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氷鬼 張り巡らされた罠

「もう逃げ回るのはやめだ。ここからは私が鬼を狩る番だ。」


 アリスは鬼を無力化する力を秘めている劇薬、メチレンブルーが入った試験管を持ってそう言う。


「そうですね。そのためにはまずこちらから鬼を探さなければいけません。」


「よし、まずはどこから探そうか。」


「プレイヤーの悲鳴が聞こえてきたら急いでその場に向かいましょう。」


 こうして2人は他のプレイヤーが襲われるのを待つことにした。5分程歩いていると、ついにその時が来た。


「やめてくれーー!」


 男の悲鳴が聞こえてきた。


「きた!」


 アリスは持ち前の身体能力を活かし、一切の助走なしにとてつもないスピードで悲鳴が聞こえてきた方向へ向かった。コウもその後を追う。

 アリスが到着したころにはすでに男は凍っていた。そしてその場には恐ろしい形相の鬼の姿が。


「ついに見つけたぞ、この化け物め。」


 鬼とアリスは睨み合う。お互いの出方を伺っているのだ。


 先に動き出したのは鬼の方だった。野太い雄たけびを上げながら突進してきた。それと同時のアリスも鬼に向かって走り出す。

 鬼とアリスの距離が2メートル程に近づいた時、鬼は左腕を伸ばし、アリスに触れようとする。アリスはスライディングしながら鬼の股下を潜り抜け、鬼の背後を取った。そして潜り抜けたと同時にアリスは高く飛んだ。

 鬼は振り返る。しかしそこにアリスの姿はない。鬼は顔を上げる。そして。

 宙を舞っていたアリスは持っていた試験管の内一つを鬼の目目掛けて浴びせた。


「どうだ!」


 すると鬼は。


「アアアアアアアアアア!」


 と叫びながら目を覆う。目をこすりながら暴れ、壁にぶつかりながらその場に倒れ込む。

 ここでコウがその場に到着。


「アリスさんやりましたね!」


「コウ、お前の言う通りにしたら本当に鬼の無力化に成功した。すごい。」


「いやいや俺なんてそんな。この作戦を実行できたのはアリスさんのおかげですよ。」


 アリスは満面の笑顔を見せた。


「残るはあとに二体です。今のように誰かの悲鳴を待ちますか?」


「いや、それじゃあ効率が悪い。二体同時に相手してやろう。」


「いくらアリスさんだからといってそれは危険すぎます。」


「安心しろ。今の私に不可能はない。」


 この状態になったアリスをコウは止める理由がなかった。


「わかりました。信じます。でも一体どうやって二体見つけるんですか。」


「た、確かにそれもそうだな…」


 何も思いつかなかったので、とりあえず凍ってしまっていた男を解凍することにした。


「これが私の最後の復活させられる権利だ。」


 そう言いながらアリスは右手で氷に触れる。青い光とともに氷は溶けていった。

 男はアリスに「ありがとうございます!」と感謝する。それと同時に驚愕する。


「うわあ!鬼がいるじゃないですか⁉」


 それはアリスが無力化した鬼のことだった。


「安心しろ。これはもう目が見えない鬼だ。ビビる必要もない。そんなことより、他の鬼の場所は知らないか?」


「鬼ならまだこの近くにいるんじゃないですか?だって僕が襲われた時はこいつの他にもう一体いましたから。」


「いい情報だ。コウ、行くぞ。」


「あ、はい。了解です。」


 アリスはまたとんでもな速さで走り出す。


(どこだ鬼。私が始末してやる。さっさと出てこい。)


 すると一瞬、廊下の曲がり角を曲がる鬼の姿が見えた。


「見つけた!」


 アリスは方向転換し、見えた場所へ走った。


(このゲーム私の勝ちだ。この調子で色んなデスゲームをクリアしていき、すぐにでも転生者をも殺せる程力をつけていくんだ。)


 廊下を曲がるアリス。ついに鬼の姿を捉える。しかもそこには二体、鬼がいたのだ。


「おお、ラッキー。」


 アリスはさっきとは違い、相手の出方を伺うことなく突っ込む。


「まずは一体!」


 鬼の目に試験管の中のメチレンブルーをかけるアリス。


「ラスいちもらった!」


 そう言いながら最後の一体にもメチレンブルーをかけた。


「これでこのゲームは終わりだ。」


 アリスはそう確信していた。だが鬼の様子がおかしい。鬼はまったく目を気にすることなくアリスを見つめている。


「あれ?効いてない…?」


(そんなはずはない。だった最初の一体には効いたんだから。)


 アリスは今までのことを思い出しながら考えていた。だがその瞬間に二体の鬼が同時に攻撃を仕掛けてくる。

 アリスはそれを避けるしかなかった。一体を相手するよりもはるかに大変だった。それにさっきは戦いが一瞬で終わったからわからなかったが、鬼の動きが思ったよりも早かった。いくら身体能力に自信があるとは言っても、反撃手段のない化け物相手に少しも触れないように避けるのは至難の業だった。


(まずい。今はまだ避けきれているけど凍らされるなんて時間の問題だ。早くこの場から離れないと。)


 しかし鬼はアリスに逃げる余裕を与えなかった。

 アリスは焦っていた。


(やばいやばいやばいやばい。このままじゃ凍らされる。いやでも凍らされた所でコウが助けてくれるはずだ。)


 鬼の攻撃をギリギリでかわしながらそう考えていたアリスだったが、ここである言葉を思い出す。


(天使リリスが言っていた。人類が作った武器じゃ傷一つつかない。そもそもコウが用意したメチレンなんとかだって人類の発明品な訳で、鬼に効くという前提がおかしかったんじゃないか?でもなんで一回目のだけ鬼に効いたんだ?)


 そしてまた走馬灯のように思い出していく。


(あっそうだ。コウは、最初はこれから使ってください。と指定してきた。つまりコウはどれが鬼に効いてどれが鬼に効かないということがわかっていたんだ。え?てことは私、コウに騙されてたの?ていうかなんでコウは鬼に効くものを作ることができたんだ?)


 鬼の攻撃を避けるのにももう限界がきていた。


(私が凍ってもコウは私を助けない。じゃあ私はここで死ぬのか?)


 そんなアリスの目に人が見えた。


「おい、そこのお前。助けてくれ!この鬼をどうにかしてくれ!助けてくれ!」


 アリスは人に向かって思いっきり叫んだ。しかしアリスはその人の顔を見て絶望する。

 そこに立っていたのは、人間とは思えない程恐ろしい顔で笑っているコウが立っていたのだ。


「コウ・ノクス・レイヴン!てめえこの私を騙したな!絶対に殺してやる!」


 そう叫ぶアリスにコウは問いかける。


「助けてほしいか?」


「え?」


「助けてほしいかと聞いている。」


(私をこんな目に合わせたのはコウだ。そんなお前が助けてほしいかを聞くだと?)


 アリスは自分の命とプライドを天秤にかけていた。しかし答えは決まっている。


「助けてくれえええええ!」


 涙ながらに叫ぶアリス。そこには今までの勇ましいアリスの姿はなかった。


 アリスの言葉を聞いたコウは鬼に向かって走り出す。そのスピードはアリスと同じくらい、いやアリスよりも速かった。

 コウはそのまま飛び、鬼に触れられそうになっているアリスを蹴飛ばした。


「ふがっ!」


 腹を蹴られ吹っ飛ばされたアリスだったが、そのおかげで鬼から距離を取ることができた。

 そしてコウは不適な笑みを浮かべながら。


「ああ、面白い。こっちの世界のデスゲームは最高に楽しい。」


 コウのその発言にアリスは疑問を抱く。


「こっちの世界だと?」


「そういえば言ってなかったな。実は俺転生者なんだ。」


「転生者…だと?」


「ああそうだ。」


 それはアリスがアークライト家に復帰するための条件、転生者をデスゲームで殺すという目標、その対象だった。


「こいつが、転生者。」


 アリスは立ち上がろうとする。しかし腹を蹴られた痛みと苦しさで動けない。


(この私が暴力で負けるだと。)


 そんなアリスを見ながら。


「まあそこで見てなって。」


 鬼に向かって行くコウ。その手には青い液体が入った試験管を二つ持っている。


(あの液体、効かないはずじゃ…一体どういうつもりなんだ。)


 しかしアリスの予想は外れる。鬼の攻撃を華麗にかわしながら液体を鬼の目にかけるコウ。そしてかけられた鬼は二体とも叫びながら暴れていく。


(なんで、何がどうなっている?人類が作った武器は効かないはずなのに…)


 「はっはっはっはっはっは…」


 暴れる鬼を見ながらコウは不気味に笑っている。そしてそれを見てアリスは怯える。


「私は、、、こんな化け物を殺さなきゃいけないのか…」


読んでいただきありがとうございます

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