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第十九話:ち:深読み

第十九話

 吸血鬼が死んだとき、当然ながらNKKの名簿から名前を消される。寿命以外の場合、出来るだけ死因をはっきりさせるために調査員が死に場所に赴くのだ。その後は吸血鬼の研究員に引き渡されて身体をいじくりまわされて家族の元へ送られる。もっとも、火葬されて骨の状態になって帰るそうだ。

 現代の吸血鬼は昔の吸血鬼の上に成り立っている。まぁ、これは人間の方もそうなんだろうし、最近の吸血鬼は自分が吸血鬼って言う自覚が足りていないとか何とか。ちなみに、人間に前例のない被害を出した吸血鬼は………



 爆発し、俺の衣服は吹っ飛んだ。まぁ、身体が丈夫なだけであって服とかは丈夫じゃないからな。辛うじてパンツがくっついているからいいものを……これが無くなったらモザイクは要るだろ。

 手に握っていたドアノブを虚空に投げつける。そのまま星になってしまった。

「貴様、何者だっ」

 少々おびえた感じの声だった。そりゃそうだろう。仕掛けていた爆弾が爆発したなら普通の人間はそれは言葉で表現できないような状態になっている。しかし、いざ見てみればモザイク一歩手前で何ともない生徒がいるだけだ。

「いやいや、俺は怪しいものじゃないですよ。この時間帯、いつも屋上にやってきて『青空なんて嫌いだよ、バカ野郎』って言っているただの不良生徒です」

 ちなみに今の天気は曇りだ。相手もちらりと上を見て『青空じゃねぇぞ』と目で訴えかけているがそれどころではない。

 物騒な代物(おもちゃではないと思う)を俺に向けたまま、相手は口を開いた。

「両手をあげろ」

「もうやってます」

 既にあげていたりする。用意のいい男なのである。

「口答えするなっ」

「落ち着いてください。本当にただの生徒なんですよ。ほら、俺の脚を見てください……震えているでしょう?」

 相手の視線は俺の不自然に揺れまくっている二つのあんよを見てから納得したようだ。

「じゃあこちらに背中を向けて止まれと言うまで歩いてこい」

 言われた通りに相手に背中を向けてから一歩一歩後ずさる。

「止まれ」

「はい」

 天に突き上げた二つの手を相手に縛られる。まさかこの歳で縛られるとは夢にも思わなかったな。そろそろ頃合いだろう。

「よしっ」

 男はしっかり縛ったつもりなのだろう。何度も何度も確かめてから今度は俺の両足に取り掛かろうとした。

「……ちゃんと縛らないと危ないですよ、おじさん」

 ロープを引きちぎって後は一瞬のすきを見せた相手の鼻っ面に素晴らしいストレートをお見舞いする。ちなみに相手が吸血鬼だったらカウンターを喰らうこと間違いなしである。そういえば昨日、決闘方法が変わったとか何とか電話があった気がする。

「さて、ところでこれからどうするか、だよなぁ…」

 学校を襲った謎の連中を倒した勇敢なる生徒、俺。

「一人で危ない連中に打ち勝つなんてたくましい!彼女にして!」

「ずるい、あたしのものよっ!」

 そんな未来が簡単に予想される。

しかし、潜入調査的な事をしている為に有名になるのは非常にまずい、ケチャップにマヨネーズ、ナツメグ、鷹の爪、からしを少々入れるぐらいまずい。誰かが連絡したのか校門側からサイレンの音がなっているところをみると屋上での爆発音を間違いなく言われるだろう。

 とりあえずのびている男をロープでしっかりと縛り、転落防止用のフェンスにぶら下げておいた。一応、命綱を付けているので安心して欲しい。

「やっぱり逃げないとまずいよなぁ」

 中学生のころにこんな事があったのなら間違いなく顔を出して英雄を気取っていた。

 さっさと人影の少ない裏庭へと飛び降りて近くの窓から侵入。男子トイレに籠る。

「さて、後は事の成り行きを見守る事にするか」



 学校占拠事件は結局頭のおかしい人たちによる犯行だと言う事になった。生徒に被害は出ておらず、俺が気絶させたのが全員。しかし、校舎には結構な傷が残ってしまい屋上は立ち入り禁止、一部破損した壁などにはブルーシートがかけられることとなった。夏休みに入ってから修理するらしい。

 たった二日の臨時休校でそれからまた学校。俺と千華は共に登校していた。

「びっくりしたよ。だって屋上に続く階段がいきなり瓦礫で塞がれて、警察官の人たちと一緒に突入したら義人君、いないんだもん」

「飛び降りたんだよ。あそこで俺がいてもまずいだろ」

「え、なんで」

「そりゃ……」

 説明するのが面倒だ。千華相手にばれたら面倒だの何だの伝わるかどうかも怪しい。一生懸命説明してもきっとその素敵な脳みそで変な理由に改ざんされるはずである。しかし、最近は大体コツを掴んできた。

「ヒーローは姿を隠すものだろ」

「それもそうかぁ」

「それよりごめんな、せっかく作ってくれたマント、台無しにしちまって」

 爆発に巻き込まれたマントは無事ではなかった。まぁ、それを言ったら他の衣服もそうなんだけどな。

「大丈夫だよ。いくらでも作ってあげるって」

「そうか」

「うん、楽しみにしててね」

 てっきり怒られるとばかり思っていたがよかった。でも、変な話だよなぁ……黒幕とかそんなのがいるんじゃないんだろうか。


予定話数は30。つまりあと約10話分。ちゃんと終わることができるのか、それとも今みたいにぐだぐだで幕を引くのか……次回、偶数話です。

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