第3話 逃げろ望みん!追ってくる正義が一番怖い!
「待て!偽りのヒーロー!」
「だから違うって言ってるだろぉぉぉおおお!!」
叫びながら、俺――いや、“望みん”は、街中を全力疾走していた。
ピエロ仮面をつけたまま、長い巻き髪をなびかせ、乳が揺れ、尻も揺れる。
全裸で。
(どーして!?なんで服生えないの!?)
ヒーローっぽい力は使えるのに、服だけは全く具現化されない謎の妄想力。
おまけに、後ろからは真面目ヒーロー“ジャスティス・ブルー”が猛追してくる。
「やめろぉぉぉ!追いかけんなぁぁぁ!俺、正義側なんだよ!たぶん!!」
「全裸で逃げ回る正義があるかァァ!!」
「見た目で判断するなああああ!!」
走って、跳んで、ゴミ箱に突っ込んで、悲鳴を上げられて、また逃げて。
――そして、事件は起こった。
スマホを構える若者たち。
「……え、今の、見た?」
「全裸……ピエロ仮面……女体……」
「動画撮った。これ、絶対バズる」
(ああああっ!!やめてええええっ!!)
数時間後。
ネットニュースのヘッドラインが、全世界を駆け巡る。
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《速報》:新宿駅周辺に現れた“謎の全裸ピエロ美少女”、動画が拡散中!
《目撃者談》:「めっちゃ揺れてた。ヒーロー的な動きしてた。たぶん乳の力」
《正義機関ジャスティア談話》:「正義を汚す存在。変態仮面を名乗る異端」
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「…………」
ネットカフェの個室で震える俺。
とりあえずブランケット借りて、仮面は外した。
変身は解けて、元のおっさんに戻ってる。
「これ……完全に、指名手配じゃね?」
仮面は、テーブルの上でピクリと動いた。
まるで言ってるようだった。
> 『うん、今さらだけどね』
「お前のせいだろぉぉぉぉおおおお!!」