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コイントス 勝負

「コイントス?そんなので私の実力をどう測るって言うの?」


 と不満げに言うアリス。


「まったく、お前は文句ばっかだな。何で全部説明してやらないといけないんだ。」


 コウは愚痴をこぼす。しかしアリスはそれにたいしても、また文句を言う。


「いいから説明してよ。じゃないと転生者の情報は教えないよ。」


「まあそう言うと思ってたよ。」


 独り言のように呟いたコウは説明を始める。


「まず、俺はお前のある特性に気づいた。それを今回のゲームで確かめるんだ。」


「特性?具体的にどういうこと?」


「簡単に言えば、長所と短所だ。自分でこれが理解できていればデスゲームでもうまく立ち回れる。」


「その私の長所と短所って何?」


「まだ言えない。だがそれを今からコイントスで確かめる。恐らく面白い結果を見ることが出来るだろう。」


 薄く笑っているコウの顔はデスゲームをしている時の顔に近かった。書斎に緊張感が走る。


「それじゃあルールを説明する。」


 コウがコイントスのルールを説明しようとした時、突然アリスが「ちょっと待った。」と言ってコウの言葉を止めた。


「なんだ?」


「せっかくコイントスっておもしろそうなゲームをするんだ。何かを賭けないか?」


「は?別に今からギャンブルをするわけじゃない。ただのお遊びだ。それに何かを賭けるなんて馬鹿馬鹿しい。」


 と言うコウをアリスはクスクス笑う。そしてその笑いは段々大きくなっていって。


「もしかしてコウ、お前もしかして私に負けるかもしれないってビビっているのか?」


 思い切り煽り散らかすアリスだったが、コウは全く効いていない様子で言う。


「冗談はよしてくれアリス。俺がお前に負ける?そんなこと天地がひっくり返ってもあり得ない。この世に絶対は存在しないが、俺がお前に負けることは絶対にありえない。」


「じゃあ私の提案受けてくれるよね?」


「なぜわからない。俺が言いたいのは、お前が俺に勝つことはありえないから賭けるだけ無駄だということだ。損をするのはお前なんだぞ?」


「やってみないとわからないだろ。」


 勝負の炎に燃えているアリスの瞳を見てコウは諦める。


「はぁ…わかったよ。なんか賭ければいいんだろ?じゃあもし俺が負けたら俺のこと好きにしていいぞ。」


 コウは適当に言う。


「へーそれはいいね。じゃあもし私が勝ったらコウには私の奴隷になってもらおうかな。」


「そうか、この世界、文明が発展してるわりにまだ奴隷制度あったんだったな。はいはいじゃあそれでいいよ。で?俺が勝ったらお前は俺に何を提供できるんだ。」


「う~んそうだな…じゃあもし私が負けたらコウの言うこと一つだけ聞く権利をあげよう。」


「別にそんな権利いらないけどな。」


「まあ使いたくなければその権利放棄してもいいんだけどね。」


 これで勝負前に賭けるものが決まった。


「それじゃあコイントスのルールを説明する。まずはじめに数回、コインが表か裏かを当てる通常のコイントスをする。これはあくまで、お前の実力を測るための特訓であり本勝負ではない。練習みたいなもんだ。この練習が終わったら本勝負を始める。勝負は一回勝負。俺はコインを投げ、右手か左手でキャッチする、お前はそれを当てればいい。」


「なるほど、いいんじゃないか。」


 アリスは、大したことはない。というような反応をしてみせた。しかし本心は違った。


(勝った!この勝負私の勝ちだ。私は運動神経が優れている上に動体視力も非常に優秀。コインの裏表までは見れなくても、右手か左手どっちにあるかを見ることぐらい朝飯前だ。練習が裏表、本番が右か左かの勝負でよかった。これなら勝てる!)


「おいアリス。お前なんか嬉しそうだな。」


「いや、何でもない。」


(おっと危ない。表情に出さないようにこらえていたが、少し出てしまっていたようだ。だって仕方ないだろ。「氷鬼」で散々私を利用していたこのコウが私の奴隷になるのだぞ。嬉しさを隠すほうが難しい。奴隷になったこいつに何させてやろうか。)


「そうか。そんじゃあまず練習から始めるぞ。」


 そう言うとコウはコインを右手の親指で宙にはじいた。コインは高速回転しながら高く上がっていく。そしてすぐに、回転そのまま、コインは重力に従い落下していった。コウはそれを左手の甲と右手のひらではさんだ。


「さあコインは表か裏か。」


(こんなのは練習だから正直当たっても外れでもどっちでもいい。でもまあせっかくだからちゃんとやるか。)


「う~ん。じゃあ表で。」


 コウは右手をどけ、左手の甲に乗っているコインをアリスに見せる。そして。


「正解は表。やるなアリス。」


「まあこんなの二分の一だからね。」


(こんな運の勝負じゃなくてはやく本番やりたいんだけどな。)


「じゃあ二回目だ。」


 コウはそう言ってまたコインを高くあげ、一回目と同じようにキャッチする。


「さあどっちだ。」


(ちゃんと考えるのも馬鹿らしい。適当に答えるか。)


「裏かな。」


 コウは右手をどける。すると。


「また正解だ。」


 適当に答えたアリスは少しだけ驚く。


(まあ二分の一だし。こんなこともあるんだろう。)


 しかしアリスの考えとは異なり、展開は思いもよらないことになる。

 なんとその後四回やったコイントス。アリスは全問正解したのだ。


「え?まじで?もしかして私運いい?」


「六回連続で正解か。中々やるな。」


 コウは特に驚いてなさそうな様子でそう言う。


「じゃあ練習はこの辺にしておくか。」


(ついに来た!練習ではなぜか運の良さを発揮してしまったがそんなことはどうでもいい。今からが本番だ!いや待てよ。どうでもよくない、今日の私は運がいい。これって今私に所謂流れというやつが来ているんだ!勝てるぞこの勝負!)


「さっきも言ったが一回勝負だ。負けたからと言ってもう一回はない。いいな。」


「もちろん。」


(負けてもう一回とお願いするのはどっちかな。)


 勝ちを確信しているアリス。そして何を考えているのかよくわからないコウ。2人の戦いが今始まる。


 コウは最初のコイントスと同じようにコインをはじく。アリスはそれを目で追う。宙に上がり、そして落下していくコイン。コインがコウの胸あたりに落下したと同時にコウは動く。右腕と左腕を素早く動かし、どちらかの手でキャッチした。その動きは恐ろしく早く、右手か左手どっちに入ったのか判断することは不可能だった。


 普通の人間にとっては。


 アリスの人間離れした動体視力は捉えていた。回転するコインを右手でキャッチするコウを。


「さあ、右手か左手、どっちでしょう?」


 握りしめた右手と左手を前に出し、真顔で聞くコウ。それとは反対に笑いを抑えるのに必死なアリス。


「う~ん。どっちかなあ。よく見えなかった。これは適当に答えるしかないな~。でもさっき六回連続で当たったんだ。今日の私は運がいい。よ~し当てるぞ。」


 アリスはわざとらしく言う。これはコウにどっちの手にあるかわかっているぞ。と伝えると同時に煽るためにやっていた。


「そうだな~じゃあ右手で。」


 アリスは答える。


「本当にそれでいいんだな?」


「うんもう決めたから。」


(「本当にそれでいいんだな?」って。そんなんで私が答えを変えると思ったの?負けたくなくて必死じゃん。)


 アリスの心の中では笑いが止まらなかった。それはもう心の中だけにとどまらなかった。


「そうか。」


 コウは両手を開く。


 チャリン


 コウの手からコインが床に落ち、くるくると回っている。


「はあああああああああああ⁉」


 アリスはそれを見て心の底から叫ぶ。

 なぜならコインが落ちてきた手は右手ではなく、左手だったのだ。


「はは、俺の勝ちだ。」


 コウの顔は笑っていた。デスゲームをする時に見せる、あの悪魔のような顔で。


読んでいただきありがとうございます

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