残念な友達
翌日の学校。
俺は学校につくと、いつも通り席に座る。廊下側の窓際の真ん中あたりの席。目立たず、かといって隅すぎない。俺にぴったりの場所だ。
すると、その矢先。前の席の男から話しかけられた。
「おはよう、大悟」
「あぁ、おはよう。凛空」
こいつの名前は柳原凛空。俺の数少ない友達の一人だ。
凛とした瞳に整った顔立ち。そして上品な服装に話し方。この男はこの高校だけでなく、他校からもよく声を掛けられるレベルのいわゆるモテ男だ。
実際なんでこいつと友達になれたのかはよくわからない。
一年のころからなぜかよく席が前後になったり隣になったりと、運がいいのか悪いのかわからないが席替えのたびにこいつが近くにいたせいだろう。
昼飯や移動教室など、学校生活では大体こいつと一緒にいる。
周りからはそのせいで凛空がいろいろ言われているらしいが、関わりたい人と関わっているだけの一点張りをしているらしい。友達思いのいいやつだ。
「なんか今日眠そうじゃない?」
「ああ、まぁちょっとな」
「また小説でも読んでいたのかい?」
図星だ。凛空は妙に鋭いところがある。前に優とアイコンタクトを取っているところをみられて危うくこの関係がバレそうになった。
「まぁ、そんなとこ」
「やはりか、気を付けないと駄目だよ」
「そういう凛空は昨日何してたんだよ」
「まあちょっとえっちなゲームをね」
ふふっと優しく微笑んだ。俺が男じゃなかったら惚れていただろう。
「え、ん?」
俺は思わず耳を疑った。
いまこいつ、なんつった?
「え? いや、エロゲというものを嗜んでいたのだけれど」
「……凛空、そういうのは人に言うものじゃないんだぞ」
凛空に真剣な眼差しで、諭すように教えた。
凛空の発言で近くにいた女子のクラスメイトが、『え、何言ってんのこいつ……』とドン引きしたような目線で見てきている。
「え? そうなの?」
凛空は驚いたように目を見開いた。
こいつはこういう常識外れなところがなければ完璧なやつだ。
「あと、エロゲはR18だ。お前にはまだ早い」
「たしかにそうだったね、でも7000円も出したし……」
7000円も出したのかよ!
クラスの女子の目線がさらに冷たくなるのを感じ、ため息交じりに話題を変えた。
「……そういえば次いつ天体観測行くんだっけ」
「お、ついに大悟も星に興味を持ち始めたか、いいことだね。実は今週の週末だと星空指数がいいから行こうと思っているんだけど一緒に行く?」
いやいや、興味はあまりないけど。凛空から天体観測はよく誘われるし、たまに行くのもいいかもしれない。
「うーん。週末は予定あるし今度行こうぜ」
「わかった。じゃあ今度行こう」
週末は優が暇だから遊びたいといわれていたので、今週末は無理だ。
「さんきゅ」
俺が頬杖をついて軽く返事をした。すると――
「おはよう」
教室の入口から、綺麗な透き通った声が響くとクラスメイトの視線がそこ一点に集まる。
優だ。
友達が「おはよ」と挨拶を返し始め、一気に優の周りが友達に固められた。
本当に、昨夜あんなに話していたのが嘘みたいだ。優は、まるで朝の光を纏ったかのように、周囲に挨拶を返しながら、自分の席、俺の隣の席にに向かって歩いてくる。
そして座る瞬間、ふと優と目が合った。
彼女は周囲の喧騒や、自分を囲む友達には気づかれないよう、ほんの一瞬だけ、小さく微笑んで見せた。
それは、昨夜の公園の優だけが見せる、秘密の、心の通い合ったような笑顔だった。
俺は慌てて視線を外側に向けた。
少しして優のほうをみると、何事もなかったかのように、いつもの完璧な笑顔に戻り、席に着いていた。
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