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第5話 落物

少女を拾って数日が経った。


なにをしてあげればいいかわからなかったから、一緒に買い物に行った際、こいつが興味を持ったものを買い与えた。


そんな手探りな日常は少しぎこちなくとも、楽しんでいたような気がする。





そんなある日、窓から差し込む暖かな日差しにうとうとしていた時、玄関のチャイムが何度も鳴った。


ったく、誰だようるせえな…


嫌な雰囲気を前面に出しつつドアを開ける。


「遅いじゃないか。いったいいつまで待たせる気だ」


そこにはイライラしながら足をタンタンと鳴らしている我が軍の隊長がいた。


後ろには軍服を着た人が数人横に並んでいる。


「隊長でしたか。いったいどういったご用件で?」


「ふん。下級兵は気楽でいいもんだな。まあいい、単刀直入に聞く。こいつを知っているだろ」


そう言うと隊長は懐から一枚の写真を取り出した。


そこにはカルミアにそっくりな少女が写っていた。


何でこの写真を隊長が?


いろんな考えが頭をよぎり胸の鼓動が速くなるのを感じるが、感づかれないよう冷静を保った。


「この子がどうかしたんですか?」


「もう出回っている情報だから教えてやろう。こいつは今戦争を行っている敵国の大統領の娘だ。こいつを殺すことが前回の作戦の要だった。なのに近頃、目撃情報が出ている。お前と一緒にな。だからわざわざここまで来たんだ」


カルミアが大統領の娘?


信じられない。


短い間だが一緒に過ごしてその面影は感じられなかった。


だが俺とカルミアが出会ったあの場所は上級国民がよくいる町でもあった。


その可能性は少なからずあると言える。


ともかくここでカルミアを引き渡したら確実に殺される。


「こんなところまで来ていただいて申し訳ないのですが、俺は身に覚えがありません。俺と一緒にいたのはおそらく最近知り合った子ですよ」


「その真実を確かめに来たのだ。わかったらそこをどけ。まずは家宅捜索だ」


隊長が顎で指示を出すと、後ろで控えてた兵が俺を押しのけて中に入っていった。


まずいぞ。


実際、中にはカルミアがいる。


なんとか阻止する方法は…いやもう遅い。


くそっ、ここまでか…。


覚悟して入っていった兵についていく。


するとそこにはさっきまで一緒にテレビを見ていたはずのカルミアの姿はなかった。


「全部ひっくり返してくまなく探せ!それらしきものがあれば持ってこい!」


あっけにとられている俺を差し置いて、クローゼットの中から小さな引き出しまですべてあさっている。


いまさらそんなことはどうでもいい。


カルミアの行方が知れことのほうが気が気じゃない。


自然を装って辺りを見渡す。


いつも閉めていたはずの裏口の鍵が開いている。


きっと俺たちの話声が聞こえて逃げ出したんだろう。


とりあえずカルミアは無事だと信じよう。


今は目の前のことを対処しなければ。


「おい、ここに皿が二人分あるのはなぜだ」


「片づけるのが面倒で前回の食事の分をそのままにしてあるだけです」


「このおもちゃはなんだ」


「小さいころ俺が遊んでいたやつです。最近処分しようとそこに置いてあるだけです」


「この子供服はなんだ」


「俺が子どものころ着てたやつです。それも処分しようと出してあるだけです」


隊長からの質問を言葉巧みにかわしていく。


結局、怪しげなものはあるが決定的な証拠は出てこなかった。


隊長はイライラした態度をあらわにしながら連れてきた兵と共に引き上げていった。


安堵したのもつかの間、急いでカルミアを探しに行く。


軍がここまで徹底的に探し回っている。


外にも監視の目があるに違いない。


一刻も早く見つけ出さないと。


行先はわからないがとにかく走った。


公園、町の路地裏、河川敷の橋の下、行きそうなところはくまなく探したがカルミアの姿は見当たらなかった。


とうとう日が沈み、探すのが困難になった。


絶望感のあまりその場で膝から崩れ落ちた。


どこに行ったんだ…カルミア……

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