生徒会長
俺は散らばったプリントを一枚ずつ集めながら提案をした。先輩は小声で「ありがと」と言いながら一緒にプリントを集めた。
この顔、どこかで見たことがあるような……
俺は特に気にせず、プリントを集め終えて先輩に声をかける。
「集め終わりましたし、保健室は一人で行けますか?」
「あ、うん。ありがと……」
先輩が立ち上がると、膝からがくっと落ちて床に手をついて倒れた。
「あ、あれ?」
先輩は信じられないように自分の足を見つめていた。
無理そうだな。
俺は先輩の肩を担いで、立ち上がらせた。
「一緒に行きましょ」
俺がそう提案すると、コクっと小さく頷いて、一歩一歩ゆっくりと保健室に向かった。
先輩の頬には、涙が流れていて、俺は居心地が悪く目線を外側に向けた。
「……こんなんじゃ、生徒会長になれないよね」
そう小さく震えた声で呟き、俺は思わず先輩のほうに目を向けた。
この顔。そうだ、なんで気づかなかったんだ。この人、生徒会長に立候補してた人だ。
「そんなことないですよ、先輩が頑張っているのはわかりますし」
さっきのプリントをのぞき見してしまった。
『生徒会選挙 公約資料』
そう書かれていた。
「……見た?」
先輩が涙をブレザーで拭きながら、小さく聞いてきた。
「あ、いや……ちょっとだけ」
「……恥ずかしい」
先輩はふっと笑った。
「でも、すごいと思いますよ。生徒会長に立候補するなんて」
「そうかな……」
顔を綻ばせたが、すぐに顔を俯けてしまう。
「でも、私なんかじゃ無理かも」
「なんでですか?」
「だって、こんなドジだし」
先輩は自分の足を見た。
「転んだくらいで泣いちゃうし」
「……それは、誰でもそうですよ」
俺は真剣に言った。
「痛いものは痛いし、泣くのは恥ずかしいことじゃないですよ」
場を和ませるように笑いながら言うと、先輩は俺を見た。その目には、また涙が溜まっていた。
「優しいんだね」
「いや、別に……」
俺は照れ隠しに視線を逸らした。
やがて、保健室に着いた。
「すみませーん」
ドアを開けると、養護の先生が驚いたようにこちらを向いた。
「あら、どうしたの?」
「階段で転んで、足を怪我したみたいで」
「まあ、大変。こっちにおいで」
先生が先輩を診察し始めた。
俺は、帰ろうと保健室の扉を開こうと手をかけると――
「――ちょっと待って」
先輩が俺に声をかけてきた。俺はびっくりして「あ、はい……」と反射的に返事をして、保健室の椅子に腰を掛けた。
なんで呼び止められたんだろう。
「あのね」
先輩は診察されながら少し恥ずかしそうに言う。
「……私、佐々木恵那。二年生。君は?」
「水原大悟。一年です」
「水原くん……覚えておくね」
恵那先輩はニコッと笑った。先輩の顔には先ほどの涙はもう無く、満面の笑みが広がっている。
「あ、それと」
「はい?」
「生徒会、興味ない?」
「……え?」
突然の勧誘に、俺は言葉を失った。
「こういう優しい人、生徒会に欲しいんだよね」
「いや、でも俺なんもできないですし」
「じゃあ、私が生徒会長になったら入ってよ」
「ええ……」
どうしよう、実際時間はあるけど。なんか生徒会って堅いイメージあるしな。
俺が悩んだ末に出した結論。
「まあ、当選したら……」
そう答えると、なぜか先輩は「絶対入れるから」と意気込んでしまった。
まあ、当選すればの話だ。この高校の生徒会長の座を狙っている人は多いらしいし、大丈夫だろ。
「よし、これで大丈夫ね」
「ありがとうございます」
先生が処置をし終わると、先輩は元気よくお礼をして一緒に保健室を出た。
「じゃあ私は生徒会室に戻るから、私が当選したらよろしくね水原くん」
「わかりましたよ……」
俺は冷たくそう返し、恵那先輩に手を振って学校を後にした。
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