最終話『ヒーローじゃなくても、君のそばに』
朝。いつも通りの風景。
セミの声、電車の音、遠くの子どもの笑い声。
どこにでもある、平凡な日常。
だが――
そこには、かつて“世界を変える戦い”を経験した一人の男がいた。
> 望。
アパートの部屋で、ベッドの上で寝癖を直しながら、ボソッとつぶやいた。
「夢、だったのか……?」
ピエロの仮面は、もうどこにもない。
“変身”も“妄想”も、“妄想ヒーロー同士のバトル”も、なにもかも。
でも、なぜか胸の奥だけが――じんわりと熱い。
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現実に戻った仲間たち
クロエは「黒髪のちょっとミステリアスな女の子」としてクラスに転校してきていた。
ただし、記憶は“曖昧”になっているらしい。
> 「……でも、あなたと何か大事なことをした気がする」
そう言って、望に小さく笑った。
**真面目ヒーローくん(剣城)**は、駅前で子どもの転倒を助けていた。
「礼には及びません」なんて言いながら、自然に人助けをしているあたり、
やはり“素でヒーロー”だった。
女王様美羽は、学校の生徒会で相変わらず支配気質を発揮中。
でも、以前よりほんの少しだけ、人の話を聞くようになっていた。
> 「命令……じゃなくて、お願い。
して、あげても……いいわよ?」
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すべての妄想は、どこへ?
仮面の力は消えた。
でも、妄想は、消えていない。
> 「ヒーローには、なれなかったけどさ。
もし、誰かがピンチだったら――
俺でも、手を伸ばせるかもしれない」
そう呟きながら、望は今日も駅に向かう。
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そのとき――
小さな女の子が、信号の赤に気づかず飛び出す。
クラクション。
誰もが一瞬、固まったその時――
> 「あっぶねえっ!!」
望が、飛び込んだ。
女の子を庇い、転がり込むようにして救出。
周囲の人がざわめく中、女の子がポツリと聞いた。
> 「お兄ちゃん、ヒーローなの……?」
望は、苦笑しながら答える。
> 「……違うよ。
ヒーローじゃない。ただのオタクのおっさんさ」
でも、女の子は笑って言った。
> 「でも、助けてくれたよ?
やっぱりヒーローだよ」
望は、少しだけ照れて、つぶやく。
> 「そうか……なら、悪くないな。
妄想も、人生も」
空は、晴れていた。
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ラストカット:壊れたピエロの仮面
路地裏のゴミ山の中、
誰にも気づかれない場所に、割れたピエロの仮面の欠片が――
風に舞い、
やがて、陽に照らされて光った。
“つづくかも?”
---
完




