第9話『仮面の真名(しんめい)!目覚める人格と、神の妄想』
妄想空間の暴走は、俺――望(♂)、今は望みん(♀)の拳によってなんとか沈静化した。
生放送は強制中断、全国ネットのテレビ局は一時“謎の事故”として放送中止。
……で、現在。
ジャスティア本部、特殊観測室。
俺は、あの仮面と“二人きり”だった。
誰もいない部屋。監視カメラすら遮断されている。
「……お前、何なんだよ。本当は」
静かに置かれたピエロマスク。目の奥から、光が滲むようにして――
> 『私の名は、クラウン・マギカ。
元はこの世界を守るために創られた“神性具現仮面”』
「神性? 守る……ため?」
> 『正確には、“神の妄想”を記録・実行する道具だ。
創造主が見た“理想の姿”――それを、人に与える存在だった』
> 『だが……人間の“妄想”は、いつしか理想から“欲望”へと堕ちた』
> 『その果てに、私は封印された』
――つまり、この仮面。
遥か昔、“ヒーロー”の神話が実在した時代に造られた
「妄想を実体化する」超古代の変身装備だったらしい。
それは神の意志すら宿す、神格級アイテム。
> 『私はずっと待っていた。“愚かで、面白い者”を』
「……で、俺が適任だったと?」
> 『うむ。お前は、最低で、最高だ。
欲望まみれで、なお人を助けたいと思う。
それが、最も“神に近い”』
「どんな選出基準だよそれ……」
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その頃――ジャスティアの会議室では。
「……クラウン・マギカが人格を持った?」
ホーリィ・ホワイトが眉をひそめ、ブラックが資料を読み上げていた。
「記録にある。“神代期の仮面”、人の妄想を媒介し、世界を書き換える力。
ただし、宿主の意志に強く依存するため、暴走の危険も高い」
「つまり、あの“望みん”が、今後どう生きるかによって……」
「ああ。世界の形そのものが変わるかもしれない」
ホーリィは小さく呟いた。
「“正義”の名を持つ者が、“妄想”を世界に刻む……。皮肉ですね」
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一方その頃、また別の場所――。
暗い礼拝堂のような地下空間。
その中央で、別の仮面が目覚めようとしていた。
鋭い角を持ち、左右非対称のデザイン。
「……クラウン・マギカが目覚めたか。ならばこちらも、“解放”する時だな」
謎の男が手にするそれは、“黒の仮面”。
> 『……我ハ、クラウン・ノクターン。絶望を理想とする者』