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【第6話:作者が執筆をサボった日(あるいは……主人公が棒人間に成り果てた日)】

読者の皆様、こんにちは。締切に追われすぎて、ついに脳内で歴史と生物学が融合し始めた作者です。

皆さんは歴史の真実をご存知でしょうか? そう、古代ローマの英雄ジュリアス・シーザーと、絶世の美女クレオパトラ。そして.........自らの骨を折って爪として飛び出させる戦闘民族『ウルヴァリン・ガエル(毛蛙)』の隠された関係性を。

一見なんの繋がりもないこの3つですが、実は完璧な一本の線で繋がっているのです。

クレオパトラのあの美貌の秘訣は、なんと『ウルヴァリン・ガエルの自己骨折・超回復メソッド』を取り入れた究極のスキンケアでした。細胞を一度破壊し、コラーゲンとして再生させるというマッドサイエンス美容法です。

それに気づいたシーザーは「俺もその美容法で若返りたい!」と真似しようとしました。しかし、元老院のメンバーに「やべぇ、皇帝が両生類のミュータントになろうとしてる!」と勘違いされ、結果的に23回も刺されて暗殺されてしまったのです!

彼の最後の言葉「ブルータス、お前もか(お前もカエルになりたいのか)」は、あまりにも有名ですよね。

.........で、この壮大な歴史ミステリーが本編と何の関係があるのかって?

全くありません!!(ドンッ!)

ただ、作者が「ウルヴァリン・ガエルのように自らのプライド(画力)をへし折ってでも、締切を生き延びるために棒人間を描いた」ということを伝えたかっただけです!

それでは、骨身を削った(手抜きの)本編をお楽しみください!


星凛高校の校門前で巻き起こった戦慄の事件。ロックスターの幽霊である父・竜二が、巨大な卵焼きバルーンと化して成層圏の彼方へと消え去った後......黒瀬明くろせ・あきらは絶望の涙と共に意識を失った。

だが、再び彼が目を覚ました時...........マルチバース規模の絶対的崩壊が彼を待ち受けていた。

「...................」

明はパチパチと瞬きをした。(厳密に言えば、今の彼には瞬きをするための『まぶた』すら存在していなかったのだが)。

彼はうつむき、自分の手を見た。

そこにあったのは、思春期の少年の健康的な肉体ではない。たった『一本の直線』から、指の代わりとして3本の短い線が枝分かれしているだけの物体!

そう、彼の体は、信じられないほど適当に描かれた『棒人間スティック・フィギュア』に成り果てていたのだ!

着ていたはずの星凛高校の制服は跡形もなく消え失せ、代わりに胸のど真ん中に殴り書きの文字が張り付いている。

『学生服(描くのめんどい)』

「うおぉぉぉい!! 俺の体に何が起きてんだよォォッ!!」

棒人間と化した明は絶叫した。しかし、彼の口から出た声は、フォントすら未設定のままの『吹き出し(スピーチ・バブル)』として空中に浮かび上がっただけだった。しかもご丁寧に、吹き出しの外側には修正液の白いダマがべっとりとこびりついている!

明は慌てて周囲を見渡した。

美麗なディテールで描かれていたはずの星凛高校の校舎も、舞い散る桜の木も........今や全てが『真っ白な背景』と同化していた!

空間にあるのは、定規を使わずに引かれた歪なスピード線が数本と、ミミズが這ったような字で書かれた立て札だけ。

『学校の背景(各自で壮大に脳内補完すること)』

「きゃあああああっ!! 私の体が!! 私の黄金比率のプロポーションがどこかに消えちゃった!! なんで私の胸が、歪な二つの丸で済まされてるのよぉぉ!!」

絶叫の主は、学園のアイドル・橘陽菜だった。

しかし今の彼女は、丸い顔に棒の体、そしてサラサラのロングヘアーの代わりに『ぐちゃぐちゃの落書き線』が頭に乗っているだけのクリーチャーと化していた。極めつけに、彼女の額には『ヤンデレ(?)ヒロイン』という文字が直接書き込まれている。

「あっ! アキラくん! もしかしてこれ、あの宇宙人悪霊の仕業じゃない!? 奴がこの世界のインクと光の陰影を全部吸い取っちゃったのよ!!」

陽菜(棒人間)は、指の代わりの直線を美月の方へと突きつけた。

美月——16歳の姿になったオカン——もまた、粗い鉛筆のラフスケッチのような状態になっていた。

しかし.........彼女は全くパニックに陥っていなかった。それどころか、腕の代わりの二本の直線で自分の丸い顔を撫で回し、大興奮で震えている。

「おおおっ! これって..........ペン入れ前の『ネーム』状態じゃない!!」

美月はぴょんぴょんと飛び跳ねた。(傍から見ると、ぐちゃぐちゃの線がバウンドしているようにしか見えない)。

「しかもこれ、完全なアナログ原稿よ! 見てよこの消しゴムの跡! ページの端のインクの汚れなんてクラシックの極み! 『Ctrl+Z(元に戻す)』が使えない伝統的な漫画芸術! 作者の焦りと魂の叫びがダイレクトに伝わってくるわ!」

「オカン! 今はアナログ芸術を絶賛してる場合じゃねえ! 世界が白紙に戻ってんだよ! あと左下にこぼれてるコーヒーの染みは何なんだよ! 汚えな!!」明はツッコミを入れた。

その時だった。真っ白な空が突如として震動し、巨大な『テキストボックス』が上空からドスンと降ってきた。

それと同時に、人を小馬鹿にしたようなタイプライターのSEが鳴り響く。

【 神(または作者)からのシステムメッセージ: 】

『文句ばっかり言うな、お前ら! 今日はペン入れして色を塗ってる暇なんかないんだよ! 現実世界がどれだけ修羅場か分かってんのか! こっちは12月5日締切の2Dアニメーション・プロジェクトに追われて発狂寸前なんだよッ! その上、『JUST HiT』の企画書用のモックアップのトーンも調整して編集者に見せなきゃいけないんだぞ!』

「あれっ..........『JUST HiT』って、お母さんが描いてる漫画のタイトルじゃない........?」美月は首を傾げた。(頭の上に手書きの『?』マークが浮かぶ)。

作者のテキストボックスは、さらに怒りに任せて文字を打ち出し続けた。

【 神(または作者)の愚痴・続き: 】

『それだけじゃない! 最近のNouTubeのアルゴリズムがどれだけクソか知ってるか!? ちょっと何かしただけで即動画BAN! すぐに黄色マーク(収益化制限)をつけられて理不尽に収益をカットされる! もうメンタル崩壊しそうだから、作品を投稿するプラットフォームの移行も考えなきゃいけない! コンテンツクリエイターの人生は過酷なんだよォ! だ・か・ら! 今日のところはお前ら、予算と時間の節約のために棒人間で我慢しろ!』

「はぁぁぁぁ!? NouTubeの収益剥奪の八つ当たりを俺たちにしてんじゃねえよ!! なにが2Dアニメの締切だ、読者に対するお前の責任感はどこに消えたんだよ!!」明は空に向かって怒鳴り散らした。

「アキラくん........神様が『ゆーちゅーぶ』のことでお怒りよ? ゆーちゅーぶって何? 新興宗教?」陽菜(棒人間)は膝から崩れ落ち、テキストボックスに向かって必死に除霊の祈りを捧げ始めた。

【 神(または作者): 】

『作画崩壊の埋め合わせとして、今日は特別に物語の『最高潮ピーク』をサービスしてやる! これで続きを気になってくれる読者が増えるはずだ! さあ.......主人公の心を揺さぶる、ボス級の新ヒロインの登場だァァァッ!!』

「待て! やめろ! オカンが若返って、親父が卵焼きの幽霊になって、ファンがヤンデレ化した時点で俺の人生はもうキャパオーバーなんだよ! これ以上変なクリーチャーを増やすなァァッ!!」

だが、手遅れだった。

明たちの輪のど真ん中に、(定規も使わずに引かれた粗末な)スポットライトの光が降り注ぐ。

そこに、誰かのシルエットが浮かび上がった!

(空中に『ドン! ドン! ドン! ドン!』という謎の書き文字エフェクトが浮かび上がる)。

砂煙(モクモクとした適当な雲の絵)が晴れると、そこに現れたのは.........

太い油性ペンで乱暴に『ベタ塗り』された、真っ黒なスライムだった。インクが枠線からはみ出しまくっている。

そして、その顔(?)のど真ん中には、本物の『黄色い付箋ポストイット』がペタッと貼られ、こう書かれていた。

[ 超絶美少女、爆乳、ツンデレ、幼い頃から主人公に片思いしている幼馴染 ]

※追記:キャラクターデザイン考えるのがめんどくさかったので、来週までお待ち下さい。

「ふざけんなァァァァァァッ!!」明の絶叫と共に、空中の吹き出しが粉々に砕け散った。「付箋一枚で新キャラクターを済ませる作者がいるかァァッ!! しかも『巨乳のツンデレ幼馴染』って設定、使い古されたテンプレの極みだろ! せめてデザイン完成させてから登場させろや!!」

【 神(または作者): 】

『チッチッチッ、慌てるな主人公。まずは彼女の衝撃的な登場セリフを聞け.........。新ヒロイン、アクション!』

謎の黒塗りの塊がわずかに蠢くと、そこからフワリと吹き出しが浮かび上がった。

「アキラ...........このバカ.......10年も離れ離れになって......タイ南部風カレー屋での、あの幼稚園の時の約束...........忘れちゃったの.........? アキラが言ったじゃない.............大人になったら、あなたのアツアツの『グリーンカレー』の中に、毎日私の『アレ』を入れていいって........!」

「はぁぁぁぁぁぁ!? なんだそのイカれた約束は!! なんで日本の一般家庭の回想シーンにタイ南部風のカレー屋が出てくんだよ!! そして『アレ』って何だ! 卑猥な想像を掻き立てるような伏字を使うなァァ!!」明は自分の棒人間の頭を抱え込んだ。

それを聞いた陽菜(棒人間)はショックで目を剥いた。「グ、グリーンカレー..........アレ.......!? まさかその女、宇宙から飛来したアキラくんの現地妻!? 許さないわよ!!」

美月(棒人間)は目を輝かせた。「おおおおっ! ドロドロの三角関係! しかもお母さんの若返りの原因である『量子タイムトラベル』の要素を、まさかのグリーンカレーに絡めてくるなんて! なんて奥深いプロットなの! 急いで資料用にメモしなきゃ!」

【 神(または作者): 】

『フッフッフ............『アレ』の正体が何なのか、気になって夜も眠れないだろう! 果たして新ヒロインの素顔は!? そして、成層圏に飛んでいった竜二(父)の霊は帰ってくるのか!? 続きは次回の更新で.........! あ、作者が12月5日までにアニメーションを完成させられるように、評価とブックマーク登録よろしくな! じゃ、アデュー!』

「待てェェェェ!! その前に背景を最後まで描き終わらせろォォォォン!!」

明(棒人間)が白紙の空とコーヒーの染み、そして謎の黒塗りの塊に向かって絶叫し続けるカットを最後に..........。

今週のページは、なんの前触れもなくブツリと途切れていた。

——第6話(究極の手抜き回)・完。

次回更新をお楽しみに!(※作者のスケジュールに空きがあれば)



最後までお読みいただき、ありがとうございます!

棒人間だらけの狂気の第6話、いかがだったでしょうか。

さて、前書きでお話しした「シーザーとクレオパトラとウルヴァリン・ガエル」の理論ですが、実はWeb小説界隈にも同じ法則が当てはまります。

ウルヴァリン・ガエルは生き残るために骨を折りますが、作者は生き残るために【読者からの評価とブックマーク】を必要としているのです!

もし皆さんがこのまま画面を閉じてしまったら、作者のガラスのハートはウルヴァリン・ガエルの骨のようにバキバキに折れてしまいます。しかもカエルと違って、折れてもカッコいい爪は生えてきません! ただ部屋の隅で体育座りして泣くだけです!

ですので、どうかクレオパトラのような慈愛の心で、下にある【☆☆☆☆☆】をポチッと押して【★★★★★】にしていただき、ブックマークボタンをターンッ!と叩いてください!

皆さんのそのワンクリックが、シーザーを暗殺から救い、作者を棒人間地獄から救い出すのです!

どうか、どうか清き星とブクマを!

次回の更新(とキャラクターのまともな作画)でお会いしましょう!

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