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2人きり

 私は帰宅して早々咲夜と共に映画を見ることになる。ちなみに今回の映画はホラー映画。スプラッタ系の血や内臓飛び交うものだ。私は厨二病発症時にグロ耐性を得てしまったので特に恐怖は感じなかった。

 心ゆくまで映画を楽しんでいると咲夜がこちらに寄りかかってくる。

──重い。

 対抗してこちらからも体重をかけてみる。すると彼はびっくりしたような顔をした。

──ふふん。

 勝ったと思っていると咲夜が寄りかかるのをやめ、太ももに頭を乗せる。

 これは膝枕というやつではないか。なぜだろう。咲夜が甘えてきている?

 どうするのが正解か恋愛経験経験もなく分からない。とりあえず私はサラサラの髪を撫でておく。

──それにしても触り心地の良い髪だな。

 触っているうちに手触りが良く手が止まらなくなってしまった。

「蓮、くすぐったい」

 唐突に咲夜が色っぽい声を出す。私は自らの目がガン決まっていくのを感じた。

──何だろう。既視感があるような…。

 私は映画そっちのけで脳内の記憶ホォルダを大捜索していく。あれも違うから間違うと記憶を掘り進めていくととある記憶に行き着いた。

 あれは中学生の時だ。女オタクの半分は一度は通るであろう道、そうBとLのやつだ。

──そうだ。あの時の漫画の受けの顔に似てるんだ。

 くだらないことを考えてしまった。邪な視線を逸らし、きちんとテレビの画面に目を向けた。

 頭を撫でるのをやめて咲夜は少し残念そうだ。

 仕方ない。これをやってしまうと邪念が湧いてくるのだ。

 

「あのさ」

「何?」

「蓮って警戒心ってものが無いよね」

 警戒心?

「アイツだって蓮のことを狙っているかもしれないよ?」

「私みたいな地味な女子が?そんなわけないじゃん」

 大笑いしているとふと咲夜が真剣な顔になった。

「そんなに自分を卑下しないでよ。蓮はとっても魅力的なのに」

「そう言われても」

──自分が1番分かっている…私は何の取り柄もないし、可愛くもない。地味で何の面白みもない女だって。

 魅力的な女の子っていうのは美人で明るくて、誰にでも優しい。お日様みたいに眩しくて、ぽかぽかと癒される人のことを言うのだと思う。──そう、お姉ちゃんみたいに。

「私は勘違いしないよ。だって、隣にはずっともっとすごい人がいたんだもん」

 咲夜は悲しそうな顔をした。

「でも僕は彼女より君の方が大好きだよ」

「…ありがとう」

 お世辞でも嬉しいよ。

 お礼に頭をわしゃわしゃっと撫でておく。くすぐったそうに動く姿は大型犬みたいで可愛かった。


「もう、蓮って絶対分かってない!僕がいつもどれだけ我慢させられているか」

 何かにぷんすか怒っている顔も可愛く思えてきた。

 へらへらーと間抜け面を浮かべていると頰に咲夜の手のひらが触れた。

「例えば、こう言う時僕は君にキスしたいなって思ってる」

 衝撃の発言に心臓が跳ねる。

──これは黒百合バージョンの咲夜!?

 以前、咲夜は唐突に豹変することがあった。その時の少し病んでいるような余裕のない状態を黒百合verと呼んでいる。それが来てしまったのか!?


「蓮ってばいつも無防備だし。もう知ってるよね?力では僕に敵わないって」

 そうだあの時私は咲夜の手を振り解くことができなかった。

 あーこれは黒百合…。

「今日も何の警戒心もなく誰もいない部屋に僕を招き入れるし。ねえ、今僕たち2人きりだよね。なら何をしてもバレない」

──えっ。

 景色が変わり、私はソファの上に体が押し倒される。上に覆い重なるように咲夜が跨っていた。

 そして彼は制服のボタンに手をかけた。

「な、さくやっ。どうしたの」

 胸元に指が触れる。ブラウスのボタンが一つ一つはずされ胸元が露わになった。

「ちょっと待って!」

 両手で止めようとするも、余裕で片手で押さえつけられてしまう。

「安心して?手は出さないよ。蓮が僕のものだっていう印を付けるだけだから」

 彼の唇が鎖骨の上に触れる。吸われるような感覚があった後に彼は顔を上げた。

 相変わらず整っている綺麗な顔立ちをしていた。だけどいつもとは違うどこか影のある表情をしている。

「蓮は誰のものにもならないでね」

 どこか寂しげな笑みを浮かべながら彼は私の体を抱きしめた。



 解放された後鏡を見ると胸元にくっきりと跡がついていた。それもブラウスで隠れないギリギリの位置にあった。

 私は怒った。それはもう盛大に。

「咲夜、誓約書を作ったからここに名前を書いて!」

「僕は今後一切柏木蓮に対してキス、押し倒す、その他センシティブなことは行いません?これってちょっと厳しくないかな」

「そんな事ありません!ここに名前書いてくれないんならもうこの家には入れないからね!それに2人きりには絶対にならないから」

 そう言うと、咲夜は渋々といったように名前を書いた。

 これでいい。これさえあればきっと私の貞操は守られるに違いない。

 私も咲夜のことは嫌いではない。だから何とか今後も付き合っていける方法を模索していきたいのだ。

 それがこの誓約書である。


「じゃあ僕からも条件を出させてよ!」

 咲夜が何か言う。

「…言ってみて」

「僕がダメなら蓮も僕以外の他のどんな男ともそーゆー事はしないでね?」

 どんなお願いが来るかと思ったがそんな簡単な条件が出されるとは。言われなくとも私に恋人などできる気配は全くない。

「分かった。じゃあ約束するよ」

「もし破ったら、この誓約書の内容は無効だからね!」

「分かった分かった」

 私は誓約書に文章を付け足す。

──もし咲夜との約束を破った場合この誓約書の内容は無効とする。


 しかし、この文章に意味はあるのか。ニコニコと穏やかな笑みを浮かべている彼であるが、その真意は図れなかった。

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