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読書仲間

「はぁ、どうしよう。女子の喧嘩って結構めんどくさいんだよね」


 会った瞬間からいつものような相談が始まった。


 俺はコンビニで買ってきていた、紙パックのミルクティーを彼女に渡すと「ありがと」と小さく呟いて受け取り、また話を続ける。


「なんかインスタとかのフォローも解除されちゃったらしくてさ」


「そうなんだ。最近あの子一人でいること多くなってたからそんな気はしてたけどね」


 この時間は大体が彼女の愚痴だったり、雑談、たまに相談だったりをされる。彼女曰く『なんか大悟くんって、こういう話しても話す相手いなさそうだから別に話してもいい』とのこと。


 俺を何だと思ってるんだ、友達は確かに少ないほうだけど。


 優とここで話すのは楽しい。たまに相談事で彼女の欲しい言葉をかけられなかったときに、少しだけ不機嫌になるのは嫌なところだけど。


「最近大悟くんは学校どう?」


 相談事が終わり、雑談コーナーに差し掛かった。


「うーんいつも通りかな、特にいいことも悪いこともないよ」


「まぁそうだよね、私たちのグループにいれてあげよっか!」


「遠慮しておくよ……ここで優と話すだけでおなかいっぱいだからね」


 彼女の言っているグループというのはいわゆる「陽キャ」ってやつで、男女6人くらいでいつも一緒にいる、クラスの中心人物の集まりだ。


 俺なんかが入っても確実に浮く。


「大悟くんおもしろいからいけるよ」


「それ、優の前だから言えることで、あっちのグループに入ったら完全に空気になる自信あるけど」


 鼻で笑いながらそう答える。


 優は実際話しやすい、学校の時の高校生の枠を超えた、とてつもない輝きを放っている優だと受け答えすらできなくなるだろうけど、公園で会う時の普通の高校生らしい雰囲気の優なら大歓迎だ。


 公園でこうやって気軽に話すのにもかなり時間を費やした。


 俺がまずまずそこまで人と話すのが得意じゃなかったし、それもクラスの人気者となると慣れるのはかなり手間取った。


「そうかな。まぁ契約のこともあるしね」


 軽い口調で優はそう言い、ミルクティーを一口飲んだ。

 

 契約。それは俺たちが決めたこの秘密の関係を守るための約束だ。

 

 一、学校では今まで通り他人のように振る舞うこと。

 

 一、この公園での出来事は絶対に誰にも話さないこと。

 

 一、お互いに特別な感情を持たないこと。

 

 三つ目に関してはただ遊び程度に決めたものだ。もし、どちらかが恋愛感情などを抱いた場合は黙ってこの関係から離れること。つまり夜の公園に呼び出して会いに来なくなってしまったら終わりなのだ。


 契約違反は即、この関係を終わらせるという約束になっている。


 緊張感があって悪くはない。


「あ、そうだ。明日暇? ちょっといつもの作家の新作買いに行きたいんだけど」


「また? バレたらどうするのさ、前だって――」


「まぁ、まぁ。それはなんとかするよ。一人で行くの恥ずかしいんだからついてきてね」


 彼女が強引に押し切ってきた。


 意外と優とは趣味が合う。好きな作家が一緒だし、恋愛経験もほぼゼロ。考え方も嫌だけど少し似てる。


 だから度々、新刊発売のたびに駅中の本屋に連れ出されるが、駅は学校の人もよく使うから、正直バレるリスクが高い。


 前に行ったときなんて、学校の制服を着た人たちが目の前からきて慌てて逃げたのだ。

 

 まあでも、いつも通り適当に時間ずらして、別々に入店すればなんとかなるだろう。


 今まで何度もやってきたし、多分大丈夫なはずだ。


「じゃあ、明日の17時に駅の改札前ね」

 

「了解」

 

 俺は軽く返事をした。

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