第二十三話
エインが調べた限り、兄であるクリフバード・エルドメイの才能は、全てにおいて平均といったモノであった。
魔法使いとしての適性は、まぁまぁと言った所。
物覚えは良くもなく悪くもなく、普通と言った感じ。
なので、突出してはいないが、相応の魔法使いとしては問題なく戦える。
魔法道具使いとしても、並であった。
魔力効率が悪い訳でも無く、扱いが下手な訳でも無く。
いわゆるカタログスペックであれば十分に引き出すことが出来るのだが、それ以上に器用に使うのは難しい。
内魔法術と気功術についても、適性はあった。
ただ、「適性はあった」程度でしかなく、一騎当千と言った爆発的な身体能力を発揮できるわけでは無い。
性格は、いたって普通。
良心的で常識的であり、唯一大きな美点と言えば、家族をとても大切に思っている、と言う所だろうか。
その美点に付いても、あの両親や可愛い弟妹を持っている以上、当然の事であり。
エインから見ればそれもまた「普通」と言った所であった。
読み書き計算、領地経営感覚、農業、用兵。
そういった領主として必要な能力についても、全くの並。
可もなく不可もなく、と言った所に終始する。
だからこそ。
エインはクリフバードの事を、兄弟で一番の傑物。
あるいは「化け物」であると認識していた。
魔法使いとして並であり、魔法道具使いとして並であり、内魔法使い、気功術使いとしても並の能力を発揮することができる。
それだけでも、恐ろしい人材と言えるだろう。
何でも平均的に出来るというのは、どんな状況にでも対応できるということだ。
魔法と魔法道具で攻撃しつつ、接近されたら内魔法術と気功術を発揮して戦うことができる。
戦うものとして考えれば、これだけ恐ろしい人材はそうはいない。
だが、クリフバードの本当に恐ろしい所は、それだけではなかった。
魔法を行使し、魔法道具を起動しつつ、内魔法術と気功術で高めた身体能力を使って敵を翻弄する。
クリフバードはそういった、自分に出来ることを「複合して使う」器用さを持っているのだ。
本来、魔力には「質」のようなモノがあり、何かに適性が有れば、何かが苦手、と言うのが当然であった。
エインは満遍なく大体の事が出来るのだが、それは特殊も特殊。
長年の経験と知識によって、自身の体にある種の「強化改造」を施したから、出来るようになったモノなのである。
天才と自称して止まないエインですら、それでようやくたどり着けた場所なのだ。
それを、クリフバードは天然自然にやってのけているのである。
エインから言わせれば、クリフバードは一人で4、5人分以上の仕事を同時にこなすことが出来る人材。
言ってみれば、「5人力」を持ち合わせた人物なのである。
しかも、ただの人数としての「5人」ではない。
魔法使い、魔法道具使い、内魔法使い、気功術使い。
そういった、言ってみれば「特殊な戦闘力」を持った人間、5人なのだ。
兄の事をして、「一人冒険者パーティ」と称したのは、エインは我ながら良い例えだな、と思っていた。
実際、クリフバードは「それぞれの能力こそ平均的」だが、それを同時並行して行使し続けることにより、驚くような実力を発揮する。
しかし、真に「恐ろしい」のは、それだけではない、と言う所だ。
クリフバードは「指揮官」としても平均的であり、「為政者」としても平均的であり、「作戦立案者」としても平均的であり、「農家」としても平均的な能力を有している。
そして、それらの能力を「同時並行して発揮する」能力を持ち合わせているのだ。
器用万能。
クリフバードの事を表す言葉があるとすれば、まさしくそれだ。
それだけの能力を持っているにもかかわらず。
良識的で良心的で、家族思いの常識人である。
エインはそんな稀有な兄の事を、心の底から尊敬し、慕っているのであった。
「一体、お兄ちゃんに何をさせるつもりなのよ」
自分用のゴーレムだ、という機体の前に立ち、クリフバードは頭を抱えていた。
「搭乗者の内魔法術を機体全体に再現させることを可能にしたゴーレムなんじゃがね。使うには一定程度の魔法道具使いとしての適性が必要でのぉ。そんなどっちも出来る奴なんぞ、そうは居らんのじゃが。兄上なら全く可能な訳じゃ」
「いや、技術的な話をしてるんじゃなくてね?」
「鉄のモンスターの外部魔力吸収装置も優秀でのぉ。搭乗者が相応の魔法使いならば、ゴーレムを通して大型の術式展開も可能じゃったから、それも出来るようにして置いたんじゃ。無論、魔法道具使いとしての適性前提じゃがね」
「聞いてる?」
「魔法道具使い適性を前提とした、魔法技術と内魔法術が使用可能なゴーレム。かなり欲張りで、普通なら数人がかりで動かすような代物じゃがな。兄上ならば一人で運用できる。前々から兄上を乗せるならこのコンセプトじゃと思って居ったんじゃが、正直諦めて居ったんじゃよね。しかし、鉄のモンスターのおかげで可能になったわけじゃ」
「お兄ちゃん、正直そういう難しい話は良く分んないんだけど。そうじゃなくって」
「なんじゃね?」
「あの、なんていうか、あれだ。なんでこんなに派手なの?」
クリフバードの言葉に、エインはゴーレムへと目を向けた。
銀色を基調とした機体に、赤と白のライン。
機体設計自体は、エインの仕事である。
だが、施されている装飾に関しては、草縄衆やエルドメイ発動機社員の手によるものだ。
「わしが設計したのは地味な感じじゃったんだけどね。設計図持ってったら、未来のご領主様の機体だって言うことで、盛り上がってしまってのぉ」
「未来のご領主様って。お兄ちゃんが乗るのよ? もっとこう、見た目ってのがさぁ」
クリフバード自身は、「身分不相応だ」と言いたいのだろう。
もちろんエインもそれは分かっているのだが、どうにも「ビジュアル的に負けている」と言う意味にも聞き取れた。
その場合、クリフバードの言っていることはかなり頓珍漢なものとなる。
何しろクリフバードは、見た目がゴリッゴリにいいのだ。
エインが生まれ変わる以前でも、ここまで顔が良い人間は相当に稀有であった。
まあ、役者など労力をかけて見た目を作っている商売のものならば、居たのかもしれないのだが。
天然自然でここまでの美形と言うのは、少なくともエインは見たことがない。
「未来のご領主様なんじゃし、目立つのは良い事じゃろ。まして領民が用意してくれた物な訳じゃし。好意的に受け取るのが一番じゃよ」
「目立つねぇ。俺ぁ、地味な性質なんだけどなぁ」
たった一人で舞台俳優を張れるような華やかさに、真面目で誰に対しても優しく、情に厚い性格。
どう考えても目立たないわけがないのだが、近くに父というカリスマが居たせいなのだろう。
クリフバードはどうにも自分の事を過小評価していた。
まあ、エインとしてはその方があれこれ頼みやすいので、助かるのだが。
「そう言えば、キールは?」
「草縄衆を連れて狩りに行って居るよ」
ここ最近、キールは勉強やお手伝いの合間を縫って、ゴーレムでの狩りをするようになっていた。
もちろん一人ではない。
きちんと草縄衆に付き添われて、の事である。
エインは忙しいので、記録映像や音声などを付けた報告を受けるだけなのだが、メキメキとゴーレム操縦の腕を上げているらしい。
「狩りって。モンスター相手だろ? あいつ、もう初陣済ませたのか?」
「はっはっは。何を言って居るんじゃね兄上。狩りは戦とは違うものじゃよ。大体、そんなことしたらわしが母上にどんな目に遭わされるか」
この辺りの貴族家にとって、初陣と言うのは特別な儀式のようなものらしい。
武力がものを言う時代だからこそ、なのだろう。
前世の記憶を取り戻す前、エインは勝手にモンスターと戦っていた。
問題ないとエイン自身は思っていたのだが、それが父と母にバレたときは、とんでもないことになったモノである。
父はそうでもなかったのだが、母の方が凄まじかった。
トラウマになるほど叱られたうえ、頭が禿げ上がるかと思うほど電撃を食らったのである。
心配しているからこその事だ、というのは良く良く分っているのだが、エインは二度と母は怒らせないと誓ったのであった。
「もちろん、狩りをして居るとは伝えてあるとも。草縄衆が御供に付いて居るのも、知って居るしのぉ」
「ホントかぁ? どこで狩りしてるのよ。お兄ちゃんちょっと行って確認してくるから」
「さぁ、どこじゃろうなぁ。何しろキールのやつ、スピード狂じゃから」
どうも、キールは動きの速いゴーレムを好む傾向が有った。
そのため、足回りの良い機体を与えているのだが、毎度毎度カタログスペックを逸脱した性能を引き出すのだ。
エインが生まれ変わる以前にも、そういうことが出来る者は時々いた。
特別な才能を持ち、特別な訓練を積んできたような手合いである。
キールは天然自然でそれをやっている訳であり、そういう意味では明らかに異常なのだが。
エインは「流石わしの弟じゃな」程度にしか思っていなかった。
基本的に、家族への評価がべらぼうに高いのだ。
「知らんうちに知らん場所に、さっさと動いてしまってのぉ。草縄衆もキールに付いていくのは大変だ、と言って居ったわい」
「それって、大丈夫なのか? 単なるモンスターとかを狩ってるだけなら、まぁ、狩りで済むだろうけど。なんかすんごいの見つけて首持ってきたりしたら、初陣扱いにならん?」
この辺りの貴族ならではの風習なのだが。
初陣と言うのは、領主の決定に従い、兵隊を率いて行うものであった。
そこで戦果を挙げ、初陣とするのである。
ただ、例外もあった。
例えば、偶発的に大きな戦果を挙げてしまった場合だ。
名のあるモンスターの首を取ったとか、盗賊団を壊滅させた、と言った時である。
そう言った物を「ただの狩り」で済ませてしまうと、他の者に示しがつかなかったりするのだ。
ちなみに、エインはその辺に転がっていたドラゴンの首を取り、なんやかんやあってそれが初陣と言うことになっている。
クリフバードの言葉に、エインは眉間に皺を寄せて唸った。
「どうじゃろう。そう言われると若干心配になるんじゃけども。アイツなんやかんややらかすからのぉ」
キールもエインには言われたくないだろう、と思うのだが、クリフバードは黙っていた。
弟に気を使えるお兄ちゃんなのである。
「ふむ、一つ見に行ってみるかのぉ」
そんなエインの言葉に、クリフバードも賛同しようとした、その時。
両手にお花を一輪ずつ握りしめたチャムが、とてとてと二人に近づいて来た。
「あにうえ! にぃに! おはな! おはな、あげう!」
「おうおう、これは綺麗なお花じゃなぁー!」
「わざわざ持ってきてくれたんだねぇー! チャムはえらいなぁー! ありがとうねぇー!」
エインとクリフバートの頭の中は、一瞬でチャムとお花の事に切り替わる。
兎に角、妹がかわいい二人であった。
優秀な魔法道具使いには、いくつかの特徴がある。
その一つが、「自然魔力を巻き込む能力」であった。
体外に魔力を放出する際、その魔力に周囲の魔力。
空気中などに漂う、いわゆる「自然魔力」を、巻き込む者が居る。
この巻き込んだ魔力は、当然ながら「自分の魔力」ではない。
なので、自分で組み上げた魔法などに利用できる、などと言ったことは無かった。
いわゆる「魔法」に使えるのは、あくまで自分の魔力だけであるためだ。
だが、「魔法道具」を使うのであれば、話は別だった。
魔法道具は、魔力が流れ込みさえすれば機能する。
その魔力がどこから来ていようが、関係がないのだ。
キールはこの「自然魔力を巻き込む能力」が、異様に高かった。
自分が放出した数倍、数十倍の量の魔力を巻き込むことが出来るのだ。
これが、キールが魔法道具使いとして優れているという、理由の一つだった。
「莫大な量の自然魔力を巻き込むことが出来るから、通常の数十人分の魔力を使うことが出来る。あの機体が動くのは、要するにそういう理屈です」
ミーリスの説明を聞き、メリエリは呆れたような感心したようなため息を吐く。
「なぜあれで動けているのかと思っていたが。そういうことだったか」
メリエリは魔法道具使いではあったが、構造や仕組みについてはあまり良く分っていなかった。
実戦に出てばかりいて、座学に割く時間がないのだ。
だが、そんなメリエリの目から見ても、キールが乗るゴーレムの異様さは理解できた。
キールの機体は、外見的にはそう突飛なところはない。
見た目だけでいえば、草縄衆が使っている量産型のゴーレムとほとんど同じである。
所々違いはあるのだが、誤差の範囲。
多少カスタムしたのかな?
と言った程度であった。
唯一わかりやすく違っているのは、手にした武器。
長柄のモーニングスターだけが、他のゴーレムとは大きく違う点であった。
しかし。
見た目があまり変わらないからと言って、性能に関してもあまり変わらないか、と言えば、そうではなかった。
「みつけた! ぼく、さきにいくねぇー!」
内蔵された拡声器で大きくされたキールの声は、どこまでも楽しげに弾んでいる。
言葉と同時に、キールの乗ったゴーレムははじき出されたような速度で加速した。
大きな土煙を上げ、一瞬でトップスピードに乗るその姿は、一種異様である。
先ほどまでキールのゴーレムが有った場所には、すり鉢状の穴が開いていた。
何かが爆発した跡のように見えるそれは、実際に「何かが爆発した跡」なのだ。
キールのゴーレム、「爆速号」は、足の裏に爆破の魔法道具を装備している。
もちろん攻撃にも使われるものなのだが、推進力としての利用も可能であった。
足を踏み出す瞬間に、足の裏を爆発させる。
そうすることによって、文字通り爆発的な推進力を得るのだ。
もっとも、通常の機体でそんなことをすれば、当然脚を破損することになる。
脚だけならばいい方で、衝撃によって機体全体に支障をきたす恐れもあった。
キールの「爆速号」がそうならないのは、多重にかけられた防御魔法と、強化魔法のおかげである。
量産型のゴーレムとほとんど同じ外見の装甲をめくれば、そこにはエインがキールのためにくみ上げた魔法式が何重にも詰め込まれていた。
どれもこれも強力な術式であり、高性能の魔法道具である。
その分、起動するために必要な魔力は膨大。
普通の魔法道具使いならば、そのうち三つ四つを動かすのがせいぜいだろう。
何しろ、魔力が足りないのだ。
だが、キールはそれを、数十、時には百数十と言う数を同時に起動させていた。
「キール様っ!? お待ちください!」
草縄衆のゴーレム数機が後を追うが、追いつけるはずもない。
ゴーレム「爆速号」はさらに足の裏を爆発させながら、ぐんぐんと加速。
一際大きな爆発と共に、機体の身の丈の数倍の高さまで、一気に跳躍する。
大上段に振り上げたモーニングスターを、落下に合わせて振りぬく。
その先に居たのは、巨大な猪型のモンスター。
体長が10mを超えるそれの頭部を、モーニングスターが襲った。
大きな体を持つモンスターと言うのは、大抵の場合「強化魔法」を常に使っているような状態になっている。
あまりにも大きすぎる体を、魔法の力で維持しているのだ。
そのため通常であれば、一撃で倒す、などと言うことは無理難題の類と言っていい。
ただ体がでかいだけでなく、そのデカい体相応の出力が有る強化魔法まで発動させているからだ。
とはいえ。
圧倒的な加速に加え、落下の速度まで乗せたゴーレムサイズのモーニングスターによる一撃の前には、流石の巨大猪も為す術もなかった。
突然の強襲、一撃により、猪型モンスターは意識と共に、命も刈り取られる。
そのまま地面に倒れ伏すモンスターの横に、爆速号は綺麗に着地した。
「あっちゃぁ」
だが、機体から響くキールの声は、どこか不満げである。
「やっぱりテッキューだと、つぶれちゃうのかぁ。オノとかじゃないと、きれいに首がおとせないんだなぁ」
悩むように首を傾げ、考え込み始める。
そうしているうちに、後ろから草縄衆のゴーレムが追い付いてきた。
メリエリも機体を走らせながら、唸る。
その隣を魔法で飛びながら付いてくるミーリスは、半ば困惑の表情でため息を吐いた。
「キール様が凄まじいのは、ゴーレムを操る能力だけではありません」
「どういうことだ?」
メリエリに尋ねられ、「そもそも」とミーリスは続ける。
「どうやってあのモンスターを見つけたか、です。エイン様がおっしゃっていたことがあります」
キールと魔法道具の相性の良さは、「自然魔力を巻き込む能力」だけに留まらない。
魔力を注ぎ込んだ先の魔法道具との、感応性にもあった。
至極簡単に言うと、キールは自身が魔力を流し込んだ魔法道具を、体の一部のようにすることが出来るのだ。
まるで体の一部のように使う、ではない。
操縦桿や操作パネルなどを触れることも無く魔法道具を操り。
カメラが捕らえた映像を、モニタなどの出力装置を介することも無く直接「視認」し。
圧力測定器やマイクからの情報も、そのまま感じ取ることが出来る。
「魔力と言うのは、生命力の一種です。体外から放出した魔力を通し、キール様は魔法道具と一つになっているのです」
「俺も魔法道具使いの一人だが。そんな感覚になったことは無いし、他の草縄衆からも聞いたことも無いぞ」
「だから、キール様は天才だ。と、エイン様は仰っているのです。その能力が有ったからこそ。先ほどの位置から、あのモンスターを見つけることが出来たわけです」
そもそも、キールが爆速号を走り出させた位置からは、猪型モンスターの姿は見えていなかった。
木々などに隠れて、視認できなかったはずなのである。
にも拘らずキールがモンスターを見つけることが出来たのは、爆速号に搭載された各種センサー類を「体の一部」にしていたからだ。
「高精度のセンサー類を、耳目として使いつつ。圧倒的な性能のゴーレムを手足とする。エイン様は、こうも仰っていました。鋼鉄のゆりかごの中にいる時の方が、キール様は自由なのだ、と」
ゴーレムのコックピットは、密閉空間であり、ごく狭い場所となっていた。
そこに、操縦機器やモニタなどと一緒に、操縦者が詰め込まれているのである。
鋼鉄のゆりかご、などと言うのはまだ優しい表現だろう。
メリエリなどは初めて見たとき、棺桶か何かかと思ったほどだ。
だが、確かにその通りなのだろう。
ゴーレムを自分の体とすることが出来るキールにとっては、「鋼鉄の棺桶」の中こそが、もっとも五感が研ぎ澄まされ、自由に体を動かすことが出来る場所なのだ。
「今後、エイン様の研究が進めば進むほど。エルドメイ発動機が発展すれば発展するほど、キール様のお力は加速度的に増していくことになります」
ミーリスの言葉は、大袈裟でもなんでもなく、単なる事実なのだろう。
「ゴーレムを使われる関係上、キール様のお傍にはメリエリさん達魔法道具使いの方々が付くことになると思われます」
「わかっている。俺達も、腕を上げなければならない」
本来、草縄衆にとってキールは護衛の対象のはずなのだ。
にも拘らず、現在は追いかけるのがやっと。
とても役割を果たしている、とは言えない状況であった。
そう口にしてから、「しかし」と心中で呟く。
多少の訓練をした程度で、どうにかなる次元のものとは、正直思えなかった。
何かしらの方法を探さなければならないだろう。
あるいはエイン様なら、何か手段をご存じかもしれない。
まずは、確認してみよう。
もしエイン様が何かご存じで、有益な方法であるならば。
それがどんな事であっても、試して見なければならない。
メリエリはそう、決意するのであった。