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グループワーク

「はーいグループ作ってねー」


 国語の先生がそういうと一斉に黒板に写された席のグループで机を合わせ始めた。


 だが俺は、黒板の席を見て、机を動かすのを少し躊躇した。


 やばい、優と一緒のグループかよ。


 優のほうを見ると、平然とすでにこちらに寄せてきている、まあ逆に寄せようとしないのは変か。


 俺たちのグループは4人、俺と凛空、そして優と優と仲がいい砂川渚さんだった。


 渚さんは俺の前の人だ、性格はよくわからない。なんというか明るいタイプなんだけど、どこか闇があるように感じるというか。


「よろしくねー」


 渚さんが、屈託のない、周囲が安心するような笑顔を向けてきた。


「よろしく」


「よろしく……」


「よろしくお願いします」


 なんというかキャラが濃いな。


「とりあえず何やるんだっけ?」


 渚さんが優にそう明るく問いかけた。


「もう、夏目漱石の『こころ』の下宿の場所を地図上で探すんだよ?」

 

 優は、グループの空気を悪くしないよう、決して批判的にならないトーンで、丁寧に説明を返す。


「あーそっか! うっかりしてた、ごめんごめん!」


 あはは、と頭をかきながら笑うと、凛空も優も笑い始めた。それに合わせるように俺も笑う。これのおかげでグループの雰囲気がぽかぽかと温かくなったようだ。


「そういえば凛空くんと水原くんと話すのって初めて? だよね」


 優がまるで今さっき俺たちの存在を認識したかのように、自然に話しかけてきた。その声には、夜の公園で見せる疲労や本音は微塵もない。


「たしかにそうかもしれないね。高橋さんのような雲の上の存在とはあまり話す機会がないからね」


 凛空が優雅な笑みを浮かべて返答する。ちょっと皮肉を言っているように聞こえたけど気のせいか。


「そんな雲の上の存在なんかじゃないよ」


 乾いた笑いを浮かべて答えた、どこか気まずそうに俯きながら小さく呟いたのをみて、慌てて俺が雰囲気を持ち直そうと話を始める。


「まあ、こんな対面で話すのは初めてかもね。ところで、高橋さんはその『こころ』どこまで読んだの?」


 俺があくまでクラスメイトのフリをしてそう問いかけると、優は教科書をペラペラと捲った。


「えっと、私は……全部読み終わって位置を今読み解いているよ!」


 夜の公園では、自分の読んだ部分や感想を熱く語るのに。ここでは「優等生としてやるべきことはやっている」という安全圏の答えしか返さない。


 こうやってみるとやっぱ優等生らしく見えるな。


「へえ、すごいね。ていうかさ、高橋さんって昨日インスタのストーリー上げてなかった? 夕焼けの写真」


 凛空が、何気ない調子で優に問いかけた。俺は思わず、息を詰めた。


 それは昨日、俺と優が一緒に帰ったときに撮った写真だ。もしかしてなんかバレたのか?


 俺が凛空のほうを見ると、すでに凛空は返答に困っている優を見つめていた。


 優は、一瞬顔を強張らせたが、すぐに持ち前の笑顔に戻した。


「ああ、あれね! 友達との帰り道に撮ったの。綺麗だったからさ」


「やっぱりな、どこか見たことがある風景だと思ったよ。水原、あれ、お前がよk行く河川敷に似てないか?」


 凛空が、突然俺の方を見て俺に話題を振ってきた。


「は? ち、ちがうだろ。俺はあんなインスタ映えしそうなところには行かない」


 俺は、冷や汗をかきながら、精一杯の平静を装って否定した。今のやり取り、優は気づいただろうか?


 そんな会話をしている途中、渚さんが不思議そうな顔で優に話しかける。


「あれ? 優ちゃん。昨日、駅前で田中くんが話しかけてきた時、一緒にいたのって彼氏じゃなかったっけ?」


 渚の問いかけに、優の顔から、一瞬にして、あの完璧な「太陽の笑顔」が消え失せる。


「え……あ、あれは……」


 優の口から出たのは、夜の公園で聞くような、か細く動揺した声だった。優は、俺と凛空、そして渚を交互に見つめ、助けを求めるような視線を俺に向けてきた。


 その時、渚は優の動揺を察したように、クスクスと笑いながら続けた。


「もー、優ちゃんたら。恥ずかしがり屋なんだから。彼氏っていうの恥ずかしくて友達って言っちゃったんでしょー」


 渚はそう言って、目尻を下げて優しく微笑んだ。


 優は、渚のフォローを受けて、ハッと我に返ったように笑顔を貼り直す。


「あ、そうそう! 渚よくわかったね! 私、すぐ照れちゃって……あはは」


 優は、少し無理やりではあったが、どうにかその場を誤魔化し切った。


 凛空は、いつもの優雅な笑顔に戻り、「高橋さんらしいね」と呟いた。


「こーら、何話してるの」


 加茂先生が軽く怒ったような口調で話しかけてきた、だがこの加茂先生は威圧感がなく優しいため、生徒たちの距離はかなり近い。


「加茂ちゃんごめんねー」


 渚さんが『加茂ちゃん』という言葉をわざと入れて先生に謝った。


「もー加茂ちゃんって呼ばないの! みんなしっかりやりなさいよ」


 渚さんが「はーい」と明るく返事をするとため息をつきながらほかのグループを見に行った。


「じゃあみんなで情報共有しながら考えてみよっか」


 優が、テキパキとみんなのやることを伝えて、先生が配っていた地図を広げた。

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