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父帰宅

 家に帰ると、珍しく父が帰ってきていて、元気にご飯を食べていた。


 律儀な眼鏡に、七三分けのつやつやな髪、なんと平凡なサラリーマンだろうか。


「あ、父さん帰ってきてたんだ」


「おお、大悟か久しぶりだな」


「久しぶりだな」


 俺は鞄を下ろしていつも通り弁当箱を洗いに台所へ行った。


 父さんはいろいろなところを転々と仕事をしているため、あまり帰ってくることが少ないので家で話すのは3か月ぶりくらいだろうか。


「いやー、桜に小遣いをおねだりされてな。今の子ってあんなにお金が必要なものなのかな」


 ははは、と高笑いしている。が俺からしたらその言葉は大心配だ。


「何円上げたんだ……」


「えー? たしか……」


 指を一つ、二つと上げていく。


「まあ、6万円ってところかな!」


 6万……って普通のお小遣いの量じゃねえよ!


「……父さん、娘だろうとそんなお金を一気に渡したらダメなんだよ……」


「え? そうなのか?」


 その言葉を聞き、俺は呆れて声も出なかった。


 父さんはかなりの親バカ、というか娘バカとでもいうのだろうか。俺はあまり小遣いをおねだりするタイプじゃないからあまりもらうことはないけれど、桜は中学のころからよく数万円くらいをお父さんからもらっていた。というのも一応こんな父は建設系の経営者をしていて多忙だけどお金はかなりあるほうなのだ。その財力を、娘に惜しみなく注ぎ込むのが父の流儀らしい。


 俺は、食器を洗いながら、溜息交じりに注意した。


「……父さん、電話で桜が事故に遭ったっていわれても簡単に信じたらだめだから……」


「……? ああわかっている」


 父はそう答えたが、その表情はどこかふわふわとしていて、この人わかってないだろ、と確信した。いつか、この親バカが桜に泣きつかれて、会社の金を使い込むのではないかとすら心配になる。


「いつまでいるの?」


「そうだなー、まあ3か月ってところだな」


「そうなんだ、今回は意外と長いね」

 

 いつもは二、三日で次の出張に出るのに珍しい。

 

「ああ、少しだけ時間ができてな」


 ということは久しぶりに家族が集まれるのか、なんだかうれしいな。


 滅多に顔を合わせない分、父の存在はやはり家にとって大きい。


「そういえば大悟彼女ができたんだって? 悪い男だなー全く」

 

 父は、突然思い出したようにニヤニヤしながら問いかけてきた。


「できてねえよ!」


 俺は即座に否定した。優との関係は友達、しかも秘密だ。それに、今は『嘘の彼氏』騒動で学校中が騒いでいるんだ。


「そんなに隠さなくてもいい! 桜から聞いたぞ。『お兄が毎日夜、誰かに会いに行ってる』ってな。青春してるんだな」


 桜め、余計なことを!


 俺は顔が熱くなるのを感じた。確かに毎日会っているが、それは友達の高橋優だ。そしてその時間は『秘密』の約束で成り立っている。


 「ちがうって! 友達とちょっと散歩してるだけだって!」


 父は俺の焦りを楽しむように、はっはっはと高笑いしながら、声を弾ませた。


 俺の否定は、父の中では『照れ隠し』として処理されてしまったようだった。

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