多分死ぬんだろうが出来れば手っ取り早い奴がいいんだろうな。これがまぁ、確立されていないと言ったほうがいいだろう。もちろん、昼間のうちに太陽の光を直接当てさせればいいわけなんだが…知っての通り、日焼け止めなどでそれらが通用しない吸血鬼もいるわけだ。銀の弾丸が通用すればいいんだけど、日本じゃ銃はちょっと手に入れづらいからな。

 やっぱり、俺が吸血鬼を見つけた場合は説得するしか方法が無いんだろうな。

 放課後、校門前でぼーっと千華を待っていたら一人の老人が目に移った。校庭側から場外ホームランのボールが飛んできていた。一直線に爺さんを狙っており、偶然にしてはあまりにも出来すぎているような角度で後頭部に当たりそうになった。

「え」

 下手したら爺さんを昇天させたかもしれない白球は誰もいないコンクリに当たってちょっと撥ねただけだった。爺さんの姿は数メートル程移動していた。実際、目にもとまらぬ速さで移動したのは確認できたんだけど……あんなの人間が出来ることじゃあない。

「……血の匂いもするなぁ」

 何かの薬で血のにおいを隠しているようで、その不快なにおいは胸糞の悪くなるようなものだった。

「ごめーん、待った?」

 久しぶりにシリアス満々の顔して考えていたところに元気よく千華がやってきた。

「ん、いや…」

「どしたの?元気ないけど」

「吸血鬼っぽい人物を見つけたんだよ」

「へぇ~じゃあその人が犯人かな?」

「どうだろうな…確証が無いって言うか……人間にまぎれて生活しているだけの普通の吸血鬼かもしれないし…」

 俺がそう言うと千華は驚いたような顔をしていた。

「どうかしたのか」

「あのさぁ、もしかして…義人君ってばこの町に住んでいる吸血鬼のデータとか持ってないの?」

「持ってねぇよ」

「じゃあ誰が犯人かってわからないんじゃないの?容疑者っぽい吸血鬼がいたら成敗するつもりだったとか?」

 その言葉に俺は当然首を振る。

「俺がここに派遣されたっていう事は現地にNKKに所属している吸血鬼がいないってことだろうから住んでいる人数は零だろうよ」

「じゃあさっき吸血鬼かもしれないって言った人は後から引っ越してきたってことなのかなぁ?」

「うーん…一度確認したほうがよさそうだな。というわけで、俺は帰るよ」

「あ、あたしも義人君の家に行くよ」

「なんで」

「だってそりゃあ相棒だもん」

 えへへーって笑っているとは実に余裕だ。さっきの老人が吸血鬼なら……勝てる見込みはない。

 無碍に追いかけす事も出来ないのでいつものように二人で話しながら帰った。いつもと違うのは直接俺の部屋に千華がやってきた事である。

「で、何か特別な通信機みたいなもので情報を本部から受け取るの?」

「そんな大層なものはねぇよ。携帯で事足りる」

「なーんだ…がっかり」

「そう言われてもな…」

 千華にはコーヒーを出して親父に電話することにした。

「あ~もしもし親父?」

『どうした?』

「いや、今俺の住んでいるところ……っていうか、最近は事件も起こってないんだけどこの辺りに吸血鬼とか住んでたっけ?」

『ちょっと待ってろ……』

 コーヒーをあっという間に飲み干した千華が俺の方を見ていた。何かを期待しているようだ。しかし、それが何かはわからない。

「ねぇねぇ、義人君が所属している組織のトップって義人君のお父さんなんだよね?」

「ああ、そうだよ」

「じゃあ義人君ってボンボンって事だよねぇ」

「いや、そうでもないなぁ……そこらの家と変わらねぇっていうか中流程度じゃねぇかとおもう」

「ふーん」

『あったぞ…えーと、今のところその地域に吸血鬼はいない。一昨日のデータが出てるからな。お前以外はNKKに所属している吸血鬼はいないって事になる』

「わかった、じゃあ今後も探してみる」

『ああ、義人。ちょっと待ちなさい』

 珍しく親父から引きとめられた。

「ん、何だよ?」

『そこにいる女の子と代わりなさい』

 とりあえず女の子と知り合いになろうとするのが俺の親父だ。別に直接手を出すわけじゃあない……人は一人じゃ生きられないって言うそれと同じで誰かと関係している。言い方は悪いけど不細工の知り合いが全員不細工と言うわけではない為にその中に好みの血を持つ人間が含まれている可能性があるからな。

 俺と電話を代わった千華は何やらしきりに頷いていた。徐々に目をキラキラさせているようで……途中からはちょっと照れているようだった。

 電話を切って俺に手渡す千華に尋ねてみる。

「千華に何話してたんだ?」

「教えない、秘密の話だよ」

「秘密って…」

「ともかく、義人君のお父さんがいい人みたいでよかったよ」

「見た目はまるでフランケンシュタインの怪物みたいだけどな」

「えー、見た目なんて関係ないよ。そうなったら義人君だって吸血鬼っぽくないし…」

「……」

 どうせ千華の頭の中には黒地で裏地が赤いマントの線の細い奴がワイングラス片手に笑っているんだろうけど、日本の吸血鬼はそんなもんじゃねぇよ。

 まぁ、イメージするのは難しいな。所詮イメージに準じるような格好をしないとなかなか吸血鬼って認めてもらえないところがあるからな。

「…俺も普段からトマトジュースをがぶのみして吸血鬼のイメージ定着を狙おうかな」

「え?義人君って正体隠しているんじゃなかったっけ?」

「そうだったな」

「そうだよね、今頃正体ばれていたら正義の味方に即スカウトされていたよ」

「どっちかというと吸血鬼は悪の組織っぽいイメージがあるけどな……ま、いいよ」

 用事が無いのなら帰ってくれ……とは言えないので無難なところでテレビをつけておいた。

「ちょっと、トイレ行って来る」

「別に宣言しなくてもいいよ。それにデリカシーが無いから『お花を摘みに行って参ります』とか言えばいいと思う」

「あー、はいはい、大きい方を力みまくってきますわ」

 トイレに入って辺りを見渡す。なんだか誰かに見られている感じがしたんだけど……男一人の住居に用事のある奴なんていないだろうな。

 しっかし、人間が腹筋を鍛える理由って言うのはこれだけだって最近思うようになって来たぜ。腹筋とか普段の生活でトイレぐらいしか使わないからな。腕の力は重い物をもつとき(例:箸)に使うし、足の筋力は食い逃げに使用するって言う人もいるだろう。後は坂道ダッシュとかか。

 用事を済ませて…ああ、もちろん、ゆっくりしたから大丈夫だ。あんまり力を入れすぎると切れるとかなんとか親父が言っていたからな。手を洗ってリビングへと戻るとテーブルの上に肌色多めの本が、俺の部屋にきっちり隠されていた本が、蛍光灯の光に照らされていた。

「これ、何?」

「これ、何って…」

 いや、まさか家探しされるなんて思ってなかった(思っていたから隠していたんだが甘かったな)わけではないんだけど……なんでエロ本を引っ張り出されてきたんでしょうか。

「この前もこーんな本を読んでたんだよね」

「いや、あれはまだ読んでないぞ。読む前に千華に処分されちゃったし」

「本っ当、義人君ってばこの町に何しに来たの?エッチな本を見る為に来たの?」

「ち、違うぞ。ちゃんと吸血鬼を捕らえるか説得するかのどちらかをする為だ」

「じゃあ要らないよね?」

「いや、それは…」

「しかも、『経費分、吸血鬼に関する本』って書いてるじゃない」

「………」

 これはいいわけ出来ないな。報告するときは『件の吸血鬼が狙っている女性の参考書』だと言おうと考えていたりする。もちろん、その時には殆ど廃棄するつもりだった。

「あたしが処分しておくから」

「う、うう…お願いします」

「はい、じゃあこれ焼却する本の代わり」

 そういって手渡されたのは(というか、本は燃やすつもりなのね)二つ折りにされた何かだった。それを二つ折りから戻すと胸につけるあれだった。

「ぶ、ブラジャーかよっ」

「そ、そうだよ。あたしのだから存分に使っていいよ」

「使っていいって……」

 嬉しいような、ってそういう問題じゃない。

「俺にはこんな変な趣味はねぇよっ。ほ、ほら、返す」

 若干後ろ髪を引かれるような感じがしないでもない、しかし、こんな趣味があったとか学校に広まったら大変なことになる。

「え、ええ?だって緑川君が『義人は変態的な趣味だからね、この前も女子生徒の下着を盗んでいたよ』って言ってたよ」

「あいつの言う事は嘘っぱちだ。適当に言ったんだよ」

「でも、緑川君のアドバイスでこの本の隠し場所わかったんだよ?」

「いや、それは……関係ないから」

 意外と大きかった気がするブラ……というか、渡したと言う事は今つけてないんじゃ……いやいや、変なことは考えちゃいけない。

「ん?」

 ふと、窓の外を見ると校門前にいた爺が張り付いていた。その目は獲物を求めるような目で視線の先にいるのは千華。

 老人は舌なめずりをして満足そうに千華、そして俺を眺めてから姿を消した。

「ど、どうしたの?そんなに怖い目で外を睨んで……」

「千華、お前の家に俺を一日でいいから泊めてくれないか?」

「え、い、いきなりどうしたの?別にいいけどさ」

「そっか」

「じゃあいつ泊まりに来るの?」

「今日だ」

「え」

「大丈夫、夕飯とかはこっちでちゃんと準備するから」

 さっきトイレでの違和感は爺に見られていたからだろうか……ともかく、不審者を久しぶりに見つけたのだからそいつが千華を襲う可能性もあるだろう。

 今回の事件を起こした相手であると言う事を祈りつつ、そして俺が問題なく相手を説得、または仕留められるよう準備をすることにした。


奇数話ラスト(プロトタイプ):「血を飲むためのパックが不注意で破れてしまう。血を手に入れるため千華とともに病院へと忍びこむとそこには別の吸血鬼が潜んでいた…義人はそれを追うが、血を飲んでいなためなのか、はたまた弱いからか吸血鬼に逆にやられ絶体絶命のピンチに陥る。一撃から救ったのは千華で、彼女は致命傷を負い、自分の血を飲むように義人に伝える。義人は血を飲み、吸血鬼を見事打ち倒すのであった。徐々に冷たくなっていく千華をどうすればいいのかわからない義人は彼女を吸血鬼にすべきかどうか悩むのだった。」といった感じですね。うん、なんでぐだぐだな方になってしまったのかわかりませんが次回で奇数編終わりですかね。

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