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テスト期間

 「まあぼちぼちかなー、もうそろ数学の範囲おわるとこ」


 「ふーん、私は今物理やってるよ。っていうか今日の物理寝てたでしょ」


 「えっばれてたの?」


 「当たり前じゃん。そっちのほう向くとうつ伏せになってるんだからわかりやすいし、先生もちょっと怒ってたっぽいよ」


 「え、そうなの?」


 昔先生に、寝るならうつ伏せで寝るんじゃなくて、眠気から抗って見えるようには最低限しろって言われてっけ。


 「寝るなんて珍しいじゃん、どうしたの?」


 「いや、別に眠かっただけ」


 いや、嘘ではない。眠かったから寝たのだ。


 お前との勝負に負けたくなくて深夜まで勉強してましたとは言えない……!


 「もしかして、私のメッセージに闘争心燃やされて深夜まで勉強してたとか?」


 「はは、なわけ……」


 妙に鋭い言葉に胸を射抜かれたようにダメージを負った。図星だ。


 優はベンチから立ち上がり、ブランコのほうへ小走りで行き、ブランコに腰を掛けて漕ぎ始めた。


 なんか、子供みたい。


 ブランコに乗りながら足を必死に動かす優がなんというか面白くて、俺は声を出して笑ってしまった。


 「絶対子供みたいって思ったでしょ!」


 ブランコを止めてぷんすかと怒り始めた。


 「そんなことないよ」


 俺は笑い声を止めて言い訳のように否定した。優は拗ねたようにブランコから降りてベンチにずんっと再び座った。


 言い過ぎたか。


 こうやってからかうと不機嫌になる。このゾーンに入ると、どうにかして機嫌を取らないと口をきいてくれなくなる、


 「ごめんごめん、肉まん買ってやるから」


 「……‼」


 俺が安っぽい餌を差し出すと、優は迷わずキラキラとした目でこちらを振り向いた。


 ちょろい……


 「仕方ないなぁ……! 早くいくよ!」


 優は手を引っ張ってコンビニへと走り出した。


 本当にめんどうな奴だ。


 「あふっ」


 優ががぶりと大きい口であんまんを一口食べると、ほわほわと湯気が出てきていて、優は暑そうに口をはふはふと慌ただしく開け閉めしている。


 実は、肉まんはすでに売り切れていて、結局残っていたあんまんを奢った。


 「じゃあそろそろ帰るぞ」


 「えー、早くない?」


 「いや、勉強しなきゃだろ?」


 「ああ、たしかに」


 話すのに夢中で勉強のことを忘れてたのか。


 「送っていくよ」


 「お、やっさしー」


 そういうと優がにやにや、とからかうような笑みを浮かべながら、肘をずいずいと押し付けてくる。


 ちょっとうざい……


 俺はぺしっと頭にチョップを食らわせた。


 でもなんか、クラスの人気者とこうやって二人で夜の道を歩くって、なんか不思議な気分だ。


 学校の優等生を演じている高橋優とは違う、俺だけが知っているこのアホな高橋優。どっちが本物なんだか。


 翌日の放課後、俺と凛空は図書館に来ていた。


 「うーん、だめだ。わからない」


 「おい諦めんな、まだワーク開いて5分も経ってないぞ」


 「えぇ……」


 しっかり勉強し始めている俺とは真逆に、凛空はすでにぐてーっと机に突っ伏してしまっていた。


 来る人間違えたかな。こいつと勉強すると毎回そう思う。


 「いいから、この問題、昨日授業でやったところだろ。ほら、顔上げろ」


 ワークのページを指でトントンと叩く。凛空は渋々ながらも顔を上げたが、その目はまだスリープしているスマホに焦点が行っていた。


 そして凛空をなんとか立ち直らせて勉強し始めて30分くらいが経ち、俺も凛空も少しずつ集中力が切れかけ始め、休憩を取ることにした。

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