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第一話

第一話

 日本吸血鬼協会。略してNKK……惜しい、実に惜しい。Nと最後のKの間がエッチ…いや、エイチだったら何となくよかったんだけどな。

 ともかく、俺はこのNKKに呼び出された。なぜか、それは俺が吸血鬼だからである。残念ながら、横文字のかっこいい名前ではない。



 大仁義人、すっごく日本人臭い名前だろう。



「親父、今日から高校二年生なんだぜ…早速サボりってちょっと気が引けるだろ」

「…吸血鬼の事情だ。まず、親父ではなくパパと呼べ、パパと。親父なんて昭和レベルの呼び方だろう」

 親父の名前は大仁正弘……外国行ったときは無理してマーロ四世とか名乗っているそうだ……ドラキュラにあこがれているそうで自宅(日本家屋ね)でもマント着用、風呂上がりはバスローブと言うちぐはぐ感いっぱいの事をやっている。顔立ちもほっそりとしておらず、縄文系の四角い顔である。

「それで親父、わざわざ此処に呼び出したのはどういった理由だよ」

 NKKの理事をしている俺の親父。昼間に行動している事は少なく、人が寝静まった時に行動している為、近所の人たちからは無職と思われている。さらには妻の保険金で生活していると勘違いまでされているという可哀想な親父である。

「実は羽津町というところで吸血鬼関連の事件が起こっているそうだ。発見次第拘束し、協会に登録させるか消滅させろ」

 親父、そして大体の日本人吸血鬼が所属しているNKK。これは日本籍の吸血鬼が作りだしたものだそうで、日本の吸血鬼の管理、貧血対策、健康管理、他様々な事を取り仕切っている。

 もちろん、これら協会は勝手にやっている為に知らないと言う吸血鬼もたまにはいる。そういう場合は極力協会に入るように促すわけだ。まぁ、残念ながら好き放題人間の血を飲んでいるアホな吸血鬼には制裁が下される。青空駐車している人だってずっと放置されているわけじゃないからな………警察に電話してやったことも何回かあるけど、放置している奴が悪い。

「俺を派遣するってことだろ」

「そうだ」

「自分で言うのも何だけど俺、弱いぜ」

 人間に比べると強い、しかし、相手が吸血鬼だったらそこまで強いと言うわけではない。

「パパがお前の歳の頃には一匹狼で教会の討伐部隊を返り討ちにしていたぞ」

 誇らしげにそういう俺の親父、年齢不詳。見た目は四十後半ぐらいだ。

「あの頃は幕府が荒れていて大変だったな」

「………」

 いつの幕府だよ。

「ともかく、お前は平和すぎる世の中に生まれてきてしまったんだ。パパもお前には平和に暮らしてもらいたいと思ってる」

「じゃあこのまま生活させてくれよ」

「しかしな、世の中にはやりたくないからやらないとか通じない事があるんだぞ。これもその一つ。お前は吸血鬼としてルールを破る仲間を戒めなければならない。腕っ節でなくてもいい、説得してくれるだけでもいいのだ」

 正論である。悪い事をした者は更生の余地があるのなら更生させ、出来ないならお仕置きが必要と言う事なのだろう。俺も一度冤罪で吸血鬼どもにふるぼっこの刑を受けたものだ…。

「でも、俺、転校するってことだろ」

「そうだ」

「転校したことないから不安だ」

「何、心配するな。一人暮らしがしたいとか言っていたからちゃんとアパートを借りてやったぞ。本当は古城がよかったんだろうが…」

「いや、日本に古城はないと思う」

 あったとしても親父が想像しているような西洋のものではなく、もののふ達が集う天守閣的なものに違いない。

「ともかくだ、明日には現地入りをしてもらう。一カ月に一人襲う程度でいいのに一週間二人のペースで襲われている。中には血が足りなくなって輸血までしてもらった人が出たそうだ」

「……わかったよ、行くよ。行けばいいんだろう」

「そうだ、それでいい」

 机の中から茶封筒が取り出される。

「何だこれ」

「協会からの正当な報酬だ。危険度低と言えど、相手は吸血鬼。襲われる可能性もある危険な仕事だ」

「でも、就職している人とかじゃないともらえないとか言ってなかったか」

「ああ、そうだな。普通はもらえないが特別だ」

 俺は差し出された茶封筒を手に取り中身が気になった。

「開けても構わんぞ」

「……」

 茶封筒の中身を確認すると図書券がたくさん詰まっていた。

「小学生、中学生、高校生、そして、大学生に大学院生。自分で勉強するために本が欲しくなる時もあるだろう、高校生と言う事でさすがに現金はやめさせてもらった」

 書類の入ったバインダー付きのファイル、カメラ等もついでに手渡された。

「今日中にお世話になった人に挨拶をしておくように」

「わかったよ」

 こっちでお世話になった人なんてそれこそ小学生の頃の担任や中学の担任、色々といる。それに友達にも挨拶しておかないといけないのに今日中で間に合うんだろうか。

「ん、あれ、親父…現地入りって今日の日付になってるぞ」

 現地入りスケジュールには今日の日付がしっかりと刻まれていた。

「お、そうか……じゃあ悪いな、今すぐ行ってくれ。飛んでいくなら気付かれずに飛んで行けよ。あと、日焼け止めとサングラスを忘れるな。現地についたら報告を忘れるなよ」

「………」

 こうして俺は見ず知らずの土地に送り込まれたのであった。


不定期連載です。思いついた時に投稿していくと思います。質問、意見等あればメッセージ等でお願いします。

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