本気で挑む
「よしお前ら、もう薄々気づいているだろうが、今日で中間テスト二週間前になる」
朝の読書の時間を割いて先生が話すと、クラスはどんよりとした雰囲気で「えー」と一斉に声を上げた。
まあ無理もない、テストが好きな高校生なんてほとんどいないだろうからな。かという俺もまったくもって好きじゃない。
「仕方ないだろ、テストなんだから。今から配るテスト計画書を書いて今日中に提出してくれ」
先生がプリントを配りながら説明していく。そのプリントが回り、俺の手元に来た。
こういうの真面目に書いたことないんだよな。
プリントにはワークの進捗ペースなどを自分で細かく書いたりするらしく、実際かなりめんどくさい。
プリントをまわすために後ろを振り返ると、凛空は腕を組んで俯きながらコクコクと寝ていた。
こいつは呑気すぎる。
凛空を見て「はぁ」と大きくため息をついて、隣の優に目を向ける。優は、真剣な表情をしながらすでにプリントにびっしり書き込んでいた。
優ってやっぱ根は真面目なんだな。
優との昨日の「お願い三つ」の約束を思い出し、俺はプリントに目を向け、目標点数を全教科100点と書き込んだ。
まあ、学年TOP層の人と勝負するにはこのくらいしておかなくちゃな。
今回のテストは全7科目だ。文学国語や数学Ⅱなどの基本的な教科だけで副教科は入っていない。そして赤点は平均点前後だが、大体50点くらいだろう。一応みんな勉強には力を入れてるから平均点が高いのだ。
その日の夜は、公園のベンチではなく、自室の机に向かって過ごした。
意外と楽しい。
作業興奮というものか、一度やり始めると止まらない。俺は不思議とワークの10ページほどを完全に終わらせていた。
――すると、一つメッセージが飛んできた。スマホを確認すると、相手は優だった。
『やっほーちゃんと勉強してる?』
『まあぼちぼちかな」
嘘だ。俺がぼちぼちという時は大体本気でやっている。よく中学の頃に勉強している? と聞かれたときにあんましてないと言っているやつがいただろう、あれは俺だ。
なんかガチでやっているというのは恥ずかしいし、やっていないというのも逆に怪しいだろう。そして導き出した最善がこれだ。
送信するとすぐに既読がつき、返信が返ってきた。
『せいぜい相手になる程度には仕上げてきてよね』
『そっちこそ』
これが夜の23時の出来事だ。優も、この時間まで勉強している。やはり本気だ。俺も負けてはいられない。
参考書を睨むたびに、優のニヤリとした魔女のような笑顔が浮かび、それが俺の集中力を高めた。いや、正確には、『負けたら何をさせられるか分からない』という恐怖が、俺の背中を押した。
『学年TOP5の私に勝負を吹っ掛けたこと、後悔させてあげるよ』
脳内で優の挑発的な声がフラッシュバックする。ちくしょう、燃えてきた。こんな分かりやすい煽りに乗せられているのは癪だが、俺の負けず嫌いな部分もまた、優にそそのかされているのだ。
「ふぅ、あれもうこんな時間か」
大きなため息とともにぐいーっと伸びをし、ふと机の上にあるデジタル時計をみるとすでに2時半を回っていた。
もう三時間も勉強していたらしい。そろそろ寝なきゃだな。
普段の怠惰な生活では考えられない、充実した疲労感とともに、俺は眠りに落ちた。
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