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第二十二話:み:学園物

第二十二話

『義人、お前の言っていた人物の事だが…』

「親父、こっちからかけなおす。場所がちょっと悪いからさ」

 さすがに部室でこれ以上の電話はやばいだろう。さっきだって下手したら須黒に聞かれていた可能性があるのだ。今度は先生がやってくるかもしれないからな。

 電話を切って部室から出ようとすると先生と鉢合わせした。

「あら、大仁君…どこに行くの?」

「え、あ、ちょっとだけ用事があって…親父に電話しようかと思って…失礼します」

 先生を避けて廊下に出ようとした……が、先生が俺の前に立ちはだかった。それはもう、超える事の出来ない山のごとき威圧感である。

「ごめんねぇ、先生ちょっと聞いちゃいけない事を聞いちゃったみたいでさ」

 携帯電話を持っている手の方を握られる。握力は人間のそれとは違い、プレス機に挟まれたかのような力である。リンゴなんて軽く握りつぶす事が出来るに違いない。

 抵抗したら俺の手がすりおろしりんごになる事間違いなし。

「せ、先生、どうしたんですか」

「どうもこうも、ちょっと大仁君に見せたいものがあるの。着いてくるわよね」

 有無を言わせぬ響きがある。『着いてくるわよね』の短い言葉の中には『着いてこない場合はそれはもう恐ろしい体験をさせてあげるわ』といった意味が含まれているようだ。

 相手の考えがわからない以上、従うしかない。いつの時代だって力のあるものが無い者たちを支配してきたのだ。今だって気付かないだけで変わりもしない…まぁ、長いものには巻かれろって言葉もあるからな。

「え、ええ…」

「変な事をしようとしたら……」

「しませんよ」

「よろしい」

 玉宮先生は俺の首根っこを捕まえると左右にちょっとだけ振った。その動作はまるで缶ジュースの残りを確認するかのようなものだったが、俺からしてみれば首が折れるかどうかの一歩手前だ。もちろん、人間のそれとは強度が違う。戦車の砲台を握って振り回し、それをぶつけられたって大丈夫なぐらい丈夫なんだぜ。でもまぁ、今じゃ気分次第でやられるかもしれない。

「さ、行くわよ」

 あろうことか窓から飛び降りた。此処は三階である……といっても、俺と先生は怪我することなく着地で来たわけだけどな。

 未だ先生につかまれている俺は校舎裏のシミを見せられる。

「えーと、これは何ですか」

「血で出来たシミよ。もっとも、その血が流れていた吸血鬼はこの世にいないけどね」

「え、そんな馬鹿な…」

 吸血鬼の血は日光に当たれば煙を出して消える。日の当らないような場所ならちょっとぐらいなら残るかもしれないがここまで綺麗に人型に残る事はない。

 首を掴まれた状態でその血のシミを触ったりしてみた。校舎の壁を触っているだけで、手に違和感は一切ない。

 不思議に思う俺に先生は愉快そうに言うのだった。

「……あなたのお父さんから詳しい事は聞けばいいと思うけど、先生は吸血鬼の研究者なの」

「……は」

「私はNKKにいるのが嫌になって今は一人で行動しているわ。こうやって世間を騒がせている吸血鬼事件を追ってNKKの派遣員が来る前にその吸血鬼にあれこれするのよ」

 あれこれって何ですかとは聞ける雰囲気ではなかった。下手したらこれからあれこれされるかもしれん。嬉しはずかしなあれこれならともかく…十中八九身体を傷つけるようなあれこれだろうな。

「それでね、それまで吸血鬼が起こしていた事件を先生が続けてNKKの派遣員をおびき寄せるのよ」

「………」

 この場合、おびき寄せられた派遣員って一体誰の事になるんだろう…なんて言えたらどれほど良かっただろうか。

 暴れた瞬間に先生は俺の首をちょっとだけひねるだろう。情け容赦のない冷徹な雰囲気がいつもの優しそうな雰囲気とのギャップの激しさで俺の脳天はしびれまくりである…すまん、自分で何言っているのかよくわかってないぞ。

「…えーと、つまり先生は俺の身体を使って実験しようってことですか」

「よくできました、その通りよ」

「……」

 絶望的である。こういうピンチの時に誰かが助けに来てくれるんじゃないんだろうか。淡い期待を寄せて眼だけ動かしてみたけど、どこにもヒーローはいない。

 しかし、俺が可哀想なモルモットになる事もなかった。

「残念ながら大仁君は平均より少し下のレベルだから使い物にならないわね」

「え…」

「先生が必要としているのはとても能力の高い吸血鬼なのよ。耐久度も高くないといけないんだけど、最近の子はやっぱり身体的にも弱くなってきているみたいだし、駄目ね」

 助かった…何だか嬉しくないけどな。取るに足らない相手だから見逃してくれると言う事だろうか。

「見逃してくれるんですか」

「うーん、そうね…大仁君がNKKに報告しないのなら見逃してあげる」

「…本当ですか?」

 俺の質問に対して先生は頷く。

「本当よ。だってここで大仁君がNKKに連絡しなかったら手に負えない大物が派遣されるに違いないもの」

 そんな怖い人物がいるのかよ…知らないなぁ。

「ともかく、大仁君が変な事をしなければ私も襲ったりしないわ」

 先生は俺を解放してくれた。もっとも、強大な力を持つ吸血鬼が近くにいる事実に変わりはない。俺程度の吸血鬼なんて瞬きの間に大変な事になる可能性が高いのだ。ほら、あれだ。お猿さんが手の上に小便引っ掛けるような話みたいなもんだな。

「ああ、そうそう」

 さっさと逃げ出したい俺にまだ用事があるらしい。

「NKKには残念なお知らせだけど今回私が追いかけている吸血鬼は二人いたのよ。一匹はこの通り、平らな姿になったけどね」

 指差す先には血のシミが……俺も下手したらああなるんだろうな。

「つまり、もう一人はまだこの町にいるって事ですか」

「多分そうね。まだ匂いをかすかに感じるもの。もちろん、私の手足となって大仁君には働いてもらうわ」

 嫌だなんて言ったら頭の中に電極埋め込まれて操られそうである。



『勇気を持ってNOと言おう』



 学校の掲示板かどこかで見た言葉だ。言えるほどの力を持っていない自分が悲しい。でもまぁ、考えようによっては強力な助っ人を得たようなものだから調査は捗るってことなんだろうか。

「じゃ、明日から須黒さんと協力して吸血鬼捜索してもらうわ」

「え…」

「大丈夫、吸血鬼の事に関しての部活だからなんらおかしな問題点はないもの」

 そういえばそうだったなぁとため息をつけるほど心に余裕はなかったりする。


冒頭、ちょっとした小話を書こうとして気がつきました。これは本編よりも長くなりすぎているぞ…。結果、削除。この作品自体が学園物みたいなものだから今回はいいかなぁということで冒頭はありません。前書きに書いていないのは読むまでに一ページ分増えますからね。面倒でしょうし、あとがきなんて滅多にないから誰も読んでいないという理由からです。さて、奇数のほうもそれなりに話が進みます。

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