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第十一話:ち:青木家の人々

第十一話

 人間、生きる事に復習ってものが必要だ。此処では以前ひどい目にあったから行くのはやめておこうとか、此処のお姉ちゃんは優しかったからもいっかい行こうとかそんなのだ。

 俺の名前は大仁義人。日本吸血鬼委員会、NKKから羽津町で起こっている事件の調査と収束の為に派遣された吸血鬼なのさ。特技は空を飛ぶ事だったが、他の吸血鬼も飛んでいる為に特別とは言えない。新たなる俺の特技は『舌先を鼻先にくっつけることが出来る』だ。

 そして羽津吸血鬼事件の調査を手伝ってくれる事になった相棒が一人いる。名前を青木千華と言って襲われているところを俺が助け、協力者になってくれたのだ。

 ただ、この青木千華と言う人物は世間一般常識である『やばい』を連発するような女子高生ではなかった。

「日曜朝七時前には必ず起きてるよ!だって戦隊ヒーローとか心に余裕を持ってみたいじゃん」

 そんな女子高生。いや、いるかもしれないけどね。

「あ、そうだ義人君。中間テストも終わったからうちに来るといいよ」

 言われた場所は羽津町と隣町の境目ぐらいの場所だった。最後の被害者が出た場所で、今では向こうも警戒しているのか千華を襲ってから行動はない。ただ、吸血鬼の血の匂いが時折風に乗って俺の鼻まで運ばれてくるのでこの町にまだいるのだろう。

「え?ああ……」

「家族が義人君に会いたいんだってさ」

 青木千華の家に招待された事はこれまでに何度かあった。しかし、家族全員で俺を迎えてくれると言うのにちょっとだけ驚きながらも承諾しておいた。晩飯の準備までしてくれるらしい。

「このまま行こうよ。さ、飛んで」

「あ、ああ…」

 そしてやってきたわけだ。まー、なんというか……実に異様な光景だった。

 カチャカチャという音が部屋中に鳴り響いており、千華の家族が持っているものは様々な色を併せ持った玩具、ルービックキューブだ。

「一面」

「二面」

「三面」

「四面」

「六面…く、駄目だ。五面達成は難しいっ」

 そんなことを言って男泣きをしているのは多分、千華の父親だろう。

「パパ、めげちゃいや」

「そうよ、あなた」

「そうじゃぞ」

「諦めなければ何とかなるわ」

 やったことないんだけど、あれって五面だけとかできたっけか。まぁ、そんな事はどうだっていい。家族全員でかちゃかちゃやっている光景なんて不気味で見ていられない。

「みんな、義人君連れて来たよ」

 千華の言葉で俺がいた事に気が付いたのか一斉にこっちを向いた。正直、怖かった。

「おお、噂の義人君か」

「若人じゃなぁ」

 爺さんとおっさんが俺の右手と左手を掴んで上下に振っている。どうすればいいのか対処に困った。

「あ、ほらほら、義人君が困ってるよ」

「おお、すまんなぁ」

「千華が男を連れてくるからどんな覆面ヒーローかと思ったが普通の男子生徒で安心したよ」

「ヒーローが大好きだとかで困っていたのよ」

 よく言えば親しく、悪く言えば馴れ馴れしい家族である。しかし、家族の間でも問題になっていたんだな……ん?

 俺の股上ぐらいを触っている女の子を発見した。

「あ、この子はあたしの妹。由香、挨拶してちょうだい」

「青木由香、十二歳です。変身ベルトはどこですか?」

「えーっとね……」

 どういえばいいのだろう。というか、変身ベルトって何だろうか?

「あ、ベルトじゃなくて眼鏡とかスプーンとかで変身するんですね?」

「あー……」

 千華の方へと助けを求める。アイコンタクトで伝わったようで口を開いてくれた。

「あのね、由香、義人君は……」

 青木由香と名乗った少女の耳元で何かを呟く。少女は顔を真っ赤に染めると部屋から出て行ってしまった。

「千華、何言ったんだよ……」

「何?千華?呼び捨てだと…」

 父親の表情がさっと変わった。呼び捨てがまずかったらしい。

「あ、いや、青木さん、妹さんに何言ったのかな?」

「いや、呼び捨てなんて気にしないでくれ。まさかそこまで親密だったとはな。母さん、花婿が来てくれたんだ。酒を出してくれ!」

 奥さんはこっくりと頷くと何かを決意したまなざしで旦那を見ていた。

「わかったわ」

「よかったのー、千華」

「え、あ、何か勘違いしてるみたいだけど義人君はそんなんじゃないから」

 そんなんじゃないから……ちょっとだけ俺の少年袋が傷ついたりした。確かにそんなんじゃないけどな。はは、はぁ……。

 いつかそんなんだよと言ってもらいたいものではあるな。


念のためですが、奇数話と偶数話で話が違ってきます。どうでもいい?まぁ、そうでしょう。ともかく、変わってきます。

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