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勉強の意味

「それで、私を強くするっていったってどうやるの。」


「その前に転生者の情報を聞いてからだ。」


「それはだめだ。まずは私を強くしてからだ。お前は信用できない。私が情報を喋ったからといってお前が私を強すするとは限らないだろ。」


「それはお前だって一緒だろアリス。俺がお前を特訓したところで、情報を喋らない可能性だって十分にあり得る。」


 お互いの意見は相違し、話が前に進まないと思われた。しかしここでアリスは力強く宣言する。


「アークライト家は絶対に約束を破らない。なので私のことは信じてもらって構わない。」


 そう宣言したアリスの顔をじっと見るコウ。そして自分の直感を信じ、発言する。


「仕方ない。信じてやろう。」


 数多のデスゲームで一度も外したことのないコウの直感はアリスが嘘を言っていないと判断したのだ。


「よし、契約成立だ。それじゃあ私を強くする特訓とやらをしてもらおうじゃないか。」


「特訓してもらう立場だというのに相変わらずの態度だな。」


 コウは心の声をあえてアリスに聞こえるように言った。


「特訓の前に確認しておかなければならないことがある。」


「確認したいこと?」


「そうだ。それはこの世界のデスゲームの扱いについてだ。この世界ではデスゲームが各地で24時間開催されている。俺はこっちの世界に転生してから思ったことがある。ルールが変わることなく、同じ場所で同じゲームが開催されているなら一回ゲームに参加したやつからルールを聞けば事前にゲームを攻略する方法を考えることができるのではないか、と。」


 その話を聞いたアリスが反論する。


「いやそれはできないぞ。この世界では一度参加したゲームには二度と参加できないし、参加したゲーム名やルールをまだ参加したことない他の人間に話せばペナルティとして女神に命を奪われる。だから知らない他人の為にゲーム名やルールを教えるやつはいない。」


「そうだ。その通りだ。そのルールがあって俺は安心したよ。だってそんなのが認められてしまえばデスゲームが全く面白くなくなってしまうからな。」


「そんなことは知っているに決まってるだろ。私はお前とは違って生まれも育ちもこの世界なんだからな。それでその話が私を強くする話とどんな関係があるんだ。関係があるようには思えないぞ。」


 アリスの意見はもっともだった。しかしコウはそう言われるのを想像していたようで。


「もちろん関係はあるさ。どのように関係あるかというとだな、ずばり事前に行うゲームがわからない。つまり自分である程度は予想しておくことが大切だということだ。」


「はあ…?」


「よくわかっていないようだなアリス。何を言いたいかというと、俺は勉強をしろと言っているんだ。」


「勉強だと⁉」


 勉強、それはアリスが最も苦手なこと。生まれてきてから今まで勉強をずっと避けてきた。そんなアリスにコウは今勉強をしろと言ってきたのだ。


「ああ、勉強は大切だぞ。俺のこの書斎を見てみろ。ありとあらゆる本があるだろ?俺だって今勉強をしているんだ。」


「勉強することがデスゲームの強さとどういう関係があるっていうんだよ。」


「そうか。ずっとこの世界で過ごしてきたお前にはわからないか。例えば俺の場合だがこっちの世界に転生したがこっちの世界の社会情勢や文化、技術など何一つわからない状態で転生した。それらを知ることはデスゲームをする上で大切だ。例えば昨日の「氷鬼」俺の世界にはそれと同じゲームが存在したからある程度の対策はできるがお前たちにはできない。」


「ま、まあ確かに。」


 アリスは少し納得してしまった。


「逆に俺たち転生者だけが知らないこっちの世界にだけあるゲームをもとにしたデスゲームがあれば、それらを知っておく必要がある。他にも、こっちの世界にはトランプがあることがわかった。トランプがあるということはポーカー、ババ抜き、神経衰弱などのトランプゲームをもとにしたデスゲームだって存在するだろう。」


「うん…そうかもしれない。」


 コウの演説にどんどん納得させられるアリス。しかしまだコウの話は終わらない。


「また、技術の発展についてだが。俺は異世界と聞いて、俺の世界でいう数百年前レベルの技術を想像していた。しかし実際は思ったより発展していた。この部屋を見てもらえればわかる通り大量の本があるだろ?本を安く買える、それはつまり活版印刷があるということだ。他にも道がしっかりと舗装されている。何より俺が驚いたのは蒸気機関車があるということだ。このレベルの技術があるのならデスゲームでもある程度の技術が出てくると予想される。」



 アリスはほとんど納得していた。しかし自分が勉強をしなくてはいけないという現実はまだ認められず、コウに反論する。


「確かに勉強することが大切だってのはわかったけどさ、それが実際に活きるとは限らないじゃないか。」


 アリスの反論にコウ呆れ、肩を落とす。


「実際に活きるかどうかだが、それはお前が体験しているはずだ。「氷鬼」の時、俺は薬品がある部屋にいってメチレンブルーの作り方を言っただろ。その時お前はそれを信じて、その上俺のことまで信じた。あれほど勉強がデスゲームで活きたことはないだろう。」


「ぐぬぬ~」


「お前は生まれも育ちもこの世界だ。だから文化や技術についてはそれなりに知っているだろうからそこは勉強しなくてもいいとしても、数学や化学なんかは勉強しておいた方がいいぞ。」


 ここにきてついにアリスは折れた。


「くっそ~わかったよ勉強するよ。」


「わかればいいよ。さあ俺の特訓は終わりだ。転生者の情報を言え。」


「え?特訓ってまさか今の説教のこと?」


 確かにアリスは勉強をしなくてはいけないということを知った。しかしまさかこれが特訓だとは思ってもみなかった。


「そうだが。」


「いや、さすがにそれは酷くないか?もっとこう、何かゲームとかして鍛えるのかと思ってたんだが。」


「確かにそのようなやり方はある。だがお前はそれ以前の問題だ。一回勉強をしてからだな…」


 再び勉強の大切さを説こうとするコウを遮ってアリスは言う。


「認められない。今のが特訓だとは認められない。転生者の情報はまだ言えない。」


「おい、お前な…」


「転生者の情報はちゃんと言う。でもそれは私が満足できる特訓があってからだ。」


 アリスのこの頑固ぶりにコウはため息が止まらなかった。何度説得してもだめだろう。そう思ったコウはついに諦めた。


「わかったよ。じゃあ今からとあるゲームをしてお前の実力を測ってやる。」


 散々不機嫌な顔をしていたアリスの表情がキラキラと明るくなる。


「おお!待っていたぞ!それで何をやるんだ?」


 コウはコートの右ポケットに手を入れ何かを取り出す。ポケットから出てきたのっは一枚のコインだった。


「このコインを使ったゲームだ。」


 コインを見たアリスは反応を示す。


「そのコイン、ちょっと前に何かの記念でもらえる貴重なやつじゃないか。」


「そうだ。あることをきっかけに一枚だけ手に入れることができた。そしてそんな貴重なコインを使ってやるゲーム、それはコイントスだ。」

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