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第二十一話:ち:友達がやってきた

第二十一話

 普通の人間を吸血鬼にする方法なんて腐るほどある。ただ、あまり実行する輩は多くない。たとえばある程度血を抜いた人間に吸血鬼の血を輸血していればその人間は吸血鬼になる。リスクの事はとりあえず置いておくとして、晴れて吸血鬼になった人物はそれからある程度試練を乗り越えねばならない。まぁ、あくまで日本の場合である。

NKKへの登録…これがまた大変で経歴を書いて適性試験(日光に対しての抵抗力など)を受け、吸血鬼の知識を頭に叩き込んだりしなければならない。空を飛ぶこともしなくてはいけないのだ。ま、そういった面倒な事が出来ない吸血鬼には悲惨な道しか残されていないから世の中甘くないなと思うね。



 転校してきてもう落ち着いてきた。クラスメートと仲がいいと言わないまでもそれなりに話しが出来るようになってきているし、もう転校生と言うよりもちゃんとした生徒として扱われている気がする。

 吸血鬼の捜索も地味に続けていたりして最近では『この町にいないようだ』という結論に近づきつつある。今日も三十分間(最初は一時間近く探していたものだ)

「というわけで、今日は義人君の家に行くよ」

「なにがというわけで、なのかは知らないが……」

「うーん、だって行ったことないし、面白そうだからさ。吸血鬼の家とか見てみたいもん」

 おもしろくもないし、特別何があると言うわけではない。しかし、仮にもNKK理事の息子だからな。『吸血鬼のイメージを壊してはならない』をがんばってみようとも思う。いや、普通に高校通っている時点で壊れたとかいっちゃ駄目だぞ。

「んじゃあ、行くか」

「うんっ」

 女の子を自分の家……じゃなくてねぐらに連れていける日が来るとは思わなかったな。これもこの町にやって来れた事に感謝だなぁ。女子にモテル男はつらいそうだ、しかし、モテない男の方が辛いのである。

女の子での悩みを相談されたところで答えられない、というか、自慢話だろそれ。

「なぁ、大仁、おれ……三角関係で悩んでるんだ。双子の両方好きになっちまったって言うか…」

「知るかぼけがぁああ」

 今日の昼休み、俺は緑川に辞書を投げつけてやった。

 ともかく、彼女も女友達もいないやつにそんな相談するんじゃねぇよ、全く。千華と一緒に歩きながらリバーサイド満開を目指す。

「へぇー、リバーサイド満開ってところに住んでるんだね」

「……ああ」

「変な名前だねぇ」

「俺もそう思う」

 もし、千華が『すっごいかっこいい名前だね』とかいい始めたら友達やめようかと真剣に考えていたりする。

 管理人のおばさんに見つかったら色々と面倒なのでさっさと中へと案内する。

「意外と狭いんだね。もうちょっといい部屋に住んでいるのかって思ってたよ」

 自室には色々と調査資料なんかが散乱しているし、足の踏み場がないから辞めておいた方がいいだろう。

「やっぱり棺桶で寝たりするの?」

「この前買い換えたからなぁ……棺桶って言うより木の棺だな。顔の部分がぱかって開くようなタイプ」

「ふーん、なんだかイメージ崩れるよ」

「……」

 この事が親父に知られたらどうなるだろうな。

「で、お茶とコーヒーどっちにする?」

「トマトジュースはあるの?」

「え、ああ…」

 これもまたイメージの一環の為に準備されている。とりあえずイメージを保つために赤い飲み物は必然的にトマトジュースしかないからな。小さい頃から親父にのまされてきたから好物の一つだ。

「ほれ」

 コップになみなみに注いで自分の分を湯のみの中に入れる。

「……そ、それ…」

「ん、どうした」

 信じられないと言った表情、何かは知らないがかなり衝撃を受けているようである。

「ワイングラスは?」

 千華がいいたい事等すぐにわかった。

「……あ、ああ…ちょっと今ワイングラスは割れちゃってないんだよ。いつもはワイングラスで飲んでるから安心しろよ」

「そっか、そうだよね」

「そりゃそうだろ…ははは……はぁ」

 正直、固定イメージを持たせる原因となった吸血鬼を退治したいと思っている。まぁ、もう死んでいるけどな。

「ところでさ、この町の吸血鬼を捕まえたら義人君はどうするの?」

「どうするのってどういう事だよ」

「そのままの意味だよ。だって、悪い吸血鬼を退治する為に来たんだよね」

「ああ」

「用事がすんだら転校しちゃうのかなぁって思ったの」

「うーん、さぁなぁ」

 親父に聞いてみないことにはよくわからないな。人手が足りていないなら俺も手伝わざる負えないだろうけどそうじゃないならこの町に居座る事になるだろう。

「で、どうなの?」

「何とも言えねぇな」

「そっかぁ…」

「どうしてそんな事聞くんだよ」

「そりゃ、義人君とは友達だからだよ。それにあたしの趣味の事を一度も馬鹿にしたことないし、からかったこともない………そして何よりヒーローだからだよ」

「……ヒーロー……ねぇ」

 何一つとしてヒーローっぽい事はやってないと思うけどな。放課後やっていた調査もただの聞きこみだし、新たに事件を防いだというわけでもない。

 ただまぁ、本人と周りの見解は違うようで千華は俺の両手を握って熱っぽく語るのだった。

「だってさ、だってさ、最初あった時も宙に放り投げられたあたしをキャッチしたし、この前の学校占拠した怪しい人たちを一人で倒しちゃったじゃん」

「うーん、そりゃそうだけどな」

 小学生達(装備、海パン一丁)が学校を占拠、それを大人一人(完全武装)が解決するなんて簡単すぎるだろう。

「あたし、大きくなったら義人君を主題として何かお話を考えるよ。そして日曜朝七時くらいから放送するから」

「……そりゃ楽しみだな」

 せっかく女の子が一人暮らしの男子生徒の元へとやってきたというのにそんな話ばっかりで時間が過ぎてしまった。千華を背中に乗せて送り届け、充実した(?)一日は過去のものとなったのだった。


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